福岡市は全国的にも美容室・ヘアサロンの激戦区です。コンビニも顔負けの新規開店数ですが、その一方閉店する美容室も多く、生き残りをかけた経営力が必要となってきています。
福岡で開業・独立・フリーランスをお考えの美容師の方へ―――
本格的な新規開業の前に美容室のシェアサロンでフリーランスとして開業するという方が福岡では増えています。
従業員を雇わず一人で開業する場合は、広いスペースが必要ではなく、また開業資金もほぼ必要とならないことから多くの方に選ばれています。
※コロナ禍をきっかけに、密にならないということで、さらに人気が増しています。
美容室・ヘアサロンはカットやパーマ、カラーの技術が優れていることは当然のこととして、
- 美容室の雰囲気
- 使用しているシャンプー・トリートメント・カラー剤などのヘアケア商品
- スタッフの対応
- メニュー
- 価格
- 立地
- 情報発信力
など様々な条件を基に選ばれています。
福岡の美容室の顧客層は、女性だけでなく男性も利用が多く、母親に連れられて幼い子供が来店することも珍しくありません。
また、福岡の美容室は若い経営者が多いため、常に新しい技術を取り入れながら、エステ・ネイルサロン・雑貨販売・カフェの併設など独自性を持った美容室・ヘアサロンが増えてきています。
美容室・ヘアサロンの開業・開店の方法
福岡で美容室・ヘアサロンを開店したい、独立したいと思ったときに注意しておきたいことがあります。それは、美容業界で働いている人の多くは技術者であるということです。
福岡で美容室をオープンするまで、技術向上やお客様へのより良いサービス提供については美容室勤務時代にも経験していることでしょうが、経営者としての知識や目線を身につける機会はなかったのではないでしょうか。
優れた技術・センスを持っている人が優れた美容室経営者・人気サロンオーナーになれるとは限らず、美容室を維持運営していくこと、安定した経営をしていくことはとても難しいことなのです。
自分の夢をたくさん詰め込んだ美容室・ヘアサロンをスムーズに開店するための流れをご紹介します。
美容室開店までの流れ
- お店のコンセプト・事業計画書作成
- 物件選び・市場調査
- 開業資金借り入れの準備・申請
- 店舗内装デザイン・ロゴの決定
- 諸官庁へ許可申請
- 宣伝方法の検討
- メニュー・価格等の決定
- 美容機器・備品類の購入先決定・購入
- スタッフ募集・面接・決定・教育
- 消防・保健所の検査
- シミュレーション
- オープニング・レセプション
- 美容室開店
お店のコンセプト・事業計画書作成
美容室のコンセプト
美容室・ヘアサロンのオープンまでに必要な期間は約4月~6月と言われています。そのスタートを切る作業がこのコンセプトの決定、事業計画書の作成です。
美容室のコンセプトの難しいところは、決して自分よがりになってはいけないというところです。
自分らしく個性のある美容室を持ちたいと思う人が多いと思いますが、長く愛される美容室・ヘアサロンはお客様の居心地のいい、リピート率の高いことが絶対条件となってきます。
そこで魅力的な美容室にするために、ターゲット層を明確にすることから始めることをおすすめします。
20代の若い女性をメインターゲットとするのか、30代の経済的に少し余裕のある女性をメインターゲットにするのか、主婦層をメインターゲットにするのかでも立地・料金設定・美容室の雰囲気が違ってきます。
メインターゲットのイメージは、できるだけ具体的に年齢・性別・服装・性格などまで想像を膨らませていくことで、どんなサービスが必要か、どんな美容室・ヘアサロンなら選んでもらうことができるのかとコンセプト設計へと繋がります。
事業計画書の作成・資金の借入
福岡で美容室・ヘアサロンを開業するにはどれぐらい資金が必要なのでしょうか?
開業後の運転資金はどのぐらいあれば安心でしょうか?
それを知らなければ借入をする金額も決まりません。
一般的に必要な資金は店舗の敷金や前家賃・改装費・機器の設置・シャンプー・カラー剤などの消耗品の購入などで500万円~1,000万円と言われています。
開業する場所がビルの1階か5階では家賃が違ってきますし、機器を購入するのかリースするのかでも違ってきます。
自分がメインとして行うサービスによっても機器の種類・消耗品の内容等でも開業資金は違ってきます。
資金の借り入れを行う際には、この事業計画書がとても重要になってきます。どこまで具体的に数字を見ているか現実味があるのか、その根拠はどこにあるのかなど診査され、返済可能と認められなければ開業資金の借入はできません。
多く利用されているのが日本政策金融公庫ですが、もちろん民間の金融機関からも条件次第では融資を受けることができます。新規開業に適した融資制度や女性・若者・シニアを対象とした融資制度も用意されていますので、身近な福岡の税理士と一緒に事業計画を考えて、自分に合った融資先を探されることをおすすめします。
物件選び・市場調査
美容室・ヘアサロンの出店場所は、メインターゲットはどんなお客様なのか、そしてどんな美容室にしたいかによって異なってきます。
不特定多数の一般客なら人通りの多い場所や、駅前などが選ばれるでしょうし、仕事帰りに気軽に来てほしいと考えるならビジネス街ということもあります。口コミで特定のお客様をターゲットにするなら、一等地にこだわる必要はありませんので家賃も安くなります。
前述したように美容室のコンセプトによって出店場所が変わり、開業資金が変わり、融資額が変わってきますので、やはりコンセプトを決める時間はとても重要になってきます。
通常、店舗敷金は家賃の6か月前後必要になり、開業後固定客を確保するまでは家賃が大きな負担となってきてしまいます。そのためにも事業計画の作成を行い、開業後の運転資金で困らない融資額を受けることが大切になってきます。
開業資金借り入れの準備・申請
借入の準備
創業融資の申請に詳しい方に相談しながら作成するなら別ですが、自身で金融機関に申し込みをする人は、事業計画書に書いた内容をすべて自分で説明できる必要があります。大切なのは、今の自分自身の状況を理解し、これからの計画についてどのように考えているのか、それに自分で責任を持っているかどうかです。
金融機関との借入面談は、事業計画書が中心になります。この計画書の内容次第では、1,000万円の借入が必要なのに800万円の融資しか受けられない、といったケースも少なくなく、これでは開業が出来なくなります。慎重に準備をしながら事業計画を作りましょう。
借入の申請
金融機関への融資の申込に必要な資料を準備したら、融資の申込をします。
美容室の開業でお金を借りる場合は主に、民間金融機関の信用保証制度を利用するか、日本政策金融公庫のどちらかなります。それぞれ準備する資料が異なるため、あらかじめそれぞれの申込に必要な資料を確認しておきましょう。
自分で申込をする人は、金融機関に借入申込資料を持参して、その金融機関で面談を行います。
面談にはあらかじめ予約が必要です。金融機関は、あなたがどんな人なのかを資料と面談だけで判断することになるため、審査を通過させるための材料集めのためにいろいろな資料の提出を求められることがあります。そのため、金融機関からの求めには積極的に対応することをお勧めします。
事業計画書・提出資料を基にして借入面談が行われます。金融機関の担当者とご自身、顧問税理士がいる場合は税理士が面談に立会います。ご自身で面談をする際には、記載する内容、用意する資料の内容を把握し、自分の言葉で説明できるように準備することが必要です。
融資の申込から決定までにかかる時間は、自分で申し込む場合と、専門家に依頼した場合などで変わってきます。専門家に依頼した場合は平均して1週間から10日前後で、ご自身で申し込む場合は1ヶ月前後の時間がかかるケースが多いです。
融資の決定から実際の入金は、金融機関との金銭消費貸借契約書の作成が完了してからになります。融資の審査期間が長い場合、金融機関の中での審査に時間が掛かっている場合が大半です。
借入面談をしてすぐに金融機関から連絡がある場合は要注意です。金融機関への融資の申込は、形式的な要件があり、この形式要件に引っかかった場合は短期間に融資ができない旨の連絡を受けることがあります。個人信用情報などに問題があると、申込み段階や借り入れ面談の段階で、面談後すぐに融資できないなどの連絡が入ります。
ですので、融資に時間が掛かっている場合は、融資が前向きに進んでいると捉えても良いでしょう。
店舗内装デザイン・ロゴの決定
美容室の開業で一番お金がかかるのが内装費用です。そして開業の時に資金的なトラブルが起きやすいのも、この内装工事に関する費用です。
必ず生存できる美容室を作ることを判断基準とするなら、お客様の立場で考えたお店作りが必要です。お客様がどんなお店を求めているのかお客様目線で考え、その上で自分のイメージをはめ込んでいくことをお勧めします。
内装工事の業者の選定も重要です。内装工事の見積金額だけで決めるのではなく、物件を一緒に見てどんな工事が必要になるのか、こちらが思い描いているレイアウトが実現可能かなど、予算を考慮した上で相談に乗ってくれる内装業者を選びましょう。
これまで美容室の内装や器具を提供する業者は少なく競争原理が働いていなかったため、初期投資費用はかなり高くなっていました。しかし今では美容室開業をサポートする業者が増え、適正な価格で開業することが可能になりました。初期費用を抑える方法のひとつとして、インターネット等を活用したサポート業者の選定も重要なポイントになります。
スケルトン物件と居抜き物件とは?
契約する物件の状態によって工事費用は大きく変わります。そこで、物件にはどんなタイプがあるのか、それぞれどのような工事費用がかかるのか見てみましょう。
物件には、①スケルトン物件、②事務所仕様物件、③居抜き物件の3タイプがあります。
●スケルトン物件
室内が建物躯体のみとなっていて、内装設備等がない状態の物件です。スケルトン物件の場合は、室内の内装・設備工事は開業者が行ないます。自分の思い通りデザインできる自由度はありますが、工事費もかかります。
●事務所仕様物件
事務所としてすぐ開業できるよう、エアコン・換気扇・給湯器・キッチン・トイレ・照明など、最低限必要な設備がすでにあるので、内装工事の初期費用を抑えられます。しかし、物件によってはエアコン、給湯器が容量不足だったり、設備のレイアウトが固定されている故に制約を受けることもあります。そもそも店舗として貸出し不可のケースもあるので確認が必要です。
●居抜き物件
物件の前テナントが使用していた内装の造作や什器備品等が残っていて、そのまま引き継げる物件のことをいいます。前のテナントが美容室だった場合、内装工事費用は大幅に削減できる可能性があります。
諸官庁へ許可申請
美容室・ヘアサロン開業のためには各所への手続きが必要です。
美容師・理容師の免許があることはもちろんですが、衛生的な基準を満たした場所なのか保健所確認検査が必要です。
新規に開設するときには、事前に保健所へ構造・設備等の相談に行き、開設のための手続きをスムーズに行えるように準備しておきましょう。
また、事業を新規に行うのですから税務署等への届出も必要になってきます。個人事業主の場合、法人の場合で異なる部分はありますが、様々な手続きが必要です。書類一つで、特別な控除を受けることができたり、税金の還付を受けることができたりしますので、事前に顧問税理士と打合せを行う必要があります。
宣伝方法の検討
一般的にはホームページを作成したり、クーポンを雑誌に掲載したりして、より多くの人に知ってもらう努力が必要です。
しかし、メインターゲットに一番届く方法を考えて絞り込んで行うことで、無駄な費用を削減できるのも確かです。
福岡で開業・独立・フリーランスをお考えの美容師の方へ―――
本格的な新規開業の前に、美容室のシェアサロンでフリーランスとして開業するという方が福岡では増えています。
シェアサロンでの開業ならば、月額使用料の支払いだけで高額な家賃を支払うことなく天神・大名・今泉などの好立地で出店が可能となり、集客面で有利になります。
メニュー・価格等の決定
事業計画の作成にも大きくかかわり、一度決定すると簡単には変更が難しいので、慎重に決めなければなりません。
今までの経験と、ターゲット層、美容室の規模や設備、また近隣の相場も加味して価格を設定していきます。
美容機器・備品類の購入先決定・購入
美容機器、備品は最新式の高額なものから、掘り出し物までありますが、一度に揃えるのではなく、必要最低限から揃える方法もあります。
事業を始めてから、使用頻度が少ないものを高額で買ってしまったことを後悔しないように、美容室のコンセプトをしっかりと持って購入決定を行いましょう。
スタッフ募集・面接・決定・教育
美容室の印象を大きく左右するスタッフの教育は重要です。
接客の基本はまず挨拶からです。スタッフの挨拶・言葉遣い・お辞儀・声の大きさ等チェックするところはたくさんあります。
どんなに気に入ったヘアスタイルにしてもらえても、スタッフの態度が悪いという理由からお客様が離れてしまうこともあります。
ほとんどの美容室でも行っているように、朝礼の時に接客用語の唱和をすることが重要です。その際、笑顔で元気よく行うことが大切です。
スタッフのファンが増えるような魅力的な人材を育てましょう。
消防・保健所の検査
美容室は許認可制ですから、開業の前に検査を受ける必要があります。許可が受けられなければ美容室は営業できません。保健所からの許可が下りた後に、融資を受けた金融機関に許可書の提出が必要になる場合もあります。
保健所の検査の内容に合わせて、追加工事や備品の購入などが新たに発生するケースがあります。そのため保健所などの届出に関しては、あらかじめ必要な項目を内装業者と打ち合わせしましょう。
シミュレーション
いよいよ美容室開店です。
技術者であり経営者となるわけですから、スタッフとの連携の確認・動線の確認・お金の管理等のシミュレーションで最終チェックを行います。
オープニング・レセプション
レセプションを開き周囲の人々に挨拶をしておくこともいいでしょう。また、プレオープンで実際にお客様にお店に来て頂いて、満足させられるかという点や問題点はないか洗い出しをします。それらを改善した上でグランドオープンに臨みましょう。
美容室開店
美容室を開店する前も初めての作業が多く、勤めていた時と比べるととても大変です。しかし、本当の大変さは開店して味わうかもしれません。
独りで考え悩むのではなく、その時々にそれぞれの専門家に助けを求めることが事業を始める時には必要です。
まずは、シェアサロンで家賃・設備を抑えて開業することが可能ですので、福岡のシェアサロンの一覧を参考に検討してみるのもよいでしょう。
応援してくれ、助けてくれる専門家や仲間と出会えるチャンスはきっとあるはずですから、そのチャンスを逃さず、夢を持って自分の美容室・ヘアサロンを開店しましょう。
福岡で開業・独立・フリーランスをお考えの美容師の方へ―――
本格的な新規開業の前に美容室のシェアサロンでフリーランスとして開業するという方が福岡では増えています。
従業員を雇わず一人で開業する場合は、広いスペースが必要ではなく、また開業資金もほぼ必要とならないことから多くの方に選ばれています。
※コロナ禍で密にならないということで、さらに人気が増しています。
野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界20年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。