クラウドとはもともと「cloud」つまり、雲のことです。
雲の中に、サービスを提供するものが隠れており、そのままでは見えません。それを、われわれユーザーがインターネットを介して、その雲に触れることで、様々なサービスを利用するというのがクラウドです。
簡単に言うと、クラウドとはソフトやデータをインターネット上で利用するサービスのことをいいます。
単純なWebサービスだけでなく、アプリ、データベースなどあらゆるものがクラウド上で提供されています。クラウドを知らなくても、GmailやDropboxは聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
代表的なクラウドサービスとして、Gmailなどのメールサービスがあげられるでしょう。クラウドを利用している感覚はないかもしれませんが、以前は、メールは社内のサーバーで管理されていました。しかし、現在はメールの送受信はクラウドに保存され、IDとパスワードを使って、あらゆる場所でメールが利用できるようになっています。会社のパソコンで、スマホで、タブレットで、そして、日本中・世界中どこででも利用できます。
クラウド会計とは?
メールに限らず、あらゆる業務がクラウド化しています。その中でも、なかなかクラウド化が進んでいないものとして経理業務があるでしょう。
クラウド会計とは、簡単に説明すると、従来パソコンに会計ソフトのCDをインストールして利用していたものが、インターネット上で提供される、利用できるようになったサービスのことです。
前述のメールの様に会社のパソコンに限らず、どこででも利用ができます。
しかし、会計ソフトというとほとんどの人は「弥生会計」をあげるでしょう。個人事業主から法人まで幅広く一般に利用されているばかりでなく、多くの税理士事務所も「弥生会計」を利用しています。会計のメインソフトとして利用している税理士事務所もあるくらいメジャーな会計ソフトです。
顧問先と税理士事務所とでデータのやり取りが簡単で、ソフトの金額も安価であることから今でも多く利用されていると考えられます。
しかし、その「弥生会計」ですら、「弥生会計オンライン」というクラウド会計ソフトを開発し、利用者が増えています。
クラウド会計ソフトとは?
クラウド会計はインターネット上で提供されますので、CDをインストールするということは不要になります。
つまり、クラウド会計ソフトとはインストールの必要のないソフトということになります。ソフトウェアの機能がクラウド上から提供され、また、会計データそのものもクラウド上に保存されることになります。
インストールが必要ありませんので、外出先でも出張先でも、それが海外でも利用できます。
最近では、クラウド会計ソフトを提供する会社がスマホ・タブレット専用のアプリを開発し、スマホやiPad等のタブレットでも利用することができるようになりました。
クラウド会計ソフトの比較
クラウド会計ソフトは従来の会計ソフトとは全く異なる機能、違いがあります。もちろん、従来の会計ソフトの基本的な機能は備えておきながら、新たに進化した機能が多くあります。
現在多くの会社・個人事業者が利用しているクラウド会計ソフトは次のものです。
- freee
- MFクラウド
- 弥生会計オンライン
従来の会計ソフトとの比較
従来の会計ソフトと比較して大きく異なる部分は次のとおりです。
- 預金口座からの自動仕訳
- 各銀行のインターネットバンキングのIDとパスワードを利用することで、記帳が自動で行われるサービスです。
- クレジットカードからの自動仕訳
- JCB、VISAなど各クレジットカードでの取引が、インターネットバンキングと同様に、取引が自動で処理されるサービスです。
- 場所を問わず入力できる
- パソコンとインターネット環境があれば、国内・国外問わず入力、チェック、処理ができます。
- スマホやタブレットでも入力や処理ができる
- 上記の入力や処理がパソコン以外でも可能となりました。
クラウド会計のメリット
クラウド会計のメリットとしては、次のものが考えられます。
- リアルタイムで帳簿の確認ができる
- 顧問税理士も顧問先も同時に帳簿の確認ができます。
- 以前は、顧問先から顧問税理士へデータを移してから同期するのが一般的でしたので、基本的には月に1度データが一致し、相互に確認できるというものでした。しかし、クラウド会計を採用した場合、仕訳の途中であっても常に同期されているという点が今までとは全く異なる点です。
リアルタイムで帳簿の確認ができるということは、会社の状態を常に把握することができ、融資の際など素早く試算表を提出するなど今までには迅速な対応をとることができるようになります。
メリット①常に最新
従来型の会計ソフトは、アップデートはCDやオンラインでダウンロードして行うものが一般的でした。保守に入っていない場合には、その都度アップデート費用を請求されます。また、アップデートに気付かず古いまま使用していたということもあります。
しかし、クラウド会計は常に最新、常に自動アップデート。しかも、それはソフト会社側が行うため失敗の恐れはまずありません。
使用料金の中には保守料が含まれており、月々の利用料以外には別途の費用は発生しないため、料金が明確であるともいえます。
福岡の税理士「野村税理士事務所」も従来型の会計ソフト・クラウド会計ソフトの両方を取り扱っており、どちらが御社に合うかはお気軽にご相談いただければと思います。
メリット②その他のサービスとの連携
IDとパスワードを利用して各サービスとの連携がはかれます。
- 銀行口座との連携・自動仕訳
- クレジットカードとの連携・自動仕訳
- Amazon・楽天との連携・自動仕訳
- 電子マネーとの連携・自動仕訳
- POSシステムとの連携・自動仕訳
今後も各サービスとの連携はますます強くなっていきます。
メリット③入力作業が減少
上記の通り、各サービスとの連携による自動仕訳が可能となったため、通帳をコピーし、カード明細をコピーし、伝票に起こし、会計ソフトに入力するという作業があっという間に完結します。
勘定科目も自動で判定するものが大半ですので、あとはそれが合っているのか確認し、手直しが必要な分だけ手作業をすれば済み、単純なルーティンワークの大幅カットが可能です。
クラウド会計のデメリット
それでは、クラウド会計は万能で全くデメリットがないかというと、そういうわけでもなく、次のようなデメリットが考えられます。
デメリット①セキュリティ
クラウド上に自分の会社のデータが存在するのはセキュリティ上問題ないのかということがよく言われます。
では、インストール型の従来の会計ソフトと比べてどれほどセキュリティ上問題があるのでしょうか?
- 今まで会計データを顧問税理士にメールで送っていませんでしたか?
- 実はこれが最もセキュリティ上危ないと言われています。なぜなら、誤送信が多いのです。
- 税理士事務所に社会保険労務士宛の給与データが送られてきたり、業者向けの見積書が送られてきたり様々な誤送信を経験したきました。もちろん、誤送信であることを顧問先にはすぐに連絡を入れますが、逆でなくてよかったという経験は何度もあります。
- また、データメールで送るという時点でクラウド上にデータが存在することになりますので、クラウド会計との違いがあるようには思えません。
- 会計データはUSBで税理士事務所に渡していましたか?
- USBがどこかに行った。会計データが入ったままのUSBで別業者にも異なるデータを渡した。…など、かなり危険なことを耳にします。簡単にデータが流出する危険にさらされています。
- クラウド会計では会計データを税理士事務所と受け渡しすることはありません。
- バックアップは外部のサーバーではありませんでしたか?
- 大事なデータだからと外部サーバーに保存している会社は多いのではないでしょうか。その時点ですでにデータは社外に出ています。
- 税理士事務所は外部のサーバーにバックアップをとっていませんか?
- 自社が外部サーバーにバックアップをとっていなくても、福岡の税理士事務所は福岡外の外部サーバーにバックアップをとることがほとんどです。火事や災害の場合に税理士事務所内部のみでバックアップとることは何の意味もありません。
- パソコンは焼けたけど、バックアップのUSBは焼けなかったということは考えられません。また、盗難があった場合もそうです。簡単にデータは流出します。そのため、福岡の税理士は本州など比較的離れた場所の外部サーバーにバックアップをとっていることがほとんどです。
いかがでしょうか?クラウド会計の方がデータをあちらこちらに飛ばしたり、人間が持ち出したりできない分安心ではありませんか?
そもそも、セキュリティ面では金融機関システムと同様のシステムが構築されており、どこででもアクセスできるクラウド会計が心配であれば、どこででもお金を引き出せるような銀行にお金を預けることはもっと危険ということになります。
デメリット②インターネット回線が必要
従来の会計ソフトはパソコンにソフトをインストールしますので、インターネット回線は不要でした。
しかし、クラウド会計はインターネット回線がないと使用できません。会社内にインターネット環境がない状況で、クラウド会計を導入はかなり厳しいといえます。そもそもメールすらできませんので・・・。
会社外でインターネットを使用する場合、現在はホテルでもWi-Fiが利用できますし、スマホにテザリング機能もありますので、あまり心配はいらないかと思います。ポケットWi-Fiも月額1,000円未満で利用できます。
デメリット③スピードが遅い
個人的はこちらが一番のデメリットと考えています。インターネット回線のスピードが影響するのはもちろんですが、回線が早くてもインストール型と比べると遅いという声もあります。
特に慣れた経理職員や税理士事務所の職員はピアノを弾くかのごとく慣れた手つきで入力するものです。しかし、クラウド会計ではそれは難しいことがあります。
ソフトメーカーも努力をしているようで、以前より格段に早くはなってきています。
デメリット④旧態依然の会社
インターネットバンキングやクレジットカードを全く利用していない会社や個人事業者の場合、クラウド会計のデメリットというよりメリットが少ないという印象です。
会計を最新にする前にすべきことがたくさんあるはずです。
デメリット⑤従来の会計ソフトからの移行
新規に開業した場合や新しく会計ソフトを導入する場合には問題ありませんが、従来の会計ソフトからの移行の場合には多少の手間はかかります。
しかし、各クラウド会計ソフトメーカーとも簡単にいこうできるように工夫されているようです。次のことに注意して、移行すれば問題ありません。
大きな声では言いにくいですが、税理士事務所にお願いすると案外あっさり引き受けてくれるものです。
- 勘定科目
- 補助科目(枝番・適用残高)
- 開始残高
福岡の税理士「野村税理事務所」はこちらを設定させていただきますので、ご遠慮なくお問合せ下さい。
会計の歴史
会計は、近年大きな変化を何度か経験しています。
会計の近年の歴史
- 手作業による会計
- 現金出納帳・売掛帳等の各種出納帳から伝票を起票
- 伝票から総勘定元帳への転記
- 総勘定元帳から試算表の作成
- 試算表から決算書の作成
- パソコンの一部利用による会計
- 現金出納帳・売掛帳等の各種出納帳から伝票を起票(各種出納帳はexcelや販売管理ソフトで作成)
- 伝票を会計ソフトへ入力
- 会計ソフトから総勘定元帳・試算表・決算書の印刷
- パソコンをフル活用した会計
- 日々の取引を直接会計ソフトへ入力
- 会計ソフトから伝票・各種帳票を印刷
- 会計ソフトで残高管理・印刷(売掛金等を補助残高で管理)
- 会計ソフトから総勘定元帳・試算表・決算書の印刷
現在は、完全な手作業による会計を行っているところはほぼいないでしょう。パソコンの一部利用による会計を行っているところがほとんではないでしょうか。その場合、サーバーに各パソコンが社内ネットワークでつながれ、担当者が各担当分を入力、管理することにより、そのネットワーク上でデータの共有が行われています。
会計の未来
会計は、今後手作業からパソコンを利用した会計に移っていった時代並みに大きな変化を迎えることとなるでしょう。
メールと同様にサーバーで管理するパッケージものの会計ソフトが今すぐ消えることはないと思われますが、徐々にクラウド会計への移行が行われるものと考えられます。
特に、開業したての若い経営者はクラウドへの抵抗が少なく、初めからクラウド会計を行う経営者も多く出てきました。
また、既存の大手の会社も一部でクラウドを利用した会計に移行しているところも出てきました。
野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界20年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。