個人事業主として開業する際は、白色申告と青色申告のいずれかを選ぶ必要があります。白色申告は青色申告に比べて比較的経理作業がシンプルなため、会計知識がない場合でも手続きしやすいです。
しかし、「そもそも白色申告ってなに?」「白色申告のメリットが知りたい」と考えている人も多いでしょう。
そこで本記事では、白色申告の概要や利用するメリット・デメリットを解説します。白色申告が向いている人・向いていない人やよくある質問に関しても紹介するため、気になる人はぜひチェックしてください。
白色申告とはシンプルな確定申告の方法
白色申告とは、青色申告よりもシンプルな確定申告の方法です。
個人事業主として白色申告で開業する際は、開業届の提出だけで手続きできます。白色申告で帳簿をつける際は簡易簿記(単式簿記)で問題なく、確定申告時は収支内訳書の提出だけで完了します。
また、保存帳簿も任意帳簿で完了するため、初めての開業・確定申告でも無理なく手続きを進めらるでしょう。これまでは白色申告の帳簿は義務化されていませんでしたが、2014年の法改正から義務化されています。
帳簿をつける必要があるものの、簡易簿記で問題ないため、会計知識がない人でも比較的簡単に手続きが可能です。会計知識がなく、初めての開業の場合はシンプルに確定申告できる白色申告は最適と言えるでしょう。
白色申告と青色申告の違い
白色申告と青色申告の違いは、所得控除の有無と記帳方法です。
青色申告では、特定の記帳方法と申請を行えば、年間最大65万円の所得控除を受けられます。経費とは別に所得控除を受けられるため、税制面で非常にメリットのある制度です。
一方、白色申告には所得控除は存在しません。どのような手続き方法でも、白色申告ならではの税制面の優遇は存在しないため、注意が必要です。
また、青色申告の記帳方法は複式簿記が一般的です。複式簿記を採用した帳簿でなければ、65万円の所得控除を受けられないため、簡易簿記で記帳するケースは少ないです。
白色申告では記帳の義務はあるものの、方法までは指定されていないため、簡易簿記による帳簿でも問題ありません。個人事業主は毎年確定申告が必須となるため、白色申告と青色申告の違いは必ず把握しておきましょう。
青色申告については「青色申告とは?青色申告の対象者や申告のやり方を解説」を参考にして下さい。
白色申告を利用するメリット
白色申告を利用するメリットは、以下の通りです。
- 事前に申請する必要がない
- 簡易簿記による記帳で良い
事前に申請する必要がない
白色申告を利用するメリットとして、事前に申請する必要があります。
青色申告で確定申告を行う際は「所得税の青色申告初任申請書」を3月15日まで、もしくは会合から2ヶ月以内に税務署へ提出しなければなりません。
一方、白色申告の場合は開業届を税務署へ提出したら手続きは完了となります。さらに、白色申告の場合は確定申告の際に確定申告書と収支内訳書の提出だけで済みます。青色申告の場合は、青色申告決算書・第三表・第四表の提出も必要です。白色申告専用の書類は存在しないため、手続きの手間を省けるでしょう。
ただし、青色申告は事前に必要書類の提出が必須です。万が一、期日までに書類を提出できなかった場合は、自動的に白色申告へ切り替わってしまうため注意しましょう。
簡易簿記による記帳で良い
白色申告を利用するメリットして、簡易簿記による記帳で良い点があります。
青色申告で確定申告を進める場合、最大65万円の控除を受けるために複式簿記で記帳が必要です。複式簿記とは、勘定科目の貸方・借方を対にして勘定元帳に記入する制度です。正しく複式簿記を記帳するためには、一定の会計知識が必要となるため、会計処理が初めての場合は戸惑ってしまうでしょう。
一方、白色申告は簡易簿記による記帳でも問題ありません。簡易簿記では、現金出納帳の増減と要因を記録するだけです。貸方・借方は存在しないため、会計知識がない場合でも記帳が可能です。
そのため、会計知識がない場合や複雑な書類作成に抵抗を感じる場合は、白色申告の記帳方法は大きなメリットと言えるでしょう。
白色申告を利用するデメリット
白色申告を利用するデメリットは、以下の通りです。
- 節税効果は見込めない
- 赤字繰越に対応していない
節税効果は見込めない
白色申告を利用するデメリットとして、節税効果が見込めない点が挙げられます。
青色申告を利用して確定申告した場合、最高65万円の所得税からの控除(青色申告特別控除)を受けられたり、青色事業専従者給与を活用できなかったりします。青色申告特別控除や青色事業専従者給与を利用するには専用書類の提出や複式簿記により記帳が必要なものの、上手く活用できれば大きな節税効果が見込めます。
しかし、白色申告には節税効果が見込める制度は存在しません。シンプルな記帳手続きで確定申告できる分、節税効果を享受できないのは白色申告のデメリットと言えるでしょう。
赤字繰越に対応していない
白色申告を利用するデメリットして、赤字繰越に対応していない点が挙げられます。
青色申告には赤字繰越制度が存在し、事業で赤字が発生した場合でも翌年から最長3年間は繰り越せます。万が一、1期目・2期目で赤字が出た場合でも、3期目以降に発生した黒字分と相殺できます。つまり、これまでの赤字を活用して、黒字が出た翌年も所得税の金額を抑えられます。
一方、白色申告には赤字繰越制度が存在しないため、どれだけ赤字を発生させていても、事業が黒字になればその分の所得税が課せられます。最大限の節税対策ができないため、事業を継続する上では大きなデメリットと言えるでしょう。
白色申告が向いている人・向いていない人
続いては、白色申告が向いている人・向いていない人について解説します。これから開業を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
白色申告が向いている人
白色申告が向いている人は、以下の通りです。
- 複式簿記による記帳が苦手な人
- できるだけシンプルな手続きで確定申告を終えたい人
- 事業規模の兼ね合いで節税対策などを気にしていない人
白色申告はシンプルな手続きで確定申告を終えられる点が特徴です、簡易簿記による記帳でも問題ないため、複式簿記が苦手な人や会計知識がない人にはおすすめの方法です。
白色申告は青色申告のように専用の書類は存在しません。開業届を出すだけで自動的に白色申告として続きを進められるため、書類作成の手間を省ける点も特徴と言えるでしょう。
白色申告は青色申告のように節税効果は得られません。しかし、事業が小規模な場合や節税対策を気にしていない人にはおすすめの方法です。翌年から青色申告へ切り替えることもできるため、本年度の事業状況を確認しながら選択するのも一つの方法と言えるでしょう。
白色申告が向いていない人
白色申告が向いていない人は、以下の通りです。
- 最大限の節税効果を享受したい人
- 初めて個人事業主として開業する人
- 家族を従業員として雇用する予定の人
白色申告は最大限の節税効果を受けたいと考えている人にとっては、おすすめできない申告方法です。青色申告は最高65万円の所得控除を含めた、さまざまな税制面での優遇が存在します。
しかし、白色申告には税制面での優遇が存在しないため、最大限に節税したいと考えているなら、青色申告を選ぶようにしましょう。
開業届を提出する前、提出から2ヶ月以内なら青色申告の申請が間に合います。これから個人事業主として開業を考えている場合は白色申告がおすすめです。
また、家族を従業員として雇用したい場合は、青色申告を選びましょう。白色申告には青色事業専従者給与が存在しないため、給与を支払うだけでもデメリットとなるため注意が必要です。
白色申告を申請するなら会計ソフトが便利
白色申告はシンプルな手続きで確定申告ができる方法ですが「実際に簡易簿記ってどのように記帳したらいいの?」「確定申告書の作成方法がわからない」などの疑問が出てくるでしょう。
複式簿記よりも記帳が簡単な簡易簿記でも知識がなければ、スムーズな対応は難しいのが現実です。
そのため、白色申告を申請するなら会計ソフトがおすすめです。会計ソフトでは、開業届の作成方法から簡易簿記の記帳が可能。確定申告書の作成も会計ソフト内でできてしまうため、初めて開業する場合や会計知識がない人でも安心して確定申告を実行できます。
また、初めて記帳する人でも使えるように画面ガイドやカスタマーセンターへの問い合わせなどのさまざまなサポートが用意されています。
会計ソフトを活用して白色申告を申請すれば、全くの経験がない人でもスムーズに手続きの完了が可能です。これから白色申告の申請を考えている場合は、会計ソフトの導入を検討してみてください。
白色申告の申請方法・やり方の手順を解説
白色申告として開業する場合は「開業届」を準備しましょう。
開業届は、税務署や国税庁のHP・会計ソフトからダウンロードが可能です。白色申告では青色申告のように専用書類が用意されていないため、開業届の必要項目を記入しましょう。
開業届の準備が完了した後は、税務署へ申告しましょう。
税務署への申告方法は、直接申請・郵送申請・e-taxを利用したインターネット申請などが選択できます。
自身の利用しやすい方法で開業届を提出して、白色申告として申告しましょう。
白色申告として手続きが完了した後は、3月15日までに確定申告を実施しましょう。
白色申告の場合、確定申告時に必要な書類は以下の2つです。
- 確定申告書
- 収支内訳書
それぞれ税務署や国税庁のHP・会計ソフトからダウンロードが可能です。
会計ソフトからの手続きであれば、書類の取得から作成までをスムーズに進められます。
各種書類の作成が完了した後は、直接提出・郵送提出・e-taxを利用したインターネット提出など、好みの方法を活用して提出を完了させましょう。
白色申告に関するよくある質問
- 白色申告から青色申告へ変更できるの?
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白色申告から青色申告に変更は可能です。再度「所得税の青色申告承認申請書」を所管の税務署に提出することで変更できます。
しかし、すぐに青色申告へ切り替えられるわけではありません。青色申告をしようとする年の3月15日までに提出が必要で、期限が過ぎている場合は翌年の手続きとなるため注意しましょう。
- 白色申告で経費にならないものは?
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白色申告で経費にならない代表例は、以下の通りです。
- 事業主、親族の給与
- 健康診断費などの事業主の健康に関わる費用
- 所得税・住民税などの税金
白色申告と青色申告では、経費にできる内容が異なるため、開業前にチェックしておくと良いでしょう。