「今月は黒字のはずなのに、通帳の残高が心もとない」「取引先への支払いが先に来て、入金が間に合うか不安」――こうした資金繰りの悩みは、業績が良い会社でも起こります。
結論からお伝えすると、資金繰りは資金繰り表で先の現金の動きを見通し、資金が足りなくなる前に対策を打つことが基本です。売上や利益とは別に、現金がいつ・いくら動くかを管理することが、資金ショート(現金の枯渇による支払い不能)を防ぐ最大のポイントになります。
野村税理士事務所は福岡市の税理士事務所で、月次決算とあわせて資金繰りのご相談をお受けしています。この記事では、資金繰りの考え方、資金繰り表の作り方、資金ショートを防ぐポイント、資金が足りなくなったときの選択肢を、2026年9月時点の情報でご紹介します。
※月々の利益と現金の増減をあわせて見る「キャッシュフロー計算書」については、キャッシュフローの記事で詳しく解説しています。
この記事でわかること
- 資金繰りとは何か、なぜ利益とは別に管理が必要か
- 資金繰り表の作り方と、実務で使うときのポイント
- 資金ショート(資金不足)を防ぐための具体的な対策
- 資金が足りなくなったときの選択肢(融資・ファクタリングなど)
資金繰りとは

資金繰りとは、事業を続けるために必要な現金(お金)の出入りを管理することです。売上を計上したタイミングと、実際に現金が入金されるタイミングはずれることが多く、逆に費用は先に現金で支払うこともあります。この「ずれ」を管理し、必要なときに支払いに使える現金を確保しておくことが資金繰りです。
損益計算書上は黒字(利益が出ている状態)でも、売掛金の回収が遅れたり、設備投資や在庫の仕入れで先に現金を支払ったりすると、手元の現金が足りなくなることがあります。これを「黒字倒産」と呼びます。資金繰りは、利益とは別に、現金の残高そのものを見る管理です。
資金繰りが悪化する主な原因
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 売掛金の回収遅れ | 取引先の支払いサイト(支払いまでの期間)が長い、入金が遅れる |
| 在庫の増加 | 商品や材料の仕入れで現金が先に出ていき、在庫として滞留する |
| 急な設備投資 | まとまった支出で一時的に現金が減る |
| 借入金の返済 | 元金の返済は経費にならないため、利益が出ていても現金は減る |
| 季節変動・売上の波 | 繁忙期と閑散期で入出金のバランスが崩れる |
原因の多くは、経営そのものが悪いのではなく、入金と出金の「タイミングのずれ」から生じます。だからこそ、資金繰り表で先の見通しを立てることが対策の第一歩になります。
資金繰り表の作り方

資金繰り表は、一定期間(月次や週次)ごとに、現金の「収入」「支出」「残高」を一覧にした表です。損益計算書とは違い、実際に現金が動いたタイミングで記録します。
- 現金収入:売掛金の入金、現金売上、借入金の実行など
- 現金支出:仕入や経費の支払い、給与、家賃、借入金の返済(元金部分)、税金の納付など
- 現金残高:前月末の残高+当月の収入−当月の支出で、月末の残高を計算します
まずは3か月先まで、可能であれば6か月先までを見通せると安心です。売上の入金予定は取引先ごとの支払いサイトから、支出は毎月の固定費(家賃・給与・借入金の返済など)と、その月にしかない支出(賞与・税金の納付・設備投資など)を分けて見積もると精度が上がります。表計算ソフトのほか、freeeなどクラウド会計の資金繰り機能でも作成できます。
簡単な例で考える
たとえば、月末の現金残高が200万円、翌月の売上入金の見込みが300万円、翌月の支払い(仕入・給与・家賃・借入金の返済など)の見込みが450万円だとします。この場合、翌月末の現金残高は「200万円+300万円−450万円=50万円」となり、資金繰り表を作っていなければ、支払いの直前まで不足に気づけなかったかもしれません。あらかじめこの数字が見えていれば、支払日をずらす交渉をする、入金を早めてもらう、短期の借入を検討するといった対策を、余裕をもって進められます。

資金繰り表を使うときのポイント

- 予測と実績を毎月比べて、ずれた理由を確認する(精度が上がっていく)
- 「最低限必要な現金残高」をあらかじめ決めておく
- 税金の納付・賞与・保険料など、毎月ではない大きな支出を書き漏らさない
- 楽観的な売上予測ではなく、やや厳しめの予測で作る
資金繰り表は一度作って終わりではなく、毎月、実績を反映しながら更新することで精度が上がっていきます。特に、消費税や法人税・所得税の納付、賞与、保険料の年払いなど、毎月は発生しないもののまとまった金額になる支出は、見落としがちです。あらかじめ年間のスケジュールに書き出しておきましょう。
資金ショートを防ぐポイント

① 入金を早める
取引先との契約時に支払いサイトを短くする、請求書の発行を早める、入金確認や督促を仕組み化するなど、現金が入るまでの期間を短くする工夫です。売掛金の管理を怠ると、資金繰りの悪化に直結します。
② 支払いを計画的に行う
支払いサイトを一方的に延ばすことは取引先との関係上おすすめできませんが、支払日を集中させすぎない、資金の出入りが重なる時期をあらかじめ把握しておくなど、支出のタイミングを管理することはできます。
③ 在庫・固定費を見直す
必要以上の在庫は現金を寝かせることになります。定期的に在庫の水準を見直しましょう。固定費(家賃・保険料・サブスクリプション費用など)も、資金繰りが厳しくなる前に棚卸ししておくと安心です。
④ 兆候が出たら早めに相談する
資金繰り表の残高が数か月先にマイナスになりそうだとわかったら、その時点で税理士や金融機関に相談しましょう。資金が底をつく直前より、余裕があるうちに動いたほうが、選べる対策の幅が広くなります。
資金が足りなくなったときの選択肢
- 審査に一定の期間がかかる
- 決算書・事業計画書などの提出が必要
- 金利は比較的低め
- 売掛金を早期に現金化できる
- 融資に比べて資金化までが早い
- 手数料がかかるため、恒常的な利用は避けたい
資金が不足しそうなときの代表的な選択肢は、金融機関からの融資と、売掛債権を活用するファクタリングです。融資は審査に時間がかかりますが、金利は比較的低く抑えられます。ファクタリングは早く現金化できる一方、手数料がかかるため、緊急時の一時的な利用にとどめるのが基本です。日常的に利用すると手数料の負担が資金繰りをかえって圧迫することがあります。
いずれの方法も、資金が完全に尽きてからでは選択肢が限られます。資金繰り表で数か月先の資金不足が見えた時点で、早めに検討を始めることが大切です。
融資を検討するときの基礎知識
| 制度 | 特徴 |
|---|---|
| 日本政策金融公庫 | 民間金融機関の取組みを補完する政策金融機関。中小企業・小規模事業者・個人事業主の資金調達を支援し、創業支援にも力を入れています |
| 信用保証協会の保証付き融資 | 信用保証協会が保証人となることで、民間金融機関からの借入を受けやすくする仕組み |
| プロパー融資 | 信用保証協会の保証を付けず、金融機関が直接審査して行う融資 |
融資を申し込む際は、事業の内容や数字の根拠を示す事業計画書の提出を求められることが一般的です。事業計画書の作り方は、融資を申し込む際の事業計画書作成の記事で詳しく解説しています。どの金融機関に相談すればよいか迷う場合は、金融機関紹介のページもあわせてご覧ください。
信用保証協会の保証付き融資を利用する場合、保証料の負担が発生します。保証料率や融資条件は保証協会・金融機関・融資制度によって異なるため、金額の見通しは事前に金融機関または保証協会へご確認ください。プロパー融資は保証料がかからない一方、金融機関の審査基準がより重視される傾向があります。どちらが向いているかは、事業の状況や資金使途によって変わるため、税理士に相談しながら検討するとよいでしょう。

当事務所の資金繰りサポート

野村税理士事務所では、月次決算を通じて現預金の動きを毎月確認し、資金繰りの相談をお受けしています。AI月次分析レポートでは、現預金の増減や主要な数字の変化をわかりやすくまとめ、資金繰りの見通しを立てる材料としてお使いいただけます。分析はAIが補助し、内容は必ず税理士が確認したうえでお伝えします。
融資を検討する際の事業計画書の作成支援、金融機関への相談の同席、必要書類の準備なども承っています。「資金繰りが厳しくなってから相談する」のではなく、資金繰り表を見ながら早めにご相談いただくことで、選べる対策の幅が広がります。
資金繰りについてよくある質問

資金繰り表は必ず作らないといけませんか?
法律上の義務ではありませんが、現金の動きを事前に把握できるため、規模の大小にかかわらず作成をおすすめしています。特に季節による売上の波が大きい業種や、大きな設備投資を予定している場合は効果的です。
赤字でも資金繰りは大丈夫なことがありますか?
はい。赤字でも、手元の現金や借入枠に余裕があれば、当面の資金繰りは問題ないことがあります。逆に黒字でも、売掛金の回収が遅れたり在庫が増えたりすると資金繰りが悪化することがあります。損益と資金繰りは分けて考える必要があります。
金融機関に相談するタイミングはいつがよいですか?
資金繰り表で数か月先の残高が心もとないとわかった時点が目安です。資金が底をつく直前の相談は、金融機関側も対応が難しくなります。余裕があるうちの相談ほど、前向きに検討してもらいやすくなります。
資金繰り表の作成を税理士に依頼できますか?
はい。月次決算のデータをもとに、資金繰り表の作成や見方のご説明をサポートしています。会計ソフトのデータと連携させることで、毎月の更新の手間も減らせます。作成後の見方や、資金不足が見えた場合の対策についても、あわせてご相談いただけます。
まとめ

資金繰りは、利益とは別に、現金の出入りと残高を管理することです。資金繰り表で数か月先までの見通しを立て、入金を早める・支払いを計画的に行う・在庫や固定費を見直すといった対策を、資金が足りなくなる前から進めておくことが、資金ショートを防ぐ一番の近道です。
野村税理士事務所では、月次決算とAI月次分析レポートを通じて、資金繰りの状況を毎月確認し、融資のご相談にも対応しています。資金繰りに不安を感じたら、早めにご相談ください。
資金繰りにご不安のある方へ
野村税理士事務所では、月次決算とAI月次分析レポートで現預金の動きを毎月確認し、資金繰り表の作成や融資のご相談にも対応しています。初回のご相談は無料です。
面談は、オンライン(全国対応)のほか、ご来所(薬院駅から西鉄・地下鉄とも徒歩2分)でも承っています。訪問によるご相談は福岡市内全域と近隣地域に対応しており、それ以外の地域はオンラインまたはご来所にてご案内しています。お電話でのお問い合わせは平日10:00〜17:00に承っています。
料金の詳細は料金表、はじめての方は初めての方へもご覧ください。
参考資料:日本政策金融公庫/当事務所 ファクタリングのページ/当事務所 キャッシュフローの記事/当事務所 融資を申し込む際の事業計画書作成/野村税理士事務所 料金表
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。融資制度の詳細は各金融機関の最新情報をご確認ください。

税金や資金繰りの課題を解決するなら、野村税理士事務所へご相談ください。
当事務所は、福岡を中心に企業経営者の税務と経営を支援している税理士事務所です。IT・Webにも強く、あらゆる業種の事業者様のクラウド会計の導入サポートを通じ、事業の安定化を図ります。
オンライン相談にも対応しており、遠方からでも専門家のアドバイスを受けることができます。初回のご相談は無料ですので、節税や資金調達でお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界23年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。
YouTube・TikTokでは「税理士のむさん」として、税金・会計のポイントを短い動画で解説しています。
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