「扶養の範囲が広がるって本当? パートの妻や大学生の子は、今年いくらまで働けるの?」
「ひとり親控除も増えるって本当? いつから効いてくるの?」
2026年(令和8年)3月に令和8年度税制改正の改正法が成立し、家族の「扶養」に関するルールが見直されました。年末調整の時期が近づくにつれ、従業員の方やご家族からこうした質問を受ける経営者の方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、配偶者や子どもなどを扶養に入れるための「所得の上限」が、58万円から62万円へ4万円引き上げられます。所得税は2026年分(令和8年分)から適用されるため、今年の年末調整から新しい基準で判定することになります。あわせて、勤労学生控除・配偶者特別控除・特定親族特別控除の所得の区切りも4万円ずつ動き、ひとり親控除は控除額そのものが3万円増えます(こちらは所得税が2027年分から)。
この記事では、財務省の「令和8年度税制改正の大綱」をもとに、改正前後の所得要件の比較、給与収入に置き換えた場合の目安(計算根拠つき)、パート・アルバイトの家族がいる家庭で何が変わるか、ひとり親控除の拡充と適用時期を、税理士の立場からわかりやすく整理します。
この記事でわかること
- 扶養の所得要件が58万円→62万円になる理由と対象
- 勤労学生・配偶者特別控除・特定親族特別控除の新しい所得の区切り
- 所得62万円は給与収入でいくらか(2026・2027年分と2028年分以後の違い)
- パート・アルバイトの家族がいる家庭で、何がどう変わるか
- ひとり親控除(所得税38万円・住民税33万円)の中身と適用時期
- 経営者・個人事業主が年末調整までにやっておきたいこと
まず押さえたい「収入」と「所得」の違い
- 給与なら源泉徴収票の「支払金額」
- いわゆる額面の金額
- 例:パート収入 年135万円
- 収入-給与所得控除(事業なら必要経費)
- 扶養の判定は原則合計所得金額で行う
- 例:135万円-74万円=61万円(2026年分)
扶養の話をするときに、いちばん混乱しやすいのが「収入」と「所得」の違いです。今回の改正で引き上げられたのは、あくまで「所得」の要件です。
- 収入:給与なら、源泉徴収票の「支払金額」にあたる、いわゆる額面の金額
- 所得:収入から必要経費を差し引いた金額。給与の場合は、必要経費の代わりに「給与所得控除」(会社員の概算経費のようなもの)を差し引いた「給与所得」
- 合計所得金額:給与所得・事業所得・不動産所得などを合計した金額。扶養の判定は原則としてこの金額で行います
つまり「所得62万円以下」というのは、「給与の額面が62万円以下」という意味ではありません。給与収入しかない人なら、額面から給与所得控除を差し引いた後の金額が62万円以下かどうか、で判定します。給与以外に副業の事業所得などがある人は、それらも合計して判定する点に注意が必要です。
今回の改正は、基礎控除が58万円から62万円に引き上げられた(物価上昇に合わせた見直し)のと連動して、扶養などの所得要件も同じく4万円引き上げたものと理解するとわかりやすいでしょう。基礎控除や給与所得控除の改正の全体像は、次の記事で詳しく解説しています。
▶ あわせて読みたい:基礎控除・給与所得控除の引上げと「178万円」— 手取りはどう変わる?
改正前後の所得要件を一覧で比較
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 勤労学生の合計所得金額 | 85万円以下 | 89万円以下 |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額 | 58万円超133万円以下 | 62万円超133万円以下 |
| 特定親族特別控除の対象となる親族の合計所得金額 | 58万円超123万円以下 | 62万円超123万円以下 |
| ひとり親の「生計を一にする子」の総所得金額等 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 家内労働者等の必要経費の最低保障額 | 65万円 | 69万円 |
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」個人所得課税をもとに作成
大綱に示された、扶養などに関する所得要件の改正前後を一覧にすると、上の表のとおりです。適用は、所得税が2026年分(令和8年分)以後、住民税が2027年度分(令和9年度分)以後です(ひとり親控除の控除額は後述のとおり別の時期)。

ポイントは、「扶養に入れるかどうか」の境目が、すべて4万円ずつ上にずれたことです。配偶者特別控除と特定親族特別控除は、扶養の範囲(62万円以下)を少し超えた人のための控除なので、その「入口」も同じく62万円超に移っています。上限(133万円・123万円)は変わっていません。
同一生計配偶者・扶養親族:58万円→62万円
「同一生計配偶者」とは、生計を一にする配偶者で所得が一定以下の人のこと、「扶養親族」とは、生計を一にする子や親などの親族で所得が一定以下の人のことです。配偶者控除や扶養控除を受けられるかどうかは、この所得要件で決まります。今回、この上限が62万円以下になりました。
配偶者特別控除:対象は「62万円超133万円以下」
配偶者の所得が扶養の範囲を超えても、一定の範囲までは「配偶者特別控除」で段階的に控除を受けられます。改正後は、配偶者の合計所得金額が62万円を超え133万円以下の場合が対象です。入口が62万円超にずれたことで、配偶者控除から配偶者特別控除へ切り替わる境目も同じく動きます。
特定親族特別控除:対象は「62万円超123万円以下」
特定親族特別控除は、大学生年代の子など一定の年齢の親族(特定親族)がアルバイトで扶養の範囲を超えて働いても、親の側で段階的に控除を受けられるようにする仕組みです。改正後は、その親族の合計所得金額が62万円を超え123万円以下の場合が対象になります。
勤労学生控除:85万円→89万円
勤労学生控除は、働きながら学ぶ学生本人が受けられる控除です。合計所得金額の要件が85万円以下から89万円以下に引き上げられます。なお、勤労給与等以外の所得が一定以下であることなど、ほかの要件は別途満たす必要があります。
- 引き上げられたのは「収入」ではなく「所得」の要件
- 扶養・勤労学生・配偶者特別控除・特定親族特別控除・ひとり親の子の要件が一斉に4万円上へ
- 配偶者特別控除(133万円)・特定親族特別控除(123万円)の上限は変わらない
所得62万円は給与収入でいくら?(計算根拠つき)
所得62万円を給与収入に置き換える手順
実務上いちばん知りたいのは、「パートやアルバイトの給与が、額面でいくらまでなら扶養の範囲に収まるか」でしょう。大綱そのものには給与収入に換算した金額は書かれていないため、ここでは給与収入のみで、ほかに所得がない人を前提に、当事務所で計算した目安をお示しします。
計算の考え方はシンプルです。給与所得は「給与収入-給与所得控除」なので、逆に「所得の上限+給与所得控除」が給与収入の目安になります。
- 2026・2027年分(令和8・9年分):給与収入220万円以下の人は、特例により給与所得控除が74万円(最低保障額69万円+5万円)。
→ 62万円+74万円=136万円。給与収入が136万円以下なら、所得62万円以下に収まる計算です - 2028年分以後(令和10年分以後):特例がなくなり、給与所得控除の最低保障額は69万円。
→ 62万円+69万円=131万円。給与収入が131万円以下なら、所得62万円以下に収まる計算です

同じ考え方で、ほかの区切りも2026・2027年分の目安として計算すると、次のようになります(いずれも給与収入220万円以下なので、給与所得控除74万円の特例の範囲内です)。
| 区切りとなる所得 | 計算 | 給与収入の目安(2026・2027年分) |
|---|---|---|
| 扶養の上限 62万円 | 62万円+74万円 | 136万円 |
| 勤労学生の上限 89万円 | 89万円+74万円 | 163万円 |
| 特定親族特別控除の上限 123万円 | 123万円+74万円 | 197万円 |
| 配偶者特別控除の上限 133万円 | 133万円+74万円 | 207万円 |
※給与収入のみで、ほかに所得がない場合の当事務所による試算です。2028年分以後の金額は、その時点の給与所得控除の計算方法によって変わるため、上表は2026・2027年分に限った目安です。
よく「〇〇万円の壁」という言い方がされますが、税金の扶養判定は、その年1年間(1月〜12月)の合計所得金額で行うものです。月の給与の額だけでは決まりませんし、給与以外の所得があれば合計されます。また、年ごとに給与所得控除の特例の有無が変わるため、2026・2027年分と2028年分以後では目安が変わる点にもご注意ください。
さらに、健康保険などの社会保険の扶養(被扶養者)の基準は、税金の扶養とは別の制度で判定されます。今回の税制改正で社会保険の基準が変わるわけではないため、「税金の扶養」と「社会保険の扶養」は分けて確認しましょう。
パート・アルバイトの家族がいる家庭で何が変わるか

ここからは、よくあるご家庭のケースで、改正によって何が変わるかを見ていきます。いずれも給与収入のみ、2026年分(令和8年分)で判定する前提です。
ケース1:会社員の夫+パートの妻(給与収入135万円)
妻のパート収入が年135万円の場合、給与所得控除74万円を差し引いた所得は61万円です。
- 妻の所得61万円は58万円を超える
- 同一生計配偶者に当たらず、配偶者特別控除の対象に
- 妻の所得61万円は62万円以下
- 同一生計配偶者に該当(夫の所得要件等を満たせば配偶者控除の対象)
- 「扶養の範囲内」として判定される
夫の側で受けられる控除の種類が変わるほか、配偶者が同一生計配偶者かどうかは、夫の年末調整の申告書の記載にも影響します。「今年は少し多めに働いた」というご家庭ほど、改正後の基準で判定し直す意味があります。
ケース2:大学生の子のアルバイト(給与収入150万円)
子のアルバイト収入が年150万円の場合、所得は150万円-74万円=76万円です。扶養親族の上限62万円は超えますが、特定親族特別控除の対象範囲(62万円超123万円以下)に入るため、年齢などの要件を満たせば、親は特定親族特別控除を受けられる可能性があります。
また、子ども本人にとっては、所得76万円は勤労学生の上限(89万円以下)の範囲内です。ほかの要件を満たせば、子ども自身が勤労学生控除を受けられます。
ケース3:学生のアルバイト(給与収入160万円)
給与収入160万円なら所得は86万円です。改正前の勤労学生の上限85万円のままであれば1万円超えていた計算ですが、改正後の89万円以下には収まります。勤労学生控除の要件がちょうど境目に近い学生にとっては、今回の4万円の引上げが意味を持ちます。

家庭で見直したいこと
- 家族のその年の給与収入の見込み(1月〜12月の合計)を把握する
- 給与以外の所得(フリマ・副業・年金など)がないか確認する
- 税金の扶養と社会保険の扶養を分けて考える
- 2028年分以後は、給与所得控除の特例がなくなる点を頭に入れておく
「働き控え」を考える際も、税金の扶養の判定だけで決めてしまうと、社会保険の負担や家計全体の手取りを見落としがちです。ご家庭の状況によって最適な働き方は異なりますので、迷う場合は専門家にご相談ください。

ひとり親控除の拡充:所得税38万円・住民税33万円へ

ひとり親控除は、婚姻していない(または配偶者の生死が明らかでない)人のうち、生計を一にする子がいるなど一定の要件を満たす人が受けられる控除です。今回の改正では、次の2点が見直されました。
- 控除額の引上げ:所得税35万円→38万円、住民税30万円→33万円(いずれも3万円増)
- 子の所得要件の引上げ:生計を一にする子の総所得金額等が58万円以下→62万円以下

| 項目 | 改正前 | 改正後 | 適用時期 |
|---|---|---|---|
| ひとり親控除(所得税) | 35万円 | 38万円 | 2027年分(令和9年分)以後 |
| ひとり親控除(住民税) | 30万円 | 33万円 | 2028年度分(令和10年度分)以後 |
| 子の総所得金額等の要件 | 58万円以下 | 62万円以下 | 所得税は2026年分以後、住民税は2027年度分以後 |
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」個人所得課税をもとに作成
なお、ひとり親控除を受ける本人の所得が500万円以下であるという要件については、大綱では変更の記載はありません。
控除が3万円増えると、税金はどれくらい変わる?
控除額が増えると、その分だけ課税される所得が減ります。減る税額は「増えた控除額×税率」で計算できます。所得税の税率は課税所得に応じて5%〜45%の累進税率、住民税の所得割は一般に10%です。
| 増える控除額 | 税率の例 | 軽くなる税額の目安 | |
|---|---|---|---|
| 所得税(2027年分〜) | 3万円 | 5% | 1,500円 |
| 所得税(2027年分〜) | 3万円 | 10% | 3,000円 |
| 住民税(2028年度分〜) | 3万円 | 10% | 3,000円 |
※所得税の復興特別所得税等は考慮していない概算です。実際の税額は所得や他の控除の状況によって異なります。
金額としては大きくありませんが、毎年続く軽減です。また、子どもがアルバイトをしている場合は、子の所得要件が62万円以下に広がったことも見逃せません。給与収入のみの子なら、2026・2027年分は136万円以下(62万円+74万円)で所得62万円以下に収まる計算です。
いつから適用? 所得税と住民税で時期がずれる
改正の適用スケジュール
上の図のとおり、今回の改正は項目によって適用時期が異なります。特に「所得税は○年分」「住民税は○年度分」という表現の違いに注意が必要です。住民税は前年の所得をもとに翌年度に課税されるため、同じ2026年の所得に対する改正でも、住民税では「2027年度分(令和9年度分)」と表されます。
また、給与の源泉徴収税額表の改正は2027年(令和9年)1月1日以後に支払う給与から適用され、2026年分は年末調整で対応するとされています。つまり、2026年の毎月の給与計算はこれまでどおりで、新しい扶養の基準は今年の年末調整で反映するということです。
- 所得税の「2026年分」=2026年1月〜12月の所得に対する所得税
- 住民税の「2027年度分」=2026年の所得をもとに、2027年度に課される住民税
- 同じ2026年の所得でも、所得税は「2026年分」、住民税は「2027年度分」と表します
経営者・個人事業主がいまやっておくこと

扶養の判定は、従業員の年末調整にも、経営者・個人事業主ご自身の確定申告にも関わります。2026年分の年末調整・確定申告に向けて、次の点をチェックしておきましょう。
従業員の年末調整に向けて
- □ 従業員に「扶養の所得要件が62万円以下になった」ことを周知する
- □ 扶養控除等申告書・配偶者控除等申告書を、新しい基準で記載してもらうよう案内する
- □ パート・アルバイトの家族がいる従業員には、家族の年間の給与収入見込みを確認してもらう
- □ 2026年の毎月の源泉徴収は従来どおり、差額は年末調整で精算されることを説明できるようにしておく
- □ 給与計算ソフト(freee人事労務など)が改正後の基準に対応しているか、更新状況を確認する
経営者・個人事業主ご自身の申告に向けて
- □ 配偶者や子どもの2026年の所得見込みを、新しい基準(62万円・89万円など)で確認する
- □ 大学生年代の子がアルバイトをしている場合、特定親族特別控除の対象になるか確認する
- □ ひとり親の方は、2027年分から控除額が増えることを把握しておく
- □ 青色事業専従者として給与を支払っている家族は、所得にかかわらず扶養の対象にならない点に注意する
- □ 家族の働き方を調整する場合は、社会保険の扶養の基準もあわせて確認する
毎月の数字を把握していれば、年末に慌てることはありません。家族の給与を含めた人件費の見込みを早めに押さえておくことが、正確な年末調整・申告の近道です。
- Q. 家族の収入が年の途中で増えた → 扶養の判定はその年1年間(1月〜12月)の合計所得金額で行います。年末の見込みで判定し直しましょう
- Q. 月の給与が少なければ扶養内? → 月額だけでは決まりません。給与以外の所得も合計します
- Q. 社会保険の扶養も62万円基準? → 社会保険の扶養は別の制度で、今回の税制改正で基準が変わるわけではありません
▶ あわせて読みたい:【総まとめ】2026年度税制改正のポイント
まとめ:扶養の境目が4万円上へ。今年の年末調整から新基準で

- 同一生計配偶者・扶養親族の所得要件は58万円以下→62万円以下(所得税は2026年分から)
- 勤労学生は85万円以下→89万円以下、配偶者特別控除は62万円超133万円以下、特定親族特別控除は62万円超123万円以下
- 給与収入のみなら、2026・2027年分は62万円+74万円=136万円以下、2028年分以後は62万円+69万円=131万円以下で所得62万円以下に収まる計算
- ひとり親控除は所得税38万円(2027年分〜)・住民税33万円(2028年度分〜)、子の所得要件も62万円以下へ
- 源泉徴収税額表の改正は2027年1月から。2026年分は年末調整で対応
- 税金の扶養と社会保険の扶養は別の制度。家族の働き方は両方を確認して判断を
福岡の野村税理士事務所では、freee認定アドバイザーとして、給与計算・年末調整の実務から、経営者・個人事業主ご自身とご家族の申告までサポートしています。AIを活用した月次分析レポートで毎月の数字を「見える化」しておけば、年末に家族の所得や人件費を慌てて集計する必要もありません。改正後の扶養の判定や、ご家族の働き方について迷われたら、お気軽にご相談ください。
▶ あわせて読みたい:「こどもNISA」— つみたて投資枠が0〜17歳に
※本記事は2026年9月時点で公表されている財務省資料をもとに作成しています。個別の適用可否は、ご家族の所得や状況によって異なりますので、税理士等の専門家にご確認ください。
参考資料
財務省「令和8年度税制改正の大綱」
財務省「令和8年度税制改正の大綱」個人所得課税
財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(PDF)
財務省「令和8年度 税制改正の解説」
財務省パンフレット「令和8年度税制改正」

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野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界23年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。
YouTube・TikTokでは「税理士のむさん」として、税金・会計のポイントを短い動画で解説しています。
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