税理士試験「相続税法」合格体験記
相続税法(平成28年度第66回合格)-松尾泰子様(仮名)からの投稿です。松尾さんは合格後、税理士法人の所属税理士として活躍後、独立開業され活躍されています。
税理士試験最終科目 相続税法合格への道のり
平成28年度第66回税理士試験において、私は最後の5科目目として相続税法を選択し、見事合格を果たしました。税理士を目指す多くの方々にとって、最終科目の選択は重要な岐路となります。科目選択の基準は人それぞれですが、一般的に以下のような要素が考慮されます。
科目選択の主な基準
- 自身の勉強スタイルとの相性(計算と理論のバランス等)
- 実務への直接的な有用性
- 学習内容のボリューム
- 個人的な興味・関心
- 先生や先輩からのアドバイス
私の場合、相続税法を選んだ主な理由は以下の2点です。
- 実務に直接役立つこと
- 個人的に好きな税法であること
振り返ってみると、税理士を目指し始めた時点で、法人税法、消費税法、相続税法という3つの税法を選択することを決めていたように思います。
合格までの道のり
相続税法の学習開始から合格までの道のりは決して平坦ではありませんでした。以下に、その過程を時系列で整理します。
時期 | 出来事 |
---|---|
学生時代 | 相続税法を一度受験するも、ほとんど知識が定着せず |
学習再開 | ほぼ初めての学習状態から再スタート |
学習期間中 | 毎月のテスト、全国模試、直前模試で一度も合格圏内に入らず |
仕事との両立 | 5月の繁忙期に退職者が出る、新規担当先が急増するなどのハプニングに見舞われる |
平成28年12月16日 | 官報合格の発表 |
仕事との両立は非常に困難を極めました。職場では受験を理由に特別扱いを受けることはなく、通常の業務をこなしながらの受験準備となりました。
合格の喜び
「今年が最後の受験にしよう」と決意して臨んだ相続税法の試験。合格の知らせを友人から聞かされるという予想外の展開もありましたが、その瞬間の安堵感と歓喜は生涯忘れられないものとなりました。合格の喜びの中で最も大きかったのは、両親の喜ぶ姿を見られたことです。長年の努力が実を結び、家族の期待に応えられたことは、私にとって何よりも幸せな出来事でした。
平日の勉強方法
平日は時間の確保が難しく、少しの移動時間やお昼休み、睡眠時間を削って勉強しました。週末は学校の自習室で朝から晩まで勉強する日々が続きました。
合格の理由
1. 学校の自習室の活用
家では集中力を維持するのが難しかったため、仕事帰りや休みの日は学校の自習室を利用しました。エアコンが効いていて快適な環境で勉強でき、疑問点はすぐに職員室で解決できました。TAC福岡校には休憩室やコピー機もあり、非常に便利でした。
2. 勉強仲間の存在
税理士試験の勉強は長期間にわたるため、モチベーションの維持が難しいです。しかし、学校に通い仲間ができることで、メンタルが強くなり、勉強が楽しくなりました。休憩中に模試の答え合わせをしたり、税法の解釈を話し合ったりすることで、切磋琢磨して成長できました。
3. 2か所の学校に通ったこと
最後の相続税法はTACと大原の2校に通い、授業・模試・答練を受けました。この選択が合格への近道となりました。簿記論、財務諸表論、法人税法までは1校のみで勉強し、何度もチャレンジして合格しましたが、消費税法は友人の勧めで他校の模試や答練を解くことで合格しました。2校に通うことで、効率的に勉強でき、自分への甘えがなくなり、時間を上手に使えるようになりました。
最後の科目である相続税法の受験で『2か所の学校に通うこと』を実行することで2年連続合格に繋がりました。
働きながら2校に通うなんて無理。と始めは思っていましたが、忙しいからこそ少しでも早く効率よく合格したい、学校の費用を節約したい、そのための必殺技が2校同時通学です。
30代前半は、1校だけなので時間に余裕もあり自分にも甘えが出ていたのかもしれません。2校に通うことで、自分への甘えが無くなり時間を上手に使えるようになりました。それに、答練を通常の2倍解くわけですから、実力が自分の知らない間についてきます。これだけ問題に触れているのだから、本番で自分がわからない問題が出たときは、他の受験生は解けないはずだ。という自信もありました。
税理士試験は上位約10%が合格しますので、全員が解けないものは解けなくても合否に関係ありません。
しかし、他の人が解ける問題が解けないと致命的です。その対策として2校に通い答練・模試・授業を受けることは最適だと思います。
結果的に、合格までの時間短縮と、費用の削減になったと思いますので、本気で合格を目指している方におすすめの勉強法です。
4. 最後の試験にすると決断したこと
私はもともと意思が強い方ではないため、すぐに楽な方に流されてしまう性格です。そんな自分を知っていたので、相続税法の勉強を始めるときに、「この試験を最後にする」と決めました。カレンダーやスケジュール帳、スマホの予定表に「最後の試験日」と記入し、視覚的に自分に教え込みました。これにより、怠け心が顔を出すことなく試験日まで走り抜くことができました。
相続税法の勉強方法
計算編
日々の授業やテストに全くついていけなかった私は、7月上旬まで合格圏内に入ったことがありませんでした。しかし、効率よく勉強するために、2校の模試・答練・直前答練・全国模試をそれぞれ満点になるまで解きました。たくさんの問題に触れることで、得意とする項目と苦手な項目がすぐに分かり、理解を深めることができました。何度解いても間違えてしまうものについては解説を読み、教科書に戻って理解を深めていきました。また、2校の問題の出し方や言い回しは微妙に違ったりもしますので、どんな問われ方をするかわからない本試験の予行練習には良かったのかもしれません。
理論編
7月上旬までに完璧に書ける基礎理論は5題もありませんでした。そこで、模試・答練に出題された理論を中心に勉強しました。1月で理論を丸暗記するのは難しいと思い、模試・答練に出てきたものだけまずは暗記する作戦でした。それでも2校分なので結果かなりのボリュームでしたが、重要な理論は何度も繰り返し出題されるので無理なく暗記できるようになりました。相続税法は、他の税法に比べ登場人物が人なので想像しやすく、理論も覚えやすいように思います。
最後に
税理士試験の最終科目として相続税法を選択したことは、結果的に私にとって正しい選択でした。困難な道のりではありましたが、諦めずに挑戦し続けたことが合格につながりました。この経験を糧に、今後は税理士として更なる研鑽を積み、社会に貢献していきたいと考えています。
私の場合、最後の1週間で合格圏内に滑り込んだのではないかと思っています。試験も同じで、最後の1秒までペンを止めなかった人が、12月に最高のご褒美を受け取ることができるのです。この4つの要素で、私は税理士試験に合格することができました。これから勉強を始める方や現在勉強中の方に、少しでも参考になれば幸いです。