「インボイスの2割特例が終わったら、消費税の納税額が一気に増えるって本当?」
「免税事業者からの仕入れは、2026年10月から控除が5割に減るって本当?」
インボイス制度が始まってから、免税事業者から課税事業者になった個人事業主の方を中心に、「2割特例のあとはどうなるのか」というご相談が増えています。仕入れ側の事業者からも、免税事業者との取引の扱いについてよく質問をいただきます。
結論からお伝えすると、2026年(令和8年)3月に成立した2026年度税制改正で、個人事業者は2割特例の後、令和9年・令和10年に「3割納税」(売上税額の3割を納める特例)が使えるようになります。また、免税事業者等からの仕入れの経過措置は、2026年10月から「7割控除」となり、段階的に縮小しながら延長されます。
この記事では、財務省の「令和8年度税制改正の大綱」などの一次資料をもとに、次のポイントを整理します。
この記事でわかること
- 2割特例の終了時期と、その後に新設される「3割納税」の中身
- 3割納税の対象者と計算例(売上税額100万円の場合)
- 一般課税・簡易課税・2割特例・3割納税の違い
- 免税事業者等からの仕入れの控除割合の推移(80%→70%→50%→30%→0%)
- 経過措置の年間上限が10億円から1億円に引き下げられる点
- 個人事業主・経営者がいま検討すべきこと
結論:2割特例の後は「3割納税」、仕入れの経過措置は70%に

今回の消費税・インボイス関係の改正は、「急な負担増を避けるための激変緩和」の色合いが強いものです。売り手(免税事業者から課税事業者になった方)と、買い手(免税事業者から仕入れる事業者)の両方に関係します。
- 2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までの措置
- その後、令和9年・令和10年に含まれる課税期間は「3割納税」が使える(新設)
- 納付税額=売上税額×30%
- 法人は3割納税の対象外
- 免税事業者等からの仕入れの控除割合は、2026年10月から70%
- 2028年10月から50%、2030年10月から30%と段階的に縮小
- 2031年10月以降は控除できない
- 年間上限は10億円→1億円に引下げ(令和8年10月1日以後開始課税期間)
- 3割納税は「個人事業者のみ」。法人は対象外
- 対象期間は令和9年(2027年)・令和10年(2028年)に含まれる課税期間
- 免税事業者等からの仕入れは、2026年10月から2028年9月まで70%控除
- 一の免税事業者等からの仕入れが年1億円を超える部分は経過措置の対象外に
2割特例のおさらいと「その後」

2割特例とは
2割特例とは、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった事業者などが、消費税の納付税額を「売上税額の2割」とすることができる特例です。売上税額とは、売上に含まれる消費税額のことです。仕入れや経費の消費税額を集計する必要がなく、事務負担も軽くできるのが特長です。
2割特例の終了時期
2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までの措置です。個人事業者の課税期間は原則として1月〜12月の暦年なので、多くの個人事業主の方にとっては、2026年分(令和8年分)が2割特例を使える最後の年となります。
2割特例は申告のときに選べるため、2026年分の消費税の確定申告(2027年3月が期限の目安)では、これまでどおり2割特例と一般課税・簡易課税を比べて選ぶことができます。2割特例を使えるのはこの申告が最後になる方が多いので、来年分以降の計算方法とあわせて考えておきましょう。
これまでのルールのままであれば、2割特例が終わった翌年からは、原則どおりの計算(一般課税)か、事前に届出をした場合の簡易課税のどちらかで納税額を計算することになり、納税額が大きく増える方も少なくないと見込まれていました。
「その後」をつなぐのが3割納税
そこで今回の改正で、2割特例の適用期間終了後の激変緩和として、個人事業者を対象とする「3割納税」が設けられました。個人事業主の方の流れを整理すると、次のようになります。
個人事業主(免税事業者から登録した方)の消費税計算の流れ
新設「3割納税」の対象と計算例

対象になる人・期間
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 個人事業者のみ(法人は対象外) |
| 主な要件 | 免税事業者からインボイス登録をしたこと等により課税事業者になった者 |
| 対象期間 | 令和9年(2027年)・令和10年(2028年)に含まれる課税期間 |
| 納付税額 | 売上税額×30% |
2割特例と同じく、仕入れや経費の消費税額を個別に集計しなくても納付税額が計算できる仕組みです。一方で、法人は対象外とされている点には注意が必要です。法人成りを検討している方は、3割納税が使えなくなることも判断材料のひとつになります。
選択の方法や申告書の書き方など、具体的な手続きについては、今後公表される政省令等で確認が必要です。
計算例:売上税額100万円の場合
売上税額(売上に含まれる消費税額)が100万円の個人事業主を例に計算してみます。
| 方式 | 計算 | 納付税額 |
|---|---|---|
| 2割特例(個人は通常2026年分まで) | 100万円×20% | 20万円 |
| 3割納税(令和9年・令和10年) | 100万円×30% | 30万円 |
このように、売上税額100万円なら、3割納税での納付税額は30万円です。2割特例のときの20万円と比べると10万円増えますが、特例がない場合と比べれば負担は抑えられます。

一般課税と比べるとどうなる?
一般課税(原則どおりの計算)では、売上税額からインボイスなどで裏付けられた仕入税額を差し引いて納付税額を計算します。仮の数字で比べてみましょう。
| ケース(売上税額100万円) | 一般課税の納付税額 | 3割納税の納付税額 |
|---|---|---|
| 仕入税額が40万円の場合(仮) | 100万円−40万円=60万円 | 30万円 |
| 仕入税額が80万円の場合(仮) | 100万円−80万円=20万円 | 30万円 |

3割納税は、「仕入税額を売上税額の7割とみなす」のと同じ計算です。そのため、経費や仕入れが少ないサービス業などでは3割納税が有利になりやすく、反対に仕入れの多い業種では一般課税のほうが納付税額が少なくなる場合もあります。自分の事業の実際の仕入税額を把握したうえで比較することが大切です。
- 実際の仕入税額が売上税額の7割より少ない → 3割納税が有利
- 実際の仕入税額が売上税額の7割より多い → 一般課税が有利
- 7割ちょうどなら同じ。迷ったら1年分の仕入税額を集計して比べる

一般課税・簡易課税・2割特例・3割納税の比較
| 方式 | 納付税額の計算 | 主な対象 | 適用期間 | 事前の届出 |
|---|---|---|---|---|
| 一般課税 | 売上税額−仕入税額(インボイス等の保存が必要) | すべての課税事業者 | 期限なし | 不要 |
| 簡易課税 | 売上税額−売上税額×みなし仕入率(業種ごとに定められた割合) | 基準期間の課税売上高が一定規模以下の事業者 | 期限なし | 必要(適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで) |
| 2割特例 | 売上税額×20% | 免税事業者からインボイス登録で課税事業者になった者等(法人も可) | 2026年9月30日を含む課税期間まで | 不要(申告時に選択) |
| 3割納税 | 売上税額×30% | 個人事業者のみ(免税事業者からインボイス登録したこと等で課税事業者になった者) | 令和9年・令和10年に含まれる課税期間 | 今後の政省令等で確認 |
消費税の納付税額の計算方法を、4つの方式で比べてみました。
簡易課税とは
簡易課税とは、実際の仕入税額を集計する代わりに、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を売上税額に掛けて仕入税額とみなす方法です。使うためには、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
簡易課税の納付税額は「売上税額×(1−みなし仕入率)」で計算されます。3割納税は仕入税額を売上税額の7割とみなす計算と同じなので、ご自身の業種のみなし仕入率が何%かによって、3割納税と簡易課税のどちらが有利かが変わります。業種区分の判定も含めて、事前に確認しておきましょう。
なお、簡易課税は一度選択すると一定期間は継続して適用する必要があるなど、いくつかの制約もあります。目先の1年だけでなく、数年単位で比較することが大切です。

免税事業者等からの仕入れの経過措置が延長

ここからは、仕入れ側(買い手)の話です。インボイス制度では、原則としてインボイス(適格請求書)がないと仕入税額控除ができません。ただし経過措置として、免税事業者など登録をしていない事業者からの仕入れでも、一定割合は控除できることになっています。
これまでの予定では、2026年10月から控除割合が5割に下がり、2029年9月末で経過措置が終了することになっていました。今回の改正で、この経過措置がより緩やかに縮小しながら延長されます。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 〜2026年(令和8年)9月30日 | 80% |
| 2026年(令和8年)10月1日〜2028年(令和10年)9月30日 | 70% |
| 2028年(令和10年)10月1日〜2030年(令和12年)9月30日 | 50% |
| 2030年(令和12年)10月1日〜2031年(令和13年)9月30日 | 30% |
| 2031年(令和13年)10月1日以降 | 0%(適用終了) |
控除できる額の目安
仮に、免税事業者からの仕入れについて、インボイスがあれば控除できたはずの消費税相当額が10万円だとすると、時期ごとの控除額は次のようになります。
- 2026年9月まで:10万円×80%=8万円
- 2026年10月〜2028年9月:10万円×70%=7万円
- 2028年10月〜2030年9月:10万円×50%=5万円
- 2030年10月〜2031年9月:10万円×30%=3万円
- 2031年10月以降:0円
2026年10月1日から、控除割合は80%から70%に下がりました。当初の予定(5割)よりは緩やかになったものの、免税事業者からの仕入れが多い事業者にとっては、少しずつ負担が増えていく点に変わりはありません。
- 控除割合は取引の時期で決まる。9月までの仕入れは80%、10月1日以後は70%
- 9月と10月をまたぐ月次の締めでは、税区分の混在に注意
- 次の切替えは2028年10月(50%)。取引条件の見直しは相手と十分に協議を
経過措置の年間上限が10億円→1億円に

もう一つの見直しが、経過措置の年間上限です。一の免税事業者等からの課税仕入れの合計が年1億円を超える場合、その超える部分には経過措置が適用できなくなります。現行の上限は10億円なので、10分の1に引き下げられることになります。
| 項目 | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 年間上限(一の免税事業者等からの課税仕入れの合計) | 10億円 | 1億円 |
| 適用時期 | ― | 令和8年10月1日以後に開始する課税期間から |
「一の免税事業者等からの」とあるとおり、取引先ごとに判定するイメージです。多くの中小企業や個人事業主にとって、1つの免税事業者から年1億円を超える仕入れをするケースは限られると思われますが、特定の外注先や仕入先との取引額が大きい場合は確認しておきましょう。
適用は「令和8年10月1日以後に開始する課税期間」からです。暦年が課税期間となる個人事業者なら2027年分から、3月決算の法人なら2027年4月1日に始まる課税期間からが目安です。
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個人事業主・経営者がいま検討しておくこと

免税事業者からインボイス登録した個人事業主
- 2割特例を使える最後の課税期間(2026年9月30日を含む課税期間)がいつかを確認する
- 令和9年・令和10年は3割納税が使えるかを確認し、納付税額を試算する(売上税額×30%)
- 一般課税(実際の仕入税額)・簡易課税(みなし仕入率)・3割納税の納付税額を並べて比較する
- 簡易課税を選ぶ場合は、届出期限「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」を意識してスケジュールを組む
- 3割納税の終了後(一般課税か簡易課税)を見据えて、帳簿やインボイスの保存体制を整えておく
- 法人成りを検討している場合は、法人は3割納税の対象外である点も踏まえて判断する
とくに簡易課税は、届出のタイミングを逃すと希望する年から使えないことがあります。個人事業主の課税期間は原則として暦年なので、「適用したい年が始まる前」に判断しておく必要があります。3割納税の手続きの詳細は今後の政省令等で示される予定のため、簡易課税との関係も含めて、公表を待って最終判断するのが安全です。
たとえば2027年分から簡易課税を使いたい場合、届出の期限は原則として2026年12月31日です。3割納税の手続きの詳細が示されるのを待ちつつも、年末が近づいたら一度、2027年分の計算方法の候補を税理士と整理しておくと安心です。
免税事業者から仕入れている事業者(買い手)
- 取引先ごとに、インボイス登録の有無を一覧で把握する
- 2026年10月以降の仕入れは70%控除になることを、会計ソフトの税区分設定に反映する
- 一の免税事業者からの年間仕入れが1億円を超えそうな取引先がないか確認する
- 控除割合が50%、30%と下がっていくスケジュールを踏まえ、取引条件の見直しは相手と十分に話し合って進める
取引条件の見直しは、一方的な値下げ要請などにならないよう、相手方と十分に協議することが大切です。
会計ソフトの設定もあわせて確認
経過措置の割合が変わるタイミングでは、会計ソフトの税区分を正しく使い分ける必要があります。freeeなどのクラウド会計ソフトは制度改正に合わせてアップデートされるのが一般的ですが、取引日付に応じた税区分が正しく選ばれているか、月次の段階でチェックしておくと、決算・申告時の修正を減らせます。

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よくある質問
Q. 法人でも3割納税は使えますか?
A. 使えません。3割納税は個人事業者のみが対象で、法人は対象外とされています。なお、2割特例は法人も対象でしたが、2026年9月30日を含む課税期間までの措置です。
Q. 3割納税を使うのに事前の届出は必要ですか?
A. 選択の方法や申告書の書き方など、具体的な手続きは今後公表される政省令等で確認が必要です。現時点では「届出がいらない」と決めつけず、公表を待って確認しましょう。簡易課税を選ぶ場合は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出が必要です。
Q. 免税事業者からの仕入れは、いまどの割合で控除しますか?
A. 2026年10月1日から2028年9月30日までの仕入れは70%です。2026年9月30日までの仕入れは80%なので、取引の日付で使い分けます。また、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の免税事業者等からの課税仕入れが年1億円を超える部分は経過措置の対象外になります。
まとめ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 2割特例 | 2026年9月30日を含む課税期間まで(個人は通常2026年分まで) |
| 3割納税(新設) | 個人事業者のみ。令和9年・令和10年に含まれる課税期間、売上税額×30% |
| 仕入れの経過措置 | 80%→70%(2026年10月〜)→50%→30%→0%(2031年10月〜) |
| 年間上限 | 一の免税事業者等ごとに10億円→1億円(令和8年10月1日以後開始課税期間) |
| 検討すること | 一般課税・簡易課税・3割納税を数年単位で比較、簡易課税の届出期限に注意 |
- 2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までの措置。個人事業者は通常2026年分まで
- 新設の3割納税は個人事業者のみ(法人は対象外)。令和9年・令和10年に含まれる課税期間で、納付税額は売上税額×30%
- 売上税額100万円なら、3割納税の納付税額は30万円(2割特例なら20万円)
- 免税事業者等からの仕入れの控除割合は、〜2026年9月80%→2028年9月まで70%→2030年9月まで50%→2031年9月まで30%→以降0%
- 一の免税事業者等からの課税仕入れの年間上限は10億円→1億円(令和8年10月1日以後開始課税期間から)
- 簡易課税の届出は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで。3割納税・一般課税と数年単位で比較を
インボイス関係の経過措置は、段階的に割合が変わるため、「いつの取引に、どの割合を使うか」を正しく管理することが欠かせません。どの計算方法が有利かは、業種や仕入れの状況によって大きく変わりますので、個別の判断は税理士などの専門家にご相談ください。
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「自分の場合、3割納税と簡易課税のどちらがいい?」「免税事業者との取引をどう整理すればいい?」といったご相談も、無料相談でお気軽にお問い合わせください。
参考資料
・財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/index.html
・財務省「令和8年度税制改正の大綱」(消費課税)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_04.htm
・財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.pdf
・財務省「令和8年度 税制改正の解説」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/explanation/index.html
・財務省パンフレット「令和8年度税制改正」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei26.html
※本記事は2026年9月23日時点の公表資料をもとに作成し、2026年10月に更新しました。具体的な適用にあたっては、今後公表される政省令・通達等をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

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野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界23年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。
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