
還付金の勘定科目はどれ?所得税や法人税など還付金が発生するケースや仕訳例について解説

「還付金を受け取ったけど、どの勘定科目で処理すればいいの?」
「所得税や法人税の還付があった場合、仕訳はどうなるの?」
「還付金を経理処理する際の注意点を知りたい」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
還付金とは納めすぎた税金や手数料などが返金されるものを指します。所得税や法人税の還付が発生した際、適切な勘定科目で処理しないと、帳簿や決算に影響を及ぼす可能性があります。
また、還付金の種類や発生理由によって仕訳方法や注意点も異なります。
この記事では、還付金を受け取った際の適切な勘定科目の選び方や具体的な仕訳例を詳しく解説します。
さらに、経理処理を行う上での注意点についても触れていますので、正確な会計処理を行いたい方はぜひ最後までご覧ください。
目次
還付金とは?納めすぎて返還される税金
還付金とは、税金や社会保険料などを納めすぎた場合に、納めすぎた金額が納税者に戻ってくるお金のことです。
本来納めるべき金額よりも多く支払ってしまった場合、その差額が返金される仕組みとなっており、所得税や法人税、消費税など、さまざまな税金で発生する可能性があります。
たとえば、所得税の場合、年末調整や確定申告によって年間の所得と所得控除が確定した後、源泉徴収された税金が過払いだった場合に還付金が発生します。
還付金は納税者にとって予期せぬ収入となることがありますが、会計処理上は収入として適切に処理する必要があるため、勘定科目や仕訳方法を正しく理解し、適切な会計処理を行うことが大切です。
還付金が発生する主なケース
還付金が発生する主なケースとしては、以下のものが挙げられます。
【所得税の還付】
- 給与所得者の年末調整:
生命保険料控除や住宅ローン控除などを年末調整で申告し、源泉徴収された超過分の所得税が還付された - 個人事業主などの確定申告:
医療費控除や雑損控除などを受けて確定申告したら、所得税が還付された
【法人税の還付】
- 中間納付額が確定申告による年間の納税額を上回った
- 税務署の更正処分によって納税額が減額され、払い過ぎた税金が還付された
【消費税の還付】
- 輸出事業者の輸出免税制度:
輸出事業者が輸出売上にかかる消費税が免除され、仕入の消費税額が売上の消費税額を上回った - 課税事業者が簡易課税から本則課税に変更した:
簡易課税制度を選択していた事業者が、本則課税に変更し、仕入の消費税額が売上の消費税額を上回った
このほか、税法の改正や税務署の判断によって還付金が発生することがあります。
還付金の受け取り方
還付金の受け取り方は税金の種類や還付の理由によって異なりますが、一般的には以下のいずれかの方法で受け取ることができます。
- 預貯金口座への振込
- ゆうちょ銀行での受け取り
- 税務署での受け取り
還付金の受け取り方法について、税務署から送付される還付通知書に詳しく記載されているので必ず確認するようにしましょう。
また、還付金詐欺などの犯罪も発生しているので、税務署を名乗る不審な電話やメールには注意し、安易に個人情報を教えないよう注意が必要です。
還付金の勘定科目と仕訳例
事業主借|個人事業主が事業用口座に入金された場合
個人事業主の人が、所得税の還付金が事業用口座に入金された場合、事業主借の勘定科目を利用するのが一般的です。
事業主借とは、個人事業主の事業とは別の財布からお金を借りたという考え方をする勘定科目です。還付金は事業主個人の所得税が還付されたものなので、事業主から事業への貸付として貸方に計上します。
例えば、所得税の還付金が50,000円だった場合の仕訳例は次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 50,000円 | 事業主借 | 50,000円 |
なお、個人事業主が事業用口座ではなく、個人用の銀行口座に還付金が振り込まれた場合は会計処理する必要がありません。
未収入金(未収還付法人税等、未収還付消費税等)|法人税や消費税の還付金を仕訳する場合
法人税の還付金が発生した場合、一般的に未収入金の勘定科目を使用します。
未収入金とは、本業の事業活動以外で回収すべき債権があるときに使用する勘定科目で、具体的には「未収還付法人税等」や「未収還付消費税等」といった勘定科目を設定するとわかりやすいでしょう。
例えば、中間納付で400,000円納付していたが、確定した法人税額が300,000円だった場合の仕訳例は次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
法人税等 | 300,000円 | 仮払法人税等 | 400,000円 |
未収還付法人税等 | 100,000円 |
雑収入|入金額に還付加算金が含まれている場合
還付金には、利息に相当する「還付加算金」が含まれている場合があります。還付加算金は、税金を納めすぎた期間に応じて国から支払われる利息のようなものです。
(法人の場合)受け取った入金額の中に、還付金に加えて還付加算金も含まれている場合は、雑収入として仕訳するのが一般的です。
例えば、還付金100,000円のうち還付加算金が1,000円だった場合の仕訳例は次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 101,000円 | 未収還付法人税等 | 100,000円 |
雑収入 | 1,000円 |
(個人の場合)還付加算金は所得税法上、雑所得として課税対象となるため忘れずに申告しましょう。
還付金を会計処理するときの注意点
事例に応じて適切な勘定科目を決定する
還付金の会計処理において、事例に応じて適切な勘定科目を決定することが重要です。税金の種別、還付理由、事業形態によって使用すべき勘定科目が異なります。
例えば、個人事業主が事業所得税の還付を受けた場合、事業主個人のお金が一時的に事業に使われたと解釈するため「事業主借」を使用します。
一方、法人が法人税や消費税の還付を受けた場合は、「未収還付法人税等」や「未収還付消費税等」といった勘定科目を使用しましょう。
還付金の勘定科目が不明な場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
益金算入の取り扱いを適切に行う
原則、税金の還付金は益金不算入です。しかし、入金額に還付加算金や損金算入される税金が還付された場合は益金算入する必要があります。
益金とは、法人の所得を計算する上で収入金額に加えるべき金額のことで、税務上の利益と考えると分かりやすいでしょう。
益金算入の取り扱いを誤ると、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが発生する可能性があるため注意が必要です。
還付金の会計処理を簡略化!会計ソフトの利用がおすすめ
還付金の会計処理は、税金の種類や還付理由によって仕訳方法が異なり、複雑に感じる方もいるかもしれません。
また、会計処理を誤ると税務調査で指摘を受ける可能性もあります。
そのため、還付金の会計処理を簡略化するために会計ソフトの利用をおすすめします。
会計ソフトにはさまざまな税金や取引に対応した仕訳テンプレートが用意されており、還付金の仕訳も簡単に行うことが可能です。さらに、自動で仕訳帳や総勘定元帳を作成してくれるため、会計処理の効率化にもつながります。
そのほか、税務申告に必要な書類も作成できるため、確定申告の準備もスムーズに進めることが可能です。
まとめ
還付金は納めすぎた税金が返還される金額を指し、所得税や法人税、消費税などが対象となります。
還付金が発生するケースとしては、中間納付や予定納税額が確定納付額を上回った場合や、消費税の仕入控除額が納付額を超えた場合などがあります。
ただし、還付金の会計処理では、税金の種類や状況に応じた適切な勘定科目を選択することが重要です。
誤った科目で処理すると財務諸表の正確性を損なう恐れがあるため、還付加算金の益金算入などにも注意する必要があります。
還付金の処理に不安がある場合は、具体的な仕訳例を参考にしながら正しい勘定科目を選択し、正確な会計処理を行いましょう。
執筆者

野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界20年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。