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経費で落とすとどれくらい得?経費のシミュレーションと経費にするメリット・デメリットを解説

経費で落とすとどれくらい得?経費のシミュレーションと経費にするメリット・デメリットを解説

「経費で落とすと、実際どれくらい得になるの?」「経費を増やせば税金が安くなるって本当?」「どこまでが経費として認められるのか分からない…」

そんな疑問を感じている個人事業主やフリーランスの方も多いのではないでしょうか。経費として計上できる支出を正しく管理すれば、所得税や住民税、個人事業税の負担を減らせます。しかし、経費の範囲を誤解していたり、私的な支出を含めてしまったりすると、税務調査で指摘されるリスクもあります。

結論からお伝えすると、経費で減る税金は「経費の額×税率」の分だけで、所得税・住民税などを合わせても経費の2〜5割程度です。売上500万円の個人事業主の例では、経費を100万円増やすと税金は約25万円減りますが、手元に残るお金は約75万円減ります。節税額ではなく「手元にいくら残るか」で判断することが大切です。

この記事では、2026年分(令和8年分)の基礎控除の改正を反映して、所得税の速算表・住民税10%・個人事業税5%で「経費で落とすとどれくらい得なのか」を計算過程つきでシミュレーションし、経費にするメリット・デメリットまで福岡の税理士がわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 経費で落とすと税金が減る仕組みと、税率ごとの節税額の目安
  • 売上500万円・経費0円/100万円/200万円の税額シミュレーション(計算過程つき)
  • 2026年分の基礎控除の改正(最高104万円)でどれくらい税金が変わるか
  • 経費にできるもの・できないもの、書類の保存ルール
  • 経費で落とすメリット・デメリットと注意点

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目次

経費で落とすとはどういうこと?

経費が増えると、税金のもとになる課税所得が減る

STEP 01
売上
1年間の収入の合計
STEP 02
- 経費
事業のために使った費用
STEP 03
= 所得
いわゆる「もうけ」
STEP 04
- 所得控除
基礎控除・青色申告特別控除など
STEP 05
= 課税所得
これに税率をかける

「経費で落とす」とは、事業活動で発生した費用を必要経費として帳簿に計上し、確定申告で売上から差し引くことを指します。税金は売上そのものではなく、売上から経費を差し引いた所得をもとに計算されるため、所得が低くなれば、納める所得税や住民税、個人事業税も少なくなります。

つまり、事業に関連する支出を漏れなく経費として計上することは、正当な節税の基本です。ただし、どのような支出でも経費にできるわけではありません。売上を上げるために直接的または間接的に必要だった費用であることが大前提です。

あわせて読みたい
「経費で落とす」とはどういう意味?経費の種類や経費計上の条件について解説 「経費で落とす」とは、事業のための支出を必要経費にして所得を減らし、税金を抑えることです。税金が減る仕組みや経費の種類、経費にできる条件、家事按分、減価償却と少額の特例、注意点まで税理士が解説します。

経費の定義は「事業に必要な支出かどうか」

所得税法では、事業所得の計算上、必要経費に算入する金額を「総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額」と「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」と定めています(所得税法第37条)。

簡単にいえば、仕入代金や事務所の家賃、従業員への給与、文房具代など、事業を運営して収益を上げるために必要な支払いが該当します。一方で、個人的な食事代や趣味の物品購入費などは、事業との関連性がないため経費になりません。重要なのは、客観的に見て事業のための支出だと説明できることです。

個人事業主と法人で経費の考え方は違う?

事業に関連する支出が経費になるという点は、個人事業主と法人で共通しています。ただし、経費として認められる範囲にはいくつかの違いがあります。

項目個人事業主法人
経営者自身への給与経費にならない(利益がそのまま事業主の所得)定期同額給与など要件を満たす役員報酬は損金になる
経営者自身の生命保険料経費にならない(生命保険料控除の対象)契約内容によって一定額を損金にできる
経営者の国民健康保険・国民年金経費にならない(社会保険料控除の対象)社会保険料の会社負担分は損金になる
税率所得税5〜45%の累進税率+住民税10%法人税は中小法人の年800万円以下の部分が15%など

事業形態によって経費のルールが異なる点を理解しておくことが大切です。個人事業主の節税全体については、次の記事で詳しく解説しています。

あわせて読みたい
個人事業主ができる節税対策!経費・控除の仕組みや税金を抑える工夫を解説 個人事業主の節税の基本は、経費と所得控除を漏れなく使い、青色申告を選ぶことです。小規模企業共済・iDeCo・経営セーフティ共済などの使い方や、2026年の改正(基礎控除、少額減価償却資産40万円未満)も税理士が解説します。

経費は使ったほうが得って本当?経費の仕組みを整理

10万円の経費で減る税金を所得税の税率ごとに示した横棒グラフ

「経費は使ったほうが得」という言葉をよく聞きますが、意味を正しく理解しておく必要があります。ポイントは次の3つです。

  • 課税所得が下がるから税額が減る
  • お金が戻るわけではない(節税と還付の違い)
  • 税率が高いほど効果が大きい

ポイント①課税所得が下がるから税額が減る

経費を計上すると節税になる基本的な仕組みは、課税所得が減ることです。所得税や住民税は、売上そのものではなく課税所得にかかります。課税所得は「売上-必要経費-所得控除」で計算されるため、必要経費が大きくなるほど課税所得は小さくなり、納める税金も減ります。

たとえば、課税所得が300万円(所得税の税率10%)の人が10万円の経費を追加で計上すると、所得税は1万円、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が210円、住民税(所得割10%)が1万円減り、合計で約2万円の節税になります。

ポイント②お金が戻るわけではない(節税と還付の違い)

経費を使うと節税になると聞いて、「使ったお金が全額戻ってくる」と誤解されることがありますが、それは正しくありません。10万円の経費を使うと、手元から10万円がなくなり、その代わりに税金の支払いが2〜5万円ほど減るというのが経費の効果です。

一方、「還付」とは、源泉徴収や予定納税などで先に納めすぎた税金が、確定申告で戻ってくることを指します。報酬から源泉徴収されているフリーランスが、経費を計上した結果として税金が戻ってくることはありますが、これも納めすぎていた税金が精算されただけです。事業に関係のない物品を無理に買って経費にしても、支出額のほうが節税額より大きいため、手元の資金は減ってしまいます。

ポイント③税率が高いほど効果が大きい

所得税は、課税所得が多いほど税率が高くなる累進課税で、税率は5%から45%までの7段階です(国税庁 タックスアンサーNo.2260)。上のグラフのとおり、同じ10万円の経費でも、税率5%の人は約1.5万円、税率33%の人は約4.4万円、税率45%の人は約5.6万円税金が減ります。個人事業税の対象で所得が290万円を超えている人は、さらに5,000円(税率5%の場合)減ります。

所得が高く、高い税率が適用されている人ほど経費の節税効果は大きくなります。自分の課税所得がどの区分にあるかを知っておくことは、節税を考えるうえでの出発点です。

2026年分は「合計所得489万円」の前後で効果が大きく変わる

令和8年度税制改正により、2026年分(令和8年分)と2027年分の所得税の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円、655万円超2,350万円以下なら62万円になりました(財務省「令和8年度税制改正の大綱」)。

このため、合計所得金額が489万円を少し超えている人は、経費が増えて489万円以下になると、基礎控除が67万円から104万円へと37万円増えます。たとえば合計所得金額が495万円の人が6万円の経費を追加すると、所得は489万円になり、所得税の課税所得は「6万円+37万円=43万円」減る計算です。ただし、経費は本当に必要なものに限るのが大前提で、住民税の基礎控除(43万円)はこの改正の対象ではない点にも注意しましょう。

▶ あわせて読みたい:【2026年度税制改正】基礎控除・給与所得控除の引上げと「178万円」を解説

経費で落とすとどれくらい得?シミュレーションで解説

前提条件内容
対象の年分2026年分(令和8年分)の所得税、2027年度の住民税
事業個人事業主(青色申告、他の所得なし)。売上500万円
経費0円/100万円/200万円の3パターン
青色申告特別控除65万円(e-Taxで申告するなどの要件を満たす場合)
所得税国税庁の速算表で計算し、復興特別所得税2.1%を加算。基礎控除は2026年分の額
住民税所得割10%(基礎控除43万円)。均等割(標準5,000円)と調整控除は含めない
個人事業税税率5%の業種。(青色申告特別控除前の所得-事業主控除290万円)×5%
その他社会保険料控除などほかの所得控除は考慮しない(実際は国民年金・国民健康保険料の分だけ税金はさらに少なくなる)

経費を計上すると具体的にどれくらい税金が安くなるのか、シミュレーションで確認してみましょう。ここでは、売上が500万円の個人事業主を例に、経費が0円・100万円・200万円の場合で、所得税・住民税・個人事業税の負担額と、手元に残るお金がどう変わるかを比較します。前提は上の表のとおりです。

所得税の速算表の見方と注意点

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

出典:国税庁 タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」(2026年分も同じ税率です)

所得税は、課税所得を上の速算表にあてはめ、「課税所得×税率-控除額」で計算します。たとえば課税所得が300万円なら「195万円超330万円以下」の区分なので、300万円×10%-97,500円=202,500円です。これに復興特別所得税(所得税額×2.1%)を加えた額を納めます。

住民税(所得割)は、所得税とは別に、住民税の基礎控除(43万円)などを差し引いた課税所得に原則10%をかけて計算します。所得税の基礎控除とは金額が違うため、所得税の課税所得に10%をかけると住民税を少なく見積もってしまう点に注意しましょう。個人事業税は、法定業種に当てはまる場合に、青色申告特別控除を引く前の所得から事業主控除290万円を差し引いた額に、業種ごとの税率(3〜5%)をかけて計算します。

経費が0円のケース

まずは、経費がまったくかからなかった極端なケースです。

項目計算金額
① 売上5,000,000円
② 経費0円
③ 青色申告特別控除前の所得①-②5,000,000円
④ 青色申告特別控除e-Tax等の要件を満たす場合650,000円
⑤ 事業所得(合計所得金額)③-④4,350,000円
⑥ 基礎控除(所得税)合計所得489万円以下は104万円1,040,000円
⑦ 課税所得(所得税)⑤-⑥(千円未満切捨て)3,310,000円
⑧ 所得税⑦×20%-427,500円(速算表)234,500円
⑨ 復興特別所得税⑧×2.1%4,924円
⑩ 所得税等の合計⑧+⑨(百円未満切捨て)239,400円
⑪ 住民税の課税所得⑤-基礎控除43万円3,920,000円
⑫ 住民税(所得割)⑪×10%392,000円
⑬ 個人事業税(③-290万円)×5%105,000円
⑭ 税金の合計⑩+⑫+⑬736,400円
⑮ 手元に残るお金①-②-⑭4,263,600円

事業所得は435万円で、合計所得金額が489万円以下のため、所得税の基礎控除は104万円です。課税所得331万円は速算表の「330万円超695万円以下」の区分に当たり、所得税は234,500円、復興特別所得税を含めて239,400円です。住民税は392,000円、個人事業税は(500万円-290万円)×5%=105,000円で、税金の合計は736,400円、手元に残るお金は4,263,600円になります。

経費が100万円のケース

次に、事業のために100万円の経費を使ったケースです。

項目計算金額
① 売上5,000,000円
② 経費1,000,000円
③ 青色申告特別控除前の所得①-②4,000,000円
④ 青色申告特別控除e-Tax等の要件を満たす場合650,000円
⑤ 事業所得(合計所得金額)③-④3,350,000円
⑥ 基礎控除(所得税)合計所得489万円以下は104万円1,040,000円
⑦ 課税所得(所得税)⑤-⑥(千円未満切捨て)2,310,000円
⑧ 所得税⑦×10%-97,500円(速算表)133,500円
⑨ 復興特別所得税⑧×2.1%2,803円
⑩ 所得税等の合計⑧+⑨(百円未満切捨て)136,300円
⑪ 住民税の課税所得⑤-基礎控除43万円2,920,000円
⑫ 住民税(所得割)⑪×10%292,000円
⑬ 個人事業税(③-290万円)×5%55,000円
⑭ 税金の合計⑩+⑫+⑬483,300円
⑮ 手元に残るお金①-②-⑭3,516,700円

課税所得は231万円となり、所得税の税率は10%の区分に下がります。税金の合計は483,300円で、経費0円のケースより253,100円減りました。一方で、手元に残るお金は3,516,700円と、経費0円のケースより746,900円少なくなっています。

税理士のひとこと:100万円の経費で減る税金はこの例で約25万円。残りの75万円は出ていったままです

経費が200万円のケース

さらに経費が増えて、200万円になったケースです。

項目計算金額
① 売上5,000,000円
② 経費2,000,000円
③ 青色申告特別控除前の所得①-②3,000,000円
④ 青色申告特別控除e-Tax等の要件を満たす場合650,000円
⑤ 事業所得(合計所得金額)③-④2,350,000円
⑥ 基礎控除(所得税)合計所得489万円以下は104万円1,040,000円
⑦ 課税所得(所得税)⑤-⑥(千円未満切捨て)1,310,000円
⑧ 所得税⑦×5%-0円(速算表)65,500円
⑨ 復興特別所得税⑧×2.1%1,375円
⑩ 所得税等の合計⑧+⑨(百円未満切捨て)66,800円
⑪ 住民税の課税所得⑤-基礎控除43万円1,920,000円
⑫ 住民税(所得割)⑪×10%192,000円
⑬ 個人事業税(③-290万円)×5%5,000円
⑭ 税金の合計⑩+⑫+⑬263,800円
⑮ 手元に残るお金①-②-⑭2,736,200円

課税所得は131万円で、所得税の税率は5%の区分です。個人事業税は、青色申告特別控除前の所得が300万円で事業主控除290万円をわずかに超えるため、(300万円-290万円)×5%=5,000円かかります(個人事業税の計算では青色申告特別控除を差し引かない点に注意)。税金の合計は263,800円で、経費100万円のケースより219,500円減りましたが、手元に残るお金は2,736,200円です。

3つのケースを比べると

売上500万円の個人事業主の経費別の税金の合計と手元に残るお金の棒グラフ
項目経費0円経費100万円経費200万円
課税所得(所得税)3,310,000円2,310,000円1,310,000円
所得税の税率20%10%5%
所得税等(復興税込み)239,400円136,300円66,800円
住民税(所得割)392,000円292,000円192,000円
個人事業税105,000円55,000円5,000円
税金の合計736,400円483,300円263,800円
手元に残るお金4,263,600円3,516,700円2,736,200円
経費100万円あたりの節税額-253,100円219,500円

経費を100万円増やすごとに、税金は約25万円、約22万円と減っていきます。最初の100万円のほうが節税額が大きいのは、所得税の税率が20%から10%の区分に下がり、個人事業税も大きく減るためです。所得が少なくなるほど税率が下がるので、同じ100万円でも節税額は小さくなっていきます。

2025年分の基礎控除で計算した場合との比較

2025年分と2026年分の基礎控除で計算した所得税等の比較グラフ

同じ売上・経費でも、2026年分は基礎控除の引上げで所得税が少なくなります。2025年分の基礎控除(合計所得336万円超489万円以下は68万円、132万円超336万円以下は88万円)で計算すると、経費0円のケースの所得税等は312,900円ですが、2026年分は239,400円で、73,500円少なくなります。

基礎控除が大きくなると課税所得が下がり、適用される税率の区分が下がることもあります。そのぶん、経費1万円あたりの所得税の節税効果は小さくなる場合がある点も覚えておきましょう。なお、住民税の基礎控除は43万円のままなので、住民税の計算は変わりません。

シミュレーションの要点は?利益減と節税効果のバランスが重要

シミュレーションの結果からわかるように、経費を計上すると課税所得が減少し、納税額は大きく下がります。経費0円のケースでは税金が約74万円だったのに対し、経費200万円のケースでは約26万円まで減りました。

しかし、注意すべきは手元に残るお金です。経費0円では約426万円だった手残りが、経費200万円では約274万円に減っています。節税額以上に支出が増えているためです。事業の成長に必要な投資や、業務の効率化につながる支出は積極的に経費にすべきですが、節税だけを目的に不要なものを買うのは逆効果です。

なお、実際には国民年金保険料(2026年度は月17,920円)や国民健康保険料が社会保険料控除として差し引かれるため、税金はシミュレーションより少なくなります。また、経費が増えて所得が下がると、所得をもとに計算される国民健康保険料も下がります。

経費で落とせるもの・落とせないものとは?

勘定科目概要
給料賃金・法定福利費従業員の給与や賞与、社会保険料の事業主負担分など
旅費交通費打ち合わせや出張で利用した電車代、タクシー代、宿泊費など
地代家賃事務所や店舗の家賃(自宅兼事務所は按分)
水道光熱費水道・電気・ガス(自宅兼事務所は按分)
通信費インターネット回線や電話の利用料
消耗品費文房具やコピー用紙、10万円未満の備品など
会議費取引先との打ち合わせでの飲食代
接待交際費取引先を接待するための費用、贈答品
広告宣伝費事業内容を宣伝するための費用
減価償却費パソコンや車など高額な資産を耐用年数に分けて計上する費用

事業を運営するうえで発生する費用のうち、何が経費として認められ、何が認められないのかを正しく理解することは、適切な税務処理の基本です。上の表は、個人事業主がよく使う代表的な経費の勘定科目です。これらの費用を漏れなく計上することが、正しい節税につながります。

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手土産の勘定科目はどれ?経費として認められないケースは?仕訳例や経費計上時の注意点を解説 取引先への手土産は金額にかかわらず原則「交際費」です。会議費・広告宣伝費・福利厚生費との使い分けと仕訳例、法人の交際費の損金算入ルール、個人事業主の注意点、消費税とインボイスまで税理士が解説します。

高額なものは減価償却で数年に分けて経費にする

10万円以上のパソコンや車などは、原則として耐用年数に分けて少しずつ経費にします。ただし、青色申告をしている中小事業者は「少額減価償却資産の特例」を使えば、取得価額40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満)のものを、年間合計300万円まで買った年に全額経費にできます(国税庁 タックスアンサーNo.2100)。

経費にできない費用|私的費用・所得税や住民税・過度な接待など

事業に関連する支出が経費になる一方で、経費として認められない費用もあります。最も基本的なものは、事業主やその家族の個人的な生活費です。食費や衣料品費、趣味のための支出など、事業と直接関連がないプライベートな費用は経費にできません。

また、所得税や住民税はもうけに対して個人にかかる税金なので経費になりません。延滞税や加算税、罰金・科料、交通違反の反則金も経費にできません。一方で、個人事業税や事業用の固定資産税・自動車税、印紙税などは「租税公課」として経費になります。

さらに、接待交際費のように経費になる費用でも、事業規模に見合わない過度な接待や、業務と関係のない相手との飲食費は、税務調査で否認される可能性があります。事業との関連性を客観的に説明できない支出は経費にできないと覚えておきましょう。

▶ あわせて読みたい:個人事業主の交際費の使いすぎはいくら?上限はある?使いすぎた場合のリスクを解説

経費で落とすための条件と保存ルール

経費で落とすための条件と保存ルール:事業との関係を説明できる、領収書・帳簿は原則7年保存、兼用の費用は家事按分

経費で落とすための条件と保存ルールとして、次の3つが挙げられます。

  • 事業との関連性(目的・必要性)を示せるか
  • 領収書・レシートの保存期間と保存方法を守る
  • 家事按分できる費用(自宅・車の共用)

①事業関連性としての目的・必要性を示せるか

支出を経費として計上するための大前提は、その支出に事業との関連性があることです。事業の売上を上げるため、または事業を維持・拡大するために必要だったことを、客観的に説明できなければなりません。

たとえば、取引先との会食であれば、商談や情報交換といった事業目的があったことを示す必要があります。領収書の裏や会計ソフトのメモ欄に、参加者名や会食の目的を書いておくと、後から見返したときや税務調査の際に説明しやすくなります。書籍を購入した場合も、業務上の知識習得や情報収集が目的であることを説明できるようにしておきましょう。

②領収書・レシートの保存期間と保存方法を守る

区分保存するもの保存期間
青色申告帳簿、決算関係書類7年
青色申告領収書・請求書など現金預金取引等関係書類7年(前々年分の所得300万円以下なら5年)
青色申告その他の書類5年
白色申告収入金額や必要経費を記載した帳簿7年
白色申告上記以外の帳簿、領収書などの書類5年

出典:国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」(保存期間は確定申告期限の翌日から数えます)

経費を計上したら、その支払いを証明する領収書やレシートなどの書類を保存します。税務調査が入った際に、経費の正当性を証明する重要な証拠になるからです。個人事業主の保存期間は上の表のとおりで、書類の種類によって5年のものと7年のものがありますが、迷ったらまとめて7年保存しておくのが確実です。

保存方法は、紙のままファイリングする方法のほか、電子帳簿保存法の要件を満たせば、スキャナやスマートフォンで読み取った電子データで保存することもできます。電子データで保存する場合は、読み取りの解像度や、タイムスタンプの付与または訂正・削除の履歴が残るシステムの利用など、一定の要件があります。また、メールやネットで受け取った請求書・領収書などの電子取引データは、原則として電子データのまま保存する必要があります。

③家事按分できる費用(自宅・車の共用)

自宅を事務所として使っている場合や、自家用車を営業にも使っている場合は、関連する費用の一部を経費にできます。私的な利用と事業での利用が混在している費用を、事業で使った割合に応じて分ける処理を「家事按分(かじあんぶん)」といいます。

家賃なら事業で使っている部屋の面積の割合、車の費用なら走行距離のうち事業で使った距離の割合で按分するのが一般的です。たとえば家賃12万円の自宅のうち25%を仕事場として使っているなら、月3万円(年36万円)が経費になります。感覚的な割合ではなく、面積・時間・距離など説明できる基準で計算し、計算の根拠を残しておきましょう。

▶ あわせて読みたい:【税理士が解説】個人事業主が車購入で節税するコツ!中古車のメリットや家事按分の設定方法も解説

経費で落とすメリット・デメリット

経費で落とすメリット(税金と国保が減る、納税額の波をならせる、設備投資を早く回収)とデメリット(融資への影響、書類管理の手間、否認のリスク)

メリット①税負担の軽減と課税所得の圧縮

経費を計上する最大のメリットは、税負担を直接減らせることです。シミュレーションのとおり、事業に関連する支出を漏れなく経費にすれば、所得税・住民税・個人事業税が少なくなります。さらに、個人事業主の国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されるため、保険料の負担も下がります。

節税によって手元に残った資金は、新たな設備投資や人材採用、事業拡大のための運転資金として使えます。必要な支出を正しく経費にすることは、事業の成長サイクルを回すための土台です。

メリット②納税額の波をならせる

事業の利益は年によって変動することが多く、利益が大きく出た年は、翌年に支払う税金や国民健康保険料も大きくなります。予想以上の納税額が発生すると、手元の現金が急に減り、資金繰りが苦しくなることもあります。

そこで、利益が大きく出そうな年は、翌年以降に予定していた必要な設備投資や広告宣伝、修繕などを前倒しで行い、その年の経費にする方法が考えられます。ただし、支出を前倒ししても使ったお金は戻らないので、「どうせ必要になる支出か」を基準に判断しましょう。

税理士のひとこと:利益が大きく出そうな年は、12月になる前に一度税額の見込みを出しておきましょう

メリット③設備投資の回収を早められる

パソコンや機械設備、車両などの高額な資産は、耐用年数に分けて減価償却費として経費にします。青色申告の中小事業者なら、少額減価償却資産の特例を使って40万円未満のものを買った年に全額経費にでき、設備投資の費用を早く回収できます。ただし、先に経費にした分だけ翌年以後の減価償却費は減るので、長い目で見ると「税金の支払いを先に延ばす」効果に近い点は理解しておきましょう。

デメリット①利益が薄くなり融資評価に影響する恐れ

経費を多く計上すれば節税になりますが、そのぶん決算書上の利益は減ります。金融機関が融資の審査をする際は、確定申告書や決算書の利益を重視します。節税を意識しすぎて利益を小さく見せていると、返済能力に不安があると評価され、希望する金額の融資が受けられないことも考えられます。設備投資などで借入れを予定している時期は、目先の節税よりも、しっかりとした利益を確保することを優先したほうがよい場合もあります。

デメリット②証憑管理や運用の手間が増える

経費を正しく計上するには、領収書やレシート、請求書を整理して保存し、会計ソフトに入力する作業が必要です。家事按分のように、プライベートと事業用を区別して計算する作業はさらに手間がかかります。銀行口座やクレジットカードの明細を会計ソフトに連携させると、入力の手間を大きく減らせます。

デメリット③過度な計上は税務調査で否認されるリスクがある

事業との関連性が低い支出まで経費にしたり、根拠のない高額な経費を計上したりすると、税務調査で否認されるリスクが高まります。否認されると、本来納めるべきだった税金に加え、延滞税や過少申告加算税(原則10%、一定額を超える部分は15%)がかかります。意図的な不正と判断されれば、さらに重い重加算税が課されます。

経費計上の不正・誤解を避けるための注意点

経費計上の不正・誤解を避けるための注意点:架空経費・水増しは重加算税、なんでも経費は誤解、迷ったら相談

注意点①架空経費や水増しで不正計上をしない

経費計上で最も厳しく禁じられているのが、意図的な不正行為です。実際には取引がないのに領収書を偽造して経費を計上する「架空経費」や、取引先に頼んで実際より高い金額の請求書を出してもらう「水増し」、個人的な飲食代を接待に見せかけて経費にする行為などが該当します。

これらは単なる申告ミスではなく、仮装・隠ぺいによる不正と判断されます。税務調査で発覚した場合、追加の税金に加えて、過少申告加算税に代えて35%(無申告の場合は40%)の重加算税が課される可能性が高くなります(過少申告加算税については国税庁 タックスアンサーNo.2026)。悪質なケースでは刑事罰の対象になることもあります。

注意点②「なんでも経費」は誤解!線引きの基本を整理する

「なんでも経費で落とせる」という言葉は、大きな誤解を招く危険な考え方です。経費の大原則は、あくまで「事業に関連し、売上を上げるために必要な支出であること」です。

たとえば、友人との食事は経費になりませんが、取引先との商談を兼ねた食事であれば、会議費や接待交際費として計上できます。また、仕事で着るスーツはプライベートでも着られるため原則として経費にしにくい一方、撮影用の衣装や制服のように業務でしか使わないことが明らかなものは経費にできる余地があります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談するか、無理に経費にしない慎重な姿勢が大切です。

注意点③経費を増やしても手元のお金は増えない

シミュレーションで見たとおり、経費を増やして税金が減っても、手元に残るお金はそれ以上に減ります。「税金を払うくらいなら使ったほうが得」という考え方で不要な支出を増やすと、資金繰りが苦しくなります。経費は「必要なものを漏れなく」計上し、残ったお金を事業の成長に回すのが理想です。

経費で落とすときのよくある質問

経費で落とすときのよくある質問

個人事業主でも経費で落とせますか?

落とせます

個人事業主も、事業で得た売上から必要経費を差し引いて所得を計算し、その所得をもとに所得税などを納めます。仕入代金、事務所の家賃、水道光熱費、通信費、広告宣伝費、交通費など、事業のために支払った費用は必要経費になります。

経費で落とせば全額お金が返ってくるのですか?

返ってきません

経費計上の効果は、支払う税金が少なくなることです。減る税金は「経費×税率」の分だけで、所得税・住民税・個人事業税を合わせても経費の2〜5割程度です。源泉徴収された税金が確定申告で戻ることはありますが、これは納めすぎた税金の精算です。

経費で落とせるのは売上の何割までですか?

法律上の上限はありません

「売上の○%までしか経費にできない」という一律のルールはありません。大切なのは、金額や割合ではなく、事業に本当に必要な支出だったかどうかです。大きな広告や設備投資をした年は経費率が高くなることもあり、必要性を説明できれば問題ありません。ただし、同業者と比べて経費率が極端に高いと、内容を確認されやすくなります。

2026年の基礎控除の改正で、経費の効果は変わりますか?

所得税は、所得の水準によって変わることがあります

2026年分の所得税の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下なら104万円に引き上げられました。課税所得が下がって税率の区分が下がると、経費1万円あたりの所得税の節税額は小さくなる場合があります。一方、合計所得が489万円を少し超える人は、経費で489万円以下になると基礎控除が37万円増えるため、効果が大きくなります。住民税の基礎控除(43万円)は変わりません。

赤字になるほど経費を使っても大丈夫ですか?

必要な支出であれば問題ありませんが、慎重に判断しましょう

青色申告なら、赤字(純損失)を翌年以後3年間繰り越して、黒字の年の所得から差し引けます。ただし、赤字が続くと融資の審査で不利になるほか、節税のための支出はお金が出ていくだけです。赤字の年は所得税がかからないため、それ以上経費を増やしても所得税は減りません。

まとめ

まとめ:節税額より手残りで考える。減る税金は経費×税率分

「経費で落とす」とは、事業に関連する支出を必要経費として計上し、課税所得を減らすことです。減る税金は「経費×税率」の分だけで、支出したお金が戻ってくるわけではありません。売上500万円の例では、経費を100万円増やすと税金は約25万円減りますが、手元に残るお金は約75万円減りました。

2026年分は所得税の基礎控除が引き上げられ(合計所得489万円以下は104万円)、同じ売上・経費でも所得税が少なくなります。自分の課税所得がどの税率の区分にあるかを把握し、節税効果と手元のお金のバランスを見ながら、事業に必要な支出を漏れなく計上しましょう。

「なんでも経費」という誤解を捨て、事業との関連性を説明できる支出を、証拠書類とあわせて正しく記録することが、健全な経営と適切な節税の両立につながります。

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参考資料:国税庁 タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」/国税庁 タックスアンサーNo.1199「基礎控除」/財務省「令和8年度税制改正の大綱(個人所得課税)」/e-Gov法令検索「所得税法」/国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」/国税庁 タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」/国税庁 タックスアンサーNo.2026「確定申告を間違えたとき」/日本年金機構「国民年金保険料」/東京都主税局「個人事業税」(計算方法は各都道府県共通)

※本記事は2026年9月時点の法令・公表情報をもとに作成しています。シミュレーションは一定の前提をおいた概算で、住民税の均等割・調整控除、社会保険料控除などは考慮していません。個別の状況によって結果は異なりますので、具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。

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執筆者
野村税理士事務所 代表 野村真一
野村 真一

野村税理士事務所代表 野村真一

税理士業界23年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。

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