「帳簿って手書きでもいいの?」「会計ソフトを使わずに、ノートに記録しても問題ない?」「手書きで帳簿をつけるときの書き方を知りたい」
そんな疑問を持っている個人事業主の方は少なくありません。帳簿付けは確定申告に欠かせない作業ですが、会計ソフトを使わなければならないという決まりはありません。一方で、手書きには記入ミスや集計の手間といったデメリットもあり、青色申告の控除額にも影響する場面があります。
結論からお伝えすると、帳簿は手書きでも法律上まったく問題ありません。青色申告の65万円控除も、手書きの帳簿で複式簿記の要件を満たし、申告書をe-Taxで提出すれば受けられます。ただし、2027年分から始まる最大75万円の控除は、帳簿を電子で保存することが条件のため、手書きでは受けられません。
この記事では、個人事業主の記帳義務と保存期間、単式簿記と複式簿記の違い、手書き帳簿の具体的な書き方、メリット・デメリット、インボイス制度や電子帳簿保存法との関係まで、福岡の税理士がわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 個人事業主の記帳義務と、帳簿・書類の保存期間(青色・白色)
- 白色申告と青色申告それぞれの手書き帳簿の書き方と記入例
- 手書きのメリット・デメリットと、青色申告特別控除(65万円・75万円)への影響
- インボイス制度・電子帳簿保存法で手書き帳簿に求められること
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個人事業主には帳簿をつける義務がある|手書きでもOK
| 区分 | 記帳の方法 | 帳簿の保存期間 | 書類の保存期間 |
|---|---|---|---|
| 白色申告 | 簡易な記帳でよい(日々の合計をまとめて書くことも可) | 法定帳簿7年/任意帳簿5年 | 領収書・請求書など5年 |
| 青色申告(55万・65万円控除) | 複式簿記(正規の簿記の原則) | 7年 | 7年(前々年の所得300万円以下なら現金預金取引等関係書類は5年)、その他の書類5年 |
| 青色申告(10万円控除) | 簡易簿記でよい | 7年 | 同上 |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.2080、No.2070
事業所得・不動産所得・山林所得がある人は、青色申告か白色申告かにかかわらず、帳簿をつけて保存する義務があります。ただし、帳簿の形式について「パソコンで作らなければならない」という決まりはなく、ノートや市販の帳簿に手書きで記録しても問題ありません。大切なのは、所得を正しく計算できるように、整然とはっきり記録することです。
そもそも帳簿とは?主要簿と補助簿
帳簿とは、売上や仕入れ、経費の支払いなど、事業のお金の出入りを日付順に記録したものです。すべての取引を記録する「主要簿」と、特定の取引を詳しく記録する「補助簿」に分かれます。主要簿は、複式簿記で使う「仕訳帳」と「総勘定元帳」です。補助簿には「現金出納帳」「預金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」などがあり、必要に応じて作ります。
帳簿の第一の目的は、正しい所得金額を計算して確定申告書を作ることです。あわせて、お金の流れを見える化し、資金繰りや経営判断の材料にする役割もあります。
白色申告でも記帳と保存は必要
以前は白色申告の記帳義務が一部の人に限られていた時期もありましたが、現在は白色申告の人も全員、帳簿をつけて保存する必要があります。白色申告の記帳は、取引の年月日、相手先、金額、日々の売上・仕入れ・経費の金額などを記録すればよく、日々の合計金額だけをまとめて書くといった簡易な方法も認められています(国税庁 タックスアンサーNo.2080)。
帳簿をつけなかった場合のペナルティ
帳簿の備え付けや保存が不十分だと、青色申告の承認が取り消されることがあります。取り消されると、青色申告特別控除や赤字の繰越しなどの特典が使えなくなります。税務調査で申告漏れが見つかった場合は、本来の税金に加えて過少申告加算税(申告しなかった場合は無申告加算税)や延滞税がかかり、所得を意図的に隠していたと判断されると重加算税の対象になります。
さらに、2024年1月1日以後に申告期限が来る分からは、税務調査で帳簿の提示を求められても出さなかった場合や、帳簿に書かれた売上が本来の金額の2分の1未満だった場合は、加算税が10%上乗せされます(3分の2未満なら5%上乗せ)(国税庁 タックスアンサーNo.2024)。帳簿がないことそのものが、税金の負担を重くする仕組みになっています。
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帳簿の付け方は「単式簿記」と「複式簿記」の2種類
- お小遣い帳のようにお金の増減を記録
- 簿記の知識がなくても始めやすい
- 白色申告・青色10万円控除で使える
- 財産の状態まではわからない
- 1つの取引を借方・貸方の2面で記録
- 仕訳帳と総勘定元帳を作る
- 青色申告の55万・65万円控除に必要
- 損益計算書と貸借対照表を作れる
個人事業主が使う帳簿の付け方には、「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。どちらを使うかは、白色申告か青色申告か、青色申告でどの控除を受けたいかで決まります。
単式簿記(簡易簿記)の特徴
単式簿記は、家計簿やお小遣い帳のように、いつ・何に・いくら使ったか、いくら入ってきたかを一行ずつ記録していく方法です。「4月10日 文房具 1,000円」のように、取引の内容と金額を書くだけなので、簿記の知識がなくてもすぐに始められます。
白色申告や、青色申告の10万円控除を受ける場合は、この方法で記帳できます。ただし、預金や売掛金、借入金など財産や負債の動きは記録しないため、事業全体の財産の状態までは把握できません。
複式簿記の特徴
複式簿記は、一つの取引を「原因」と「結果」の2つの面からとらえ、左側の「借方(かりかた)」と右側の「貸方(かしかた)」に分けて記録する方法です。たとえば、現金で1万円の備品を買ったら、「消耗品費(費用)が1万円増えた」と「現金(資産)が1万円減った」を同時に記録します。
お金の出入りだけでなく、財産がどう変わったかまで追えるため、最後に損益計算書と貸借対照表を作れます。青色申告で55万円または65万円の特別控除を受けるには、この複式簿記で記帳することが要件です(国税庁 タックスアンサーNo.2072)。
帳簿を手書きで作成する方法|準備と書き方の例

手書きで帳簿を始めるには、まず道具をそろえ、記帳のルールを決めます。そのうえで、白色申告なら単式簿記、青色申告の55万・65万円控除なら複式簿記で記帳していきます。
手書きで帳簿を作るための準備
- 帳簿用のノート(市販の「現金出納帳」「仕訳帳」「総勘定元帳」、または大学ノート)
- 筆記用具(清書用のボールペン。下書きは鉛筆でも可)
- 電卓、定規
- 領収書・請求書を月別に保管するファイルや封筒
次に、記帳のルールを決めます。よく使う勘定科目(売上、仕入、消耗品費、通信費、旅費交通費など)をあらかじめ一覧にしておくと、毎回迷わずに済みます。「レシートを受け取ったらその日のうちに書く」「毎月末に残高を確認する」といったタイミングも決めておきましょう。領収書や請求書は日付順にファイルし、帳簿と照らし合わせられるようにしておきます。
白色申告の場合の書き方(記入例)
白色申告では、収支内訳書を作るための帳簿を単式簿記でつけます。家計簿のように、日付・勘定科目・摘要(取引の内容)・収入金額・支出金額・残高の欄を作り、お金が動くたびに一行ずつ記入します。現金と預金は分けて記録すると、残高の確認がしやすくなります。
| 日付 | 勘定科目 | 摘要 | 収入 | 支出 | 残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4/1 | 前月繰越 | 50,000円 | |||
| 4/3 | 売上 | A商店 商品代金(現金) | 33,000円 | 83,000円 | |
| 4/10 | 消耗品費 | 〇〇文具 ボールペン・ノート | 1,100円 | 81,900円 | |
| 4/15 | 旅費交通費 | B社訪問 電車代 | 640円 | 81,260円 | |
| 4/25 | 通信費 | 切手代 | 840円 | 80,420円 |
摘要欄には、取引相手や内容を具体的に書いておくと、後から見返したときにすぐわかります。月末や年末に勘定科目ごとの合計を出し、収支内訳書の該当する欄に書き写せば、申告の準備ができます。
青色申告(複式簿記)の場合の書き方(記入例)
青色申告で55万円または65万円の控除を受けるには、複式簿記で「仕訳帳」と「総勘定元帳」を作ります。まず、すべての取引を発生した順に仕訳帳へ記入します。取引を借方と貸方に分け、勘定科目と金額を書く作業です。
| 借方 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 現金 | 100,000円 | 4/1 現金を事業用口座に預け入れ |
| 売掛金 | 売上 | 220,000円 | 4/5 C社 4月分業務委託料(請求書発行) |
| 消耗品費 | 現金 | 1,100円 | 4/10 〇〇文具 ボールペン・ノート |
| 通信費 | 事業主借 | 8,800円 | 4/20 携帯電話料金 事業用分(個人口座から) |
| 普通預金 | 売掛金 | 220,000円 | 4/30 C社 業務委託料 入金 |
次に、仕訳帳の内容を勘定科目ごとのページに分かれた総勘定元帳へ書き写します(転記)。たとえば1行目の仕訳は、「普通預金」のページの借方に100,000円、「現金」のページの貸方に100,000円と記入します。すべての取引を転記したら、年末に勘定科目ごとの残高を集計した「試算表」を作り、借方と貸方の合計が一致することを確かめてから、損益計算書と貸借対照表を作ります。
個人事業主の場合、事業用のお金を生活費に使ったときは「事業主貸」、個人のお金で事業の経費を払ったときは「事業主借」を使います。この2つは、個人事業主の帳簿に特有の科目です。
月末・年末の集計と残高チェックのしかた
手書きの帳簿は、月末の集計で間違いに気づけるかどうかが正確さを左右します。毎月末に、現金出納帳の残高と手元の現金、預金出納帳の残高と通帳の残高が一致しているかを確認しましょう。一致しないときは、その月の記帳漏れや書き間違いを探します。1か月分なら原因を見つけやすく、1年分をまとめて探すよりずっと楽です。年末には、12か月分の科目ごとの合計を集計表にまとめ、収支内訳書や決算書に書き写します。

帳簿を手書きで付けるメリット

会計ソフトが一般的になったいまでも、手書きの帳簿には次のようなメリットがあります。
メリット①簿記の仕組みが自然と身につく
会計ソフトは入力すれば自動で処理してくれますが、仕訳や転記の流れが見えにくい面があります。手書きなら、取引のたびに「どの勘定科目か」「借方と貸方のどちらか」を自分で考え、仕訳帳から総勘定元帳へ書き写すことで、科目どうしのつながりやお金の流れを体で覚えられます。簿記の基礎を身につけたい開業したての方には、よい練習になります。
メリット②数字の変化に気づきやすい
毎日自分の手で売上や経費を書き込むと、数字への意識が高まります。「今月は広告宣伝費が増えている」「この仕入先のコストが高い」といった気づきが生まれやすく、無駄な経費の見直しや、利益の出る仕事への集中につながることもあります。
メリット③パソコンが苦手でも、すぐに始められる
会計ソフトは、ソフト選びや口座連携などの初期設定、操作方法を覚える時間が必要です。手書きなら、ノートとペン、電卓があれば今日からでも始められ、費用もほとんどかかりません。ソフトの更新やパソコンのトラブルに悩まされる心配もありません。開業したばかりで取引が月に10件程度といった段階なら、手書きでも負担は大きくありません。まずは手書きで記帳の習慣をつけ、取引が増えてきた段階で会計ソフトに移るという進め方も現実的です。

帳簿を手書きで付けるデメリット|青色申告の控除への影響も

手書きの帳簿には、時間や手間の面でのデメリットに加えて、2027年分から青色申告特別控除の上限を受けられないという新しいデメリットが生まれます。
デメリット①記入や計算に時間がかかる
取引を一つひとつ書き写し、電卓で科目ごとに集計する作業は、地道で時間がかかります。複式簿記では仕訳帳から総勘定元帳への転記もあるため、同じ取引を2回書くことになります。確定申告の時期には1年分の集計と決算書の作成が必要になり、本業に使える時間が圧迫されるおそれがあります。
デメリット②書き間違いや転記ミスが起こりやすい
数字の書き間違い、桁の誤り、科目の選び間違い、転記漏れなど、手書きではミスが起こる場面がたくさんあります。複式簿記で借方と貸方の合計が合わなくなると、原因を探すためにすべての記録を見直すことになり、大きな手間になります。会計ソフトなら計算や転記は自動で、入力ミスのチェック機能もあります。
デメリット③保管スペースが必要になる
帳簿は7年、領収書などの書類も5年から7年の保存が必要です。手書きの帳簿と紙の書類は年々増えていき、保管場所が必要になります。湿気やカビ、火災や水害による紛失のリスクにも備えなければなりません。
デメリット④2027年分からの75万円控除は受けられない
いまの制度では、複式簿記で帳簿をつけ、確定申告書と決算書をe-Taxで提出すれば、帳簿が手書きでも65万円控除を受けられます(国税庁 タックスアンサーNo.2072)。令和8年度税制改正により、2027年分(令和9年分)以後は、65万円控除の要件を満たしたうえで、仕訳帳と総勘定元帳を一定の要件を満たす電子データで保存すると、控除額が75万円に引き上げられます(財務省「令和8年度税制改正の大綱」)。手書きの帳簿ではこの要件を満たせないため、控除額は65万円までです。
また、2027年分以後は、いまの55万円控除(紙で提出する場合)の要件にe-Taxでの提出が加わり、控除額が65万円になります。大綱の内容からは、帳簿が手書きでも複式簿記でつけてe-Taxで提出すれば65万円、紙で提出すると55万円・65万円の控除の要件を満たさなくなると読めます。手書きの帳簿を続ける人も、申告書の提出はe-Taxに切り替えておくのが安心です。
▶ あわせて読みたい:【2026年度税制改正】暗号資産20%・青色申告75万円ほか その他の改正
手書きで帳簿を付けるときの4つの注意点

手書きで帳簿をつけると決めたら、正確さと続けやすさのために、次の4つの点を押さえておきましょう。
注意点①清書は消せないペンで、訂正は二重線で
下書きや計算メモは鉛筆でもかまいませんが、帳簿の清書は消せないボールペンで書きましょう。こすると消えるペンは、熱で文字が消えるおそれがあり、書き換えを疑われる原因にもなります。書き間違えたときは、修正液を使わずに二重線で消し、正しい数字をその上や横に書きます。数字は桁をそろえて丁寧に書き、取引のあった日のうちに記帳する習慣をつけましょう。
注意点②市販の帳簿や見本を参考にする
初めて帳簿をつけるときは、市販の会計帳簿を使うのがおすすめです。必要な項目があらかじめ印刷されていて、勘定科目の一覧や記入例がついているものもあります。自己流の形式で始めて、あとから必要な項目が抜けていたと気づく失敗を防げます。国税庁が公表している記帳の手引きなども参考になります。
注意点③青色申告の要件を満たす形式にする
青色申告で55万・65万円の控除を受けるには、複式簿記ですべての取引を記録した仕訳帳と総勘定元帳を作り、必要に応じて現金出納帳・預金出納帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳などの補助簿も備えます。期末には帳簿から損益計算書と貸借対照表を作り、確定申告書に添付します。形式が不十分だと控除が受けられなくなるため、不安があれば一度税理士に帳簿を見てもらうと安心です。
注意点④メールやネットで受け取った領収書はデータで保存する
帳簿を手書きでつけていても、電子帳簿保存法の「電子取引」のルールは適用されます。ネットショップの領収書、メールで届いた請求書のPDFなど、データで受け取った書類は、紙に印刷して保存するのではなく、データのまま保存する必要があります(国税庁「電子帳簿保存法関係」)。日付・金額・取引先で探せるように、「20260410_〇〇文具_1100.pdf」のようにファイル名をそろえてフォルダに保存しておくと安心です。
インボイス制度と手書き帳簿|帳簿に書くべきこと
| 帳簿の記載事項(仕入れ側) | 記入例 |
|---|---|
| 課税仕入れの相手方の氏名または名称 | 〇〇文具店 |
| 取引の年月日 | 2026年4月10日 |
| 取引の内容(軽減税率の対象ならその旨) | ボールペン・ノート/「お茶(軽減)」など |
| 税率ごとの支払対価の額 | 1,100円(10%対象) |
消費税法第30条第8項にもとづく記載事項(e-Gov法令検索「消費税法」)。取引先の登録番号は帳簿の記載事項ではなく、受け取ったインボイスに書かれていることを確認します。
2023年10月に始まったインボイス制度は、消費税の課税事業者として仕入税額控除を受ける人の帳簿と書類の保存に関係します。免税事業者で消費税の申告をしない人は、仕入税額控除のための帳簿の要件を気にする必要はありません。
帳簿には登録番号を書く必要はない
仕入税額控除を受けるには、上の表の事項を書いた帳簿と、取引先から受け取ったインボイス(適格請求書)の両方を保存します。取引先の登録番号は、インボイスに書かれている必要がありますが、帳簿そのものに書き写す必要はありません。手書きの帳簿でも、これまでどおり相手先・日付・内容・金額をきちんと書き、税率ごとに金額を分けておけば対応できます。
ただし、公共交通機関の運賃(3万円未満)など、インボイスがなくても帳簿の保存だけで控除できる特例を使う場合は、帳簿に「特例の対象であること」などを書き足す必要があります。基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者などは、2029年9月30日までは税込1万円未満の仕入れについてインボイスがなくても帳簿の記載だけで控除できる「少額特例」も使えます(国税庁 タックスアンサーNo.6498)。
売上は税率ごとに分けて記録する
課税事業者は、売上も税率ごとに分けて記録します。飲食料品など軽減税率(8%)の商品と、標準税率(10%)の商品の両方を扱っている場合は、帳簿の列を分けるなどして、それぞれの合計を出せるようにしておきましょう。インボイス登録をきっかけに課税事業者になり、2割特例(個人は2026年分まで)や、2027年・2028年の「3割納税」の特例を使う人も、売上の税額から納める税額を計算するため、税率ごとの売上の集計は欠かせません。
▶ あわせて読みたい:【2026年度税制改正】インボイス2割特例後の「3割納税」と経過措置延長
帳簿作成を効率化したいときの選択肢
| 方法 | 費用 | 手間・ミス | 青色申告の控除(2027年分以後) |
|---|---|---|---|
| 手書き | ほぼ0円 | 集計・転記が手作業でミスが起こりやすい | e-Tax提出で最大65万円 |
| エクセル | ソフトがあれば0円 | 計算は自動、転記や仕訳は自分で | e-Tax提出で65万円(75万円は要件を満たす保存が必要) |
| 会計ソフト | 無料〜年数万円 | 自動仕訳・自動集計でミスが少ない | 要件を満たすソフトなら最大75万円を狙える |
事業が成長して取引が増えてくると、手書きの帳簿では限界を感じる人が多くなります。記帳の負担を減らして本業に集中したいときは、次の方法を検討しましょう。
エクセルで帳簿をつける
手書きからの次の一歩として手軽なのが、エクセルなどの表計算ソフトです。SUM関数で合計を自動計算できるため、集計の手間と計算ミスが大きく減ります。インターネット上には帳簿のテンプレートも多くあります。ただし、仕訳の考え方や勘定科目の知識は必要で、複式簿記では仕訳帳から総勘定元帳への集計の仕組みを自分で作らなければなりません。法改正があったときは、自分でテンプレートを直す必要もあります。
会計ソフトを使う
記帳の効率を最大限に上げたいなら、会計ソフトがもっともおすすめです。日付や金額を入力するだけで複式簿記の帳簿が自動で作られ、銀行口座やクレジットカードと連携すれば、明細を自動で取り込んで仕訳の候補を出してくれます。決算書も自動で作られ、そのままe-Taxで申告できるソフトも多くあります。
2027年分からの75万円控除を受けるには、仕訳帳と総勘定元帳を一定の要件を満たす電子データで保存する必要があります。この要件に対応した会計ソフトを使えば、手書きでは届かない控除も視野に入ります。無料で使えるソフトもあるので、まずは試してみるとよいでしょう。
手書きから会計ソフトに切り替えるタイミングと手順
切り替えの目安は、取引が月に数十件を超えたとき、青色申告の65万円・75万円控除を目指すとき、消費税の課税事業者になったときです。切り替えるなら、年の途中より1月1日から始めるのがおすすめです。前年12月31日時点の現金・預金・売掛金などの残高を「開始残高」として入力すれば、そこから新しいソフトで記帳を続けられます。年の途中で切り替える場合は、それまでの取引を月ごとの合計でまとめて入力する方法もあります。手書きで身につけた仕訳の知識は、会計ソフトの自動仕訳が正しいかを確かめるときにも役立ちます。
▶ あわせて読みたい:【税理士解説】個人事業主の会計ソフトおすすめ11選!料金やサービス、無料ソフトを徹底比較

まとめ

個人事業主にとって帳簿付けは法律上の義務ですが、帳簿は手書きでもまったく問題ありません。白色申告なら単式簿記で、青色申告の55万・65万円控除なら複式簿記で仕訳帳と総勘定元帳をつけます。帳簿は7年、領収書などの書類も5年から7年の保存が必要です。
手書きの帳簿は、簿記の仕組みが身につき、費用もかからないのが魅力です。一方で、時間とミスのリスクが大きく、2027年分から始まる最大75万円の青色申告特別控除は受けられません。手書きを続ける場合も、申告書はe-Taxで提出し、データで受け取った領収書はデータのまま保存しましょう。
取引が増えてきたら、エクセルや会計ソフトへの切り替えを検討してください。自分の事業の規模とスキルに合った方法で、正確な記帳を続けることがいちばん大切です。
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参考資料:国税庁 タックスアンサーNo.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」/国税庁 タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」/国税庁 タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」/国税庁 タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」/国税庁「電子帳簿保存法関係」/e-Gov法令検索「消費税法」/国税庁 タックスアンサーNo.6498「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」/財務省「令和8年度税制改正の大綱(個人所得課税)」
※本記事は2026年9月時点の法令等をもとに作成しています。2027年分以後の青色申告特別控除は税制改正大綱の内容にもとづいており、細かな要件は今後の国税庁の案内で確認してください。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。

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野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界23年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。
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