社労士(社会保険労務士)の仕事内容とは?将来性や平均年収も解説

社労士(社会保険労務士)の仕事内容とは?将来性や平均年収も解説

「社労士ってどんな仕事?」
「社労士の仕事がAIに取って替わる可能性はある?」

このように、社労士の仕事内容や将来性について気になっていませんか?

社労士の仕事は大きく3種類があり、そのうち2種類は社労士しか行えない独占業務です。また、社労士の仕事の一部は人と人との関わりが必要なため、将来的にAIに代替される可能性は低いと考えられます。

こちらの記事では、社労士の仕事内容や仕事先、試験の難易度、平均年収まで詳しく解説します。

目次

社労士(社会保険労務士)の仕事内容は?わかりやすく解説

社労士(社会保険労務士)の仕事は、大きく次の3種類に分けられます。

  • 1号業務
  • 2号業務
  • 3号業務

なかでも、1号業務・2号業務は独占業務となっており、社労士のみしか行えない特別な仕事です。ここからは、それぞれの業務内容について詳しく解説します。

1号業務|申請書類の作成・手続代行業務(独占業務)

1号業務とは、申請書類の作成や手続き代行の業務を指します。具体的な仕事内容には以下があります。

  • (労働社会保険諸法令に基づく)申請書等の作成
  • (労働社会保険諸法令に基づく)申請・届出・報告・審査請求の代理
  • 申請書等に関する手続代行
  • 事務代理
  • 紛争解決手続代理業務
    など

このように、1号業務は労働や社会保険に関する法令に基づいて書類作成などを行うもので、社労士以外は業務を行えない「独占業務」にあたります。

2号業務|帳簿書類等の作成業務(独占業務)

2号業務とは、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類などを作成する業務です。具体的には、以下のような書類が該当します。

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 就業規則の書類
    など

これらの書類は全て労働基準法で定められており、社労士以外が扱うことは認められていません(独占業務)。

3号業務|コンサルティング業務

3号業務とは、事業における労務管理や労働に関わる事項、および社会保険に関する事項について指導したり相談に応じたりする業務です。言わば社労士による「コンサルティング業務」のことです。

たとえば、経済不況が続くと、人件費を抑えるために非正規雇用(派遣社員やアルバイトなど)に関する労働問題および賃金について相談件数が増えると言われています。

近年は人事・労務に関わる法律の専門家として、社労士によるさまざまなコンサルティング業務が重要性を増しています。そのため、企業それぞれのニーズに合うアドバイスを行える社労士は強く求められています。

社労士の仕事先は大きく3つ

社労士の資格の取得・登録した後の働き方には、さまざまな道があります。社労士の仕事先・働き方は大きく次の3パターンです。

  • 企業内社労士
  • 社労士事務所
  • 独立開業

それぞれの詳細について解説します。

企業内社労士

企業内社労士とは、企業内において人事・労務・社会保険に関して指導や相談に応じる社労士のことです。勤務社労士とも呼ばれます。

企業の総務や人事部門で働く人にとって、企業内社労士の知識は必要不可欠です。そのため、社労士の資格を持っている人材は、社内でも確かなポジションで働くことができます。

一般企業以外にも銀行などで年金相談窓口の担当者として勤めたり、社内の労務管理責任者に就いたり、多方面で活躍することが可能です。

企業内社労士は、就職して社労士として活躍したいという方に向いている働き方です。

社労士事務所

社労士事務所に就職して働くという道もあります。

社労士事務所は、企業に対して労務に関する相談のほか、年金や社会保険に関する手続き代行業務を行う事務所です。

ひとつの企業に対してのみ社労士業務を行う「企業内社労士」とは違って、さまざまな企業の年金・社会保険問題に携われるため、社労士の仕事のノウハウを身につけつつ働けます。

独立開業を目指していて、経験やスキルを積むために社労士事務所で働くケースは少なくありません。

また、社労士事務所のアシスタント業務は無資格でも行えるため、社労士資格試験の勉強をしながら社労士事務所に勤めるという人もいます。

独立開業

独立開業して社労士の個人事務所を構えるのも選択肢のひとつです。

社労士は2年以上の実務経験を積み、所属する都道府県の「社労士会」に登録すれば個人事務所を開業することが可能です。

独立開業すれば、「労務管理アドバイザー」「年金コンサルタント」といった労働・社会保険に関するスペシャリストとして働くことができます。

社労士はどんな仕事?企業や労働者の相談相手になれる

ここまで、社労士の具体的な仕事内容や仕事先について紹介してきました。社労士とはどのような存在なのか、社会的にどのような役割があるのか曖昧な方もいるかと思います。

社労士には主に以下のような役割があります。

  • 顧客(経営者など)の相談相手
  • 労働問題に悩む労働者をサポート
  • 専門性が高く企業には欠かせない存在

社労士は企業の経営者をはじめとする顧客の相談相手です。企業の雇用問題に対してアドバイスできる立場であり、労働相談やコンサルティングなどの業務を通し、誰もが働きやすい環境づくりを行うのが社労士の役割です。

さらに、労働問題に悩む労働者を助ける存在でもあります。社会保険や年金制度についてよくわからずに加入している人に対して、業務中の怪我の補償や失業保険に関する相談を受けるのも社労士の仕事のひとつです。

また、社労士は国家資格であり専門性の高い職業なので、企業には欠かすことのできない仕事です。

社労士の仕事はなくなる?AIに代替されにくく将来性が高い

「今から社労士の資格を取っても意味あるの?」「社労士の仕事に将来性はある?」と気になっている方は多いかと思います。

結論から言えば、社労士の仕事がなくなる可能性は低いです。

近年、IT技術の成長により業務効率化が進んでおり、AIによって社労士の仕事は代替されるのではないかと懸念されています。なかでも1号業務・2号業務は管理ソフトへ移行するケースも増えてきており、ヒューマンエラーも防げるので今後AIに代替される可能性はあるでしょう。

しかし、3号業務のコンサルティング業務は、人と人とのコミュニケーションが必要な業務です。対話を通して企業の問題を見つけ、一緒に対策を考えて提案する必要があるため、AIに代替されにくいです。

専門性が高く、さらに3号業務に強みを持っている人材であれば、社労士としての仕事がなくなることはなく、むしろ将来性が高いと考えられます。

社労士は悲惨?仕事がないって本当?

インターネット上では、「社労士は悲惨」「仕事がない」などという検索結果を目にすることがあります。このように噂される理由には、以下が考えられます。

  • 社労士は仕事がない
  • 就職は社労士の資格よりも実務が重視されやすい
  • 社労士事務所の求人数は少ない
  • 社会保険労務士試験の難易度が高い
  • 開業してもすぐに失敗する
    など

しかし、実務が優先されやすく求人数が少ない、開業しても失敗しやすいというのは社労士に限った話ではありません。資格取得後もしっかりと専門性を高めて経験・スキルを身につければ、就職先は十分見つかりますし、開業後もうまくいくケースは十分あります。

「社労士は悲惨・役に立たない」などという噂の根拠は、社労士の実態とは関係ないものばかりです。

社労士は今後なくなるとは考えにくく、将来性が高い資格なので、これから資格取得の勉強をはじめても決して遅くありません。

社労士の平均年収は?男性が約514万円、女性が約434万円

厚生労働省が行った調査「賃金構造基本統計調査」によれば、社労士(社会保険労務士)の給与等は次の結果となっています。

性別現金給与額(千円)年間貸与(千円)年齢
男性361.8805.943.8歳
女性286.2905.946.3歳

参照:2019年 賃金構造基本統計調査|厚生労働省 e-Start

上記の結果から算出すると、男性は約514万円、女性は約434万円が社労士の平均年収となります。

ただし、あくまでも平均的な年収です。独立開業した社労士や勤務社労士のなかには年収1,000万円近く稼いでいる人も存在します。

特に、会社勤務している社労士は昇給・ボーナス・役職などによって、個人の年収が大きく異なります。そのため、頑張り次第で高収入が期待できるのも社労士の特徴です。

社労士の資格が人気な理由

社労士の資格試験は、毎年約4万人もの人が受けている人気の資格です。社労士の資格が人気な理由は、次の3つが考えられます。

  • 短期間でも合格できる可能性がある
  • 専門性が高くて長く働ける
  • 就職や転職で有利になる

それぞれの理由について詳しく解説します。

短期間でも合格できる可能性がある

社労士の資格は、働きながらでも短期間(約半年〜2年)の勉強で合格できる可能性があります。

社労士の資格試験は、公認会計士や税理士ほど難易度は高くなく合格までにかかる期間も短いです。

たとえば、税理士なら試験に完全合格するには何年かけて受験し、合計5科目に合格するという流れが一般的です。一方、社労士試験は試験を一度受けて合格すれば、資格取得できます。

また、学習内容が実生活で役立つものが多いです。怪我・病気の保険に関する法律をはじめ、職場や暮らしに関わるものが多いので、興味を持って勉強に取り組みやすいです。

専門性が高くて長く働ける

社労士の資格は専門性が高く、長く働き続けやすいというのも人気の理由です。

一般企業において、社会保険や労務といった必ず必要な問題解決につながる存在のため、企業内では重宝され安定的に働くことができます。

独立開業した場合でも、複数の企業と顧問契約を結ぶことで、顧問料として安定した収入を得ることが可能です。

このように、不況にも負けない高い専門性が人気を集めています。

就職や転職で有利になる

就職や転職で有利になるというのも、社労士の資格が人気な理由のひとつです。

近年の雇用形態の多様化に伴い、一般企業において人事のスペシャリストとなる人材を確保する傾向があります。

資格手当を支給する企業も多く、社労士は就職・転職で役立つ資格です。

社労士の登録までの流れ

社労士の資格取得から登録までの流れは次の通りです。

  1. 資格試験を受験
  2. 社会保険労務士の試験合格
  3. 登録条件を満たす
  4. 登録・入会
  5. 社会保険労務士として働く

社労士は、試験に合格して資格取得したらすぐに社労士として働けるわけではありません。試験に合格後は、全国社会保険労務士会連合会が備える「社会保険労務士名簿」に登録する必要があります。

さらに、連合会に登録するためには、試験に合格していると同時に2年以上の労働社会保険諸法令に関する実務経験があること、または連合会が実施する「事務指定講習」を修了していることが条件です。

また、連合会に登録するのにも費用がかかり、登録免許税30,000円と登録手数料30,000円、その他入会金や年会費が必要です。

社労士の試験難易度・合格率

社労士の合格率は平均6.8%(平成29年〜令和3年)です。

厚生労働省が公表している社労士の試験結果は次の通りです。

年度受験者数合格率
令和3年度(第53回)37,306人7.9%
令和2年度(第52回)34,845人6.4%
令和元年度(第51回)38,428人6.6%
平成30年度(第50回)38,427人6.3%
平成29年度(第49回)38,685人6.8%

出典:社会保険労務士試験の結果について |厚生労働省

社労士試験は毎年4万人近くの人が受験しており、その難易度は約6%〜7%前後となっています。その他の資格と比べると、難易度はやや高いと言えます。

これから社労士を目指す方や独学に不安がある方は、通信講座を利用するのがおすすめです。

また、以下の記事では社労士の難易度を大学で例えた場合の偏差値や学力レベルについて解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

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社労士と比較されやすい資格は?

社労士と比較されやすい資格には、次の3つがあります。

  1. FP(ファイナンシャルプランナー)
  2. 行政書士
  3. 税理士

FPはお金に関する専門知識を持つことを示す資格です。税金や資産運用、住宅ローンなどをはじめ暮らしに関わるお金について、個人を中心にサポートすることができます。

行政書士は官公庁に提出する書類の作成や代行、手続きを行う国家資格です。法律に関する専門知識を持っており、1万種類以上の書類を取り扱えるので幅広く独占業務があります。

また、税理士は税務の専門家であり、税理士法に定められた国家資格です。個人や企業に対して、税務に関する相談を受けたり税務処理を代理したり税務書類を作成したりします。

以下の記事では、社労士におすすめのダブルライセンスについて解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

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まとめ

社労士の仕事は、1号業務・2号業務・3号業務の大きく3種類に分けられます。

そのうち1号・2号業務は独占業務にあたり、社労士のみが行える業務です。1号・2号業務は管理ソフトへ移行するケースも増えてきており、将来的にAIに代替される可能性があります。

しかし、3号業務にあたるコンサルティング業は人と人とのコミュニケーションが大切な仕事で、Aiに代替される可能性は低いため、社労士の仕事は将来性が高いでしょう。

これから社労士を目指そうと考えている方は、ぜひ社労士の通信講座をご検討ください。

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