「出張の領収書に宿泊税という項目があるけれど、宿泊費と一緒に仕訳していいの?」
「宿泊税に消費税はかかる?勘定科目は旅費交通費で合っている?」
東京都や大阪府、福岡市など、特定の自治体に宿泊した際に発生する「宿泊税」。
数百円程度の少額なケースが多いものの、いざ経理処理をするとなると、通常の宿泊代金とどう区別すべきか、消費税の扱いはどうなるのかといった判断に迷う担当者は少なくありません。
もし宿泊税の性質を正しく理解せずに処理してしまうと、消費税の二重計上や過少計上を招いたり、税務調査で仕訳の誤りを指摘されたりするリスクがあります。
特に、インボイス制度が開始された現在、領収書の細かな内訳を確認し、適切に分類するスキルは重要です。
この記事では、宿泊税の基本的な仕組みから、採用すべき勘定科目、ケース別の具体的な仕訳例、そして実務で外せない4つの注意点について徹底解説します。
入湯税やゴルフ場利用税との違いについても触れていますので、この記事を参考に、迷いのない正確な経理実務を実現しましょう。

野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界20年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。
宿泊税とは?
宿泊税は、地方自治体が独自の条例に基づいて宿泊客に課す税金のことです。
地域の観光振興や国際交流の促進に向け、財源を安定的に確保する施策のための税金です。
東京都や大阪府をはじめとする都市部や、北海道倶知安町などの日本の主要観光地において、宿泊料金に応じた課税が行われています。
また、宿泊施設は特別徴収義務者であり、利用者に代わって税金を納付する仕組みです。
宿泊税を導入している自治体と課税金額
宿泊税を導入している自治体は全国に拡大しており、課税金額や免税点は地域ごとに異なる基準で設定されています。
各自治体が抱える観光課題や整備に必要な財源の規模が、地域の実情によって大きく変動するためです。
主な自治体と課税金額は次のとおりです。
| 導入自治体 | 導入時期 | 課税金額の目安 |
| 東京都 | 2002年10月 | 100円〜200円 |
| 大阪府 | 2017年1月 | 100円〜300円 |
| 京都府 京都市 | 2018年10月 | 200円〜1,000円 |
| 石川県 金沢市 | 2019年4月 | 200円〜500円 |
| 北海道 倶知安町 | 2019年11月 | 宿泊料金の2% (※2026年4月より3%) |
| 北海道 ニセコ町 | 2024年11月 | 100円〜2,000円 |
| 北海道 | 2026年4月 | 100円〜500円 |
| 福岡県 福岡市 | 2020年4月 | 200円〜500円 (※県税50円含む) |
| 福岡県 北九州市 | 2020年4月 | 200円 (※県税50円含む) |
| 長崎県 長崎市 | 2023年4月 | 100円〜500円 |
例えば、東京都では1泊の宿泊料金に応じて100円から200円が段階的に課税される仕組みが採用されています。
宿泊税の適用基準とは?
地域ごとによって、観光事情や宿泊施設の平均的な価格帯が大きく異なるため、適用基準は、各自治体の条例によって独自に定められています。
一人一泊あたりの宿泊料金が10,000円以上の場合のみを課税対象とする自治体もあれば、料金にかかわらず一律の金額を徴収する地域も存在します。
また、修学旅行生や一定年齢未満の子供を免税対象としているケースも少なくありません。
宿泊客の場合は、目的地ごとの細かなルールを個別に把握しておく必要があります。
宿泊税と宿泊費の違い
宿泊税は地方自治体に納付する税金であり、宿泊施設への対価である宿泊費とは性質が全く異なります。
宿泊施設は利用者から税金を一時的に預かり、後日自治体へ代理で納付する義務を負っている仕組みです。
例えば、10,000円の宿泊プランを利用して200円の税金が加算された場合、施設側の正式な売上となる金額は10,000円の部分のみとなります。
残りの200円は預り金として処理される性格が異なるため、企業側は経費精算を行う際、両者の違いを正しく理解して取り扱うことが求められます。
宿泊税は何費?経費になる?基本的な勘定科目
宿泊税は経費としての計上が可能ですが、領収書の記載状況によって使用する勘定科目が変化します。
税額が明確に区分されているかどうかで、税務上の取り扱いルールを変える必要があるためです。
税額がはっきりと明記されている場合は税金として会計処理し、不明確な場合は全体の宿泊費用の一部としてまとめて計上を行います。
租税公課 | 領収書等に宿泊税の記載がある場合
領収書に金額がはっきりと明記されている場合は、租税公課として処理を行うのが原則です。
租税公課(そぜいこうか)とは、国や地方公共団体に納める租税(税金)と、公共団体への会費や罰金などの公課に使われる、会計上の勘定科目です。
明確に区分されている税金部分は、消費税の計算上不課税取引に該当するルールとなっています。
例えば、宿泊料金10,000円と税額200円が分けて記載されている明細書を受け取った場合、200円分のみを別建てにして租税公課の科目を用いて仕訳を切ります。残りの金額は通常の宿泊関連費用です。
利用目的に合わせた科目 | 領収書等に宿泊税の記載がない場合
領収書に税額の記載がない場合、実務上は宿泊の目的に応じた勘定科目(旅費交通費など)で総額を処理することが一般的です。
インボイス制度下においては、領収書に記載された登録番号と登録内容を確認し、書類に記載された「消費税額等」に基づき、仕入税額控除を適用します。
ただし、宿泊税が含まれていることが明らかな地域では、厳密にはその部分は不課税取引となるため、社内規定により定額を差し引いて処理する運用を行う企業もあります。
金額が小さいため総額で処理されることが一般的ですが、正確性を期す場合は自治体の条例から税額を算出し、区分して記帳することが望ましいです。
宿泊税の仕訳方法と具体例
仕訳を切る方法は、手元にある証明書類に税額が明記されているか否かで2つのパターンに分かれます。
内訳がわかる場合は租税公課を用いて仕訳の行を複数に分け、わからない場合は一つの科目で全額をまとめて記帳しましょう。
ここからは、具体的な仕訳例をあわせて紹介します。
宿泊税の金額が明確にわかる場合の仕訳
金額が明確にわかる場合は、宿泊費部分と租税公課部分を分けて借方に記入する形をとります。
宿泊費は消費税の課税対象ですが、税金部分は不課税対象となるため、会計ソフト上にしっかりと反映させることが重要です。
例えば、宿泊費11,000円と税額200円の合計11,200円を現金で支払った場合、次のように入力します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要・税区分 |
| 旅費交通費 | 11,000円 | 現金 | 11,200円 | 宿泊費本体(課税対象) |
| 租税公課 | 200円 | 宿泊税(不課税対象) |
入力の手間は増えますが、税区分を正確に記録する作業が正しい消費税申告へとつながります。
宿泊税の金額がわからない場合の仕訳
金額がわからない場合は、支払った総額をそのまま1つの勘定科目を用いて仕訳します。
証憑書類に記載のない金額を自己判断で計算して抜き出す行為は、会計上適切ではないとされるためです。
例えば、合計11,200円を現金で支払い、内訳の記載が全くない領収書を受け取った場合、次のように記入するだけで処理は完了となります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要・税区分 |
| 旅費交通費 | 11,200円 | 現金 | 11,200円 | 宿泊費用として全額計上(課税対象) |
手元の明細内容に沿ったシンプルな仕訳を行うことで、税務上の無用な問題を引き起こすリスクを回避できます。
宿泊費を処理する際の勘定科目と仕訳例
宿泊費の処理には、宿泊の目的や用途に合わせて複数の勘定科目が使い分けられます。
代表的な勘定科目は次のとおりです。
- 旅費交通費 | 出張などに伴う
- 会議費 | 研修などに伴う
- 福利厚生費 | 従業員慰安に伴う
- 交際費 | 取引先接待に伴う
通常の営業出張であれば旅費交通費を使用し、社員旅行の際であれば福利厚生費を使用するといった具合に状況に応じて判断しましょう。
それぞれの違いについて詳しく解説します。
旅費交通費 | 出張などに伴う
従業員の出張に伴う宿泊費は、旅費交通費の科目を用いて処理するのが一般的です。
例えば、営業担当者が遠方の取引先を訪問するためにビジネスホテルに宿泊し、10,000円をクレジットカードで支払った場合を想定します。
以下のように、借方に旅費交通費10,000円、貸方に未払金10,000円と仕訳します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 旅費交通費 | 10,000円 | 未払金 | 10,000円 |
企業活動において最も頻繁に使用される基本的な科目であり、日常業務に不可欠な経費として計上されます。
会議費 | 研修などに伴う
社外での会議や社内研修に伴って発生する宿泊費は、会議費や研修費として処理するのが一般的です。
遠方への移動そのものが目的ではなく、会議の円滑な開催や従業員のスキル習得を主目的とした支出である場合に使用される勘定科目です。
例えば、宿泊を伴う経営幹部合宿を実施し、会議室の利用料と宿泊費の合計50,000円を銀行振込で支払った場合、次のように計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 会議費 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
支出の目的にフォーカスして科目を分けることで、人材教育や経営企画にどれだけの予算が投じられたかを後から明確に振り返ることができます。
福利厚生費 | 従業員慰安に伴う
社員旅行や社内行事に伴って発生する宿泊費は、福利厚生費の勘定科目を用いて計上します。
全従業員を対象とした慰安や労働意欲の向上を目的とする支出であれば、特定の営業活動には紐づかない性質を持っていることから、福利厚生費として計上するのが一般的です。
例えば、年に一度の社員旅行で温泉旅館に宿泊し、参加者全員分の宿泊費300,000円を法人口座から一括で支払った場合、次のような仕訳となります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 福利厚生費 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
参加割合などの一定要件を満たすことで認められる経費として、適切に処理を行うことが求められます。
交際費 | 取引先接待に伴う
取引先や重要な顧客の接待を目的として発生した宿泊費は、交際費として処理を行います。
事業に関係のある者との親睦を深め、今後の取引を円滑に進めるための費用として用いられるのが交際費です。
例えば、取引先の役員を接待ゴルフに招待した際、前泊のためのホテル代20,000円を自社で負担した場合、次のような仕訳方法になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 交際費 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 |
交際費は税務調査の際に詳細を確認されやすい項目であるため、誰とどのような目的で宿泊したのかを裏付ける記録を必ず残しておくようにしましょう。
入湯税やゴルフ場利用税の勘定科目と会計処理は?
入湯税やゴルフ場利用税が発生した場合も、これまで解説したルールと同様に租税公課として処理するのが基本的な形となります。
入湯税やゴルフ場は、どちらも地方自治体が利用客に対して課す税金であり、消費税の計算において不課税取引に該当する共通の性質を持っているためです。
例えば、温泉旅館に出張で宿泊し、宿泊費10,000円、宿泊に関する税金100円、入湯税150円が記載された領収書を受け取った場合は次のような仕訳となります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要・税区分 |
| 旅費交通費 | 10,000円 | 現金 | 10,250円 | 出張用温泉旅館宿泊費(課税対象) |
| 租税公課 | 250円 | 宿泊税100円+入湯税150円(不課税対象) |
税金部分である合計250円をまとめて租税公課として借方に計上し、残りの10,000円を旅費交通費として処理する仕訳を行います。
ゴルフ場利用税に関しても考え方は同じです。
接待で利用した総額の中から税金部分だけを抜き出して租税公課の勘定科目を当てはめ、純粋なプレー代などを交際費に分類する作業を行いましょう。
明細に各種地方税がはっきりと明記されている場合は、経費の本体価格から分離して仕訳を行う習慣をつけることで、より正確で透明性の高い経理処理が行えます。
宿泊税の経費精算や会計処理における注意点
実務を行う上では、税区分の判断ミスや証憑書類の確認不足といったトラブルを防ぐための注意が必要です。
間違った処理をそのまま放置すると、消費税の納付額に誤差が生じたり、後日の税務調査で指摘を受けたりするリスクが高まる事情があるからです。
宿泊税の経費精算や会計処理における注意点は主に以下の通りです。
- 宿泊税と宿泊費を明確に区別する
- 宿泊税に対する消費税の非課税規定に注意する
- 宿泊税は原則として現地払いとなる点を把握する
- 領収書の記録と管理を徹底する
それぞれ詳しく解説します。
注意点①宿泊税と宿泊費を明確に区別する
領収書を受け取った段階で、税金部分と宿泊費本体が混ざらないよう、明確に区別して記帳することが大切です。
両者は税務上の取り扱いルールが根本的に異なるため、安易に合算してしまうと正しい経営成績を帳簿へ反映できなくなります。
経費精算システムに情報を入力する際、合計金額だけを見て一つの項目に入力して終わらせる方法は避け、明細行を追加して税金分を独立させる操作を確実に行いましょう。
少しの手間を惜しまず、手元の内訳を忠実にシステムへ反映させる厳格な社内ルールを徹底することが重要です。
注意点②宿泊税に対する消費税の非課税規定に注意する
宿泊税を計上する際、加算される税金部分には消費税がかからないという不課税の規定も忘れてはいけません。
二重に税金がかかる事態を防ぐ法的な仕組みとなっており、消費税計算において仕入税額控除の対象外として扱わなければならないためです。
会計ソフトに租税公課として数値を入力する際、税区分が誤って課税仕入れのままとなっていないかを都度チェックする必要があります。
ソフトの初期設定に頼りきらず、入力項目ごとの税区分を目視で確認する手順を日常の業務フローに組み込みましょう。
注意点③宿泊税は原則として現地払いとなる点を把握する
オンラインのシステムで宿泊予約と決済を事前に済ませた場合でも、税金部分だけは現地での支払いを求められることは少なくありません。
予約サイトのシステム仕様上、自治体ごとに複雑に異なる税額を事前決済の枠組みに含めることが難しいのが実情です。
そのため、ホテル予約サイトで全額のクレジットカード決済を完了していても、チェックイン時のフロントで数百円の支払いを現金で求められる事態が実際に発生します。
出張に向かう従業員に対して、現地で追加の支払いと領収書の受け取りが発生する可能性を事前にアナウンスしておくと精算がスムーズです。
注意点④領収書の記録と管理を徹底する
受け取った領収書などの証憑書類は、電子帳簿保存法などの法的なルールに則って適切に保管し、後からでも内容を確認できる状態を保ちましょう。
税務調査が入った際、仕訳の根拠となる書類が手元に揃っていないと、正当な経費として認められず追徴課税を受ける恐れがあるためです。
紙の明細書をスマートフォンで撮影して社内のクラウドシステムに保存したり、原本を月別にファイリングして専用のキャビネットで保管したりする運用を徹底することが重要です。
適切な書類の管理体制を構築することは、企業としてのコンプライアンスを守る上で最も重要な土台となります。
まとめ
宿泊税は出張や研修の際に発生する地方税であり、領収書の記載内容に従って正しく勘定科目を分けて会計処理を行うことが求められます。
手元の明細の有無によって適切な処理方法が変化し、消費税の納税額計算にも直接的な影響を与える非常に重要な項目です。
また、2026年以降も新たに制度の導入を開始する自治体が増加傾向にあります。
入湯税やゴルフ場利用税なども含め、地方税に関する基本的な知識をアップデートし、出張先の最新情報を常にキャッチアップする体制を整えることも不可欠です。
正しい知識とルールを持って日々の経理業務にあたることで、無用な税務リスクを軽減し、企業としての健全な財務管理を継続的に実現できるようにしましょう。


