「売掛金の入金が予定日に振り込まれない…」「取引先に何度連絡しても支払いが遅れて困っている」「このまま回収できなかったらどうすればいいの?」
売掛金が回収できない状況は、どの事業者にとっても資金繰りを圧迫する重大な問題です。請求手続きの不備や相手先の資金難など原因はさまざまですが、放置すると時効消滅や貸倒れといった損失につながる可能性があります。
結論からお伝えすると、入金の遅れに気づいたら、まず自社の請求内容を確認し、すぐに連絡して支払日を書面で約束してもらうことが回収の近道です。話し合いに応じない相手には、内容証明郵便や支払督促など段階を踏んで対応し、どうしても回収できない売掛金は、要件を満たせば税務上の貸倒損失として処理できます。
この記事では、売掛金が回収できない主な原因、初期対応、相手が応じる場合・応じない場合の回収方法、時効の管理、回収不能になったときの税務処理、そして予防策について、福岡の税理士がわかりやすく解説します。すぐに資金化したい方向けのファクタリングという手段も紹介します。
この記事でわかること
- 売掛金が回収できない3つの原因と、最初にやるべきこと
- 相手が応じる場合・応じない場合の回収方法(内容証明・支払督促・少額訴訟)
- 売掛金の消滅時効と、時効を止める方法
- 回収できない売掛金を貸倒損失にするための要件と消費税の扱い
- 未回収を防ぐ与信管理・入金管理と、2026年施行の取適法のポイント
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売掛金が回収できなくなる主な理由

売掛金とは、商品やサービスを先に提供し、代金を後から受け取る約束をしたときの「まだ受け取っていない代金」のことです。売掛金が回収できなくなる原因は多岐にわたりますが、主に次の3つに分けられます。原因によって取るべき対応がまったく違うため、最初に見極めることが大切です。
理由①請求手続きや支払い条件に誤りがある
意外に多いのが、自社側の請求の不備です。請求書の発行自体を忘れていたり、送付先の担当者や部署を間違えていたりすると、取引先は支払うべき代金を認識できません。請求書の金額や支払期日、振込先口座に誤りがある場合も、取引先の経理で支払いが保留されます。
インボイス制度が始まってからは、登録番号や税率ごとの消費税額など、請求書の記載事項に不備があると差し戻されるケースも増えました。契約時に取り決めた締め日や支払いサイトについて、双方の認識がずれていることもあります。口頭の約束だけでなく、契約書や発注書で条件を合意し、記録を残しておきましょう。
自社側の不備が原因であれば、速やかに取引先へ連絡して謝罪し、訂正した請求書を再発行するなど、誠実に対応することが必要です。
理由②取引先の資金繰りが悪化している
最も深刻なのが、取引先の資金繰りの悪化です。業績不振や想定外の支出で手元資金が不足すると、支払いが遅れ始めます。最初は数日の遅れだったものが次第に長引いたり、一部しか入金されなくなったりするのは危険な兆候です。
連絡しても担当者が不在がちになる、明確な支払日を約束しなくなる、支払いを手形や長い期日に変えてほしいと言われる、といった変化があれば、状況はさらに悪化している可能性があります。放置すると、最終的に取引先が倒産し、売掛金が貸倒れになるリスクが高まります。
理由③クレームや相殺などの主張で支払いを渋られる
取引先が「品質に問題があった」「仕様が契約と違う」といった理由で代金の支払いを保留したり、値引きを求めたりするケースもあります。主張が正当な場合もありますが、支払いを遅らせる口実に使われることもあります。
また、自社が取引先から商品を仕入れていて買掛金がある場合に、取引先が一方的に「売掛金と相殺する」と主張して支払わないケースもあります。まずは相手の主張が事実に基づいているか、契約書や納品書、検収の記録と照らし合わせて確認し、事実関係を明確にしたうえで冷静に交渉しましょう。
売掛金が回収できない場合の初期対応

売掛金の入金が遅れたときは、最初の数日から数週間の対応がその後の回収を大きく左右します。まずは次の4つを順に進めましょう。
①自社の請求内容と書類を点検する
取引先に連絡する前に、自社の請求書の金額・期日・送付先に誤りがないかを確認します。あわせて、将来の交渉や法的手続きに備えて、次の書類がそろっているかも点検しておきましょう。
- 契約書・発注書に、取引条件、支払期日、遅延損害金の定めがあるか
- 請求書の発行日、金額、商品・サービスの内容は正確か
- 納品書・検収書・受領のメールなど、相手が受け取ったことを示す記録があるか
書類に不備や矛盾があると、相手から債務の存在自体を争われたり、交渉で不利になったりします。問題が表面化してから探すのではなく、この段階で関係書類を一式まとめておきましょう。
②すぐに連絡し、遅れの理由と支払日を確認する
期日の翌営業日には、電話やメールで入金が確認できない旨を伝えます。「うっかり忘れていた」という単純なケースも多いので、最初は丁寧に確認するのが基本です。そのうえで、遅れの理由と具体的な支払日を聞き、メールなど記録が残る形で約束してもらいます。
③取引の一時停止で損失の拡大を防ぐ
支払いが遅れているのに取引を続けると、未回収の額がさらに膨らみます。新規の注文受付を保留し、出荷準備中の商品があれば発送を止めることも検討しましょう。継続的なサービスであれば、契約の定めに従って提供を一時中断することも選択肢です。
取引を止めるときは、一方的に関係を断つのではなく、「入金が確認できるまで取引を保留する」ことを相手に明確に伝えます。相手に事態の重さを認識してもらい、支払いを促す効果も期待できます。
④相殺できるかを確認する
自社が取引先に対して買掛金などの支払い義務を負っていれば、相殺によって回収できる場合があります。相殺とは、お互いに同じ種類の債権を持っているときに、一方の意思表示で対当額(重なる金額)を消滅させる仕組みです。
たとえば、自社が取引先に100万円の売掛金を持ち、自社も取引先に30万円の買掛金(支払い義務)を負っている場合、相殺の意思表示をすれば、30万円分は支払いと受取りが同時に済んだことになり、残りの売掛金は70万円になります。裁判所の手続きを経ずに確実に回収できるのが利点ですが、双方の債権が支払期日を迎えていることなどの要件があります。相殺の通知は、後から争われないよう内容証明郵便などの書面で行うと安心です。
相手が支払いに応じる場合の回収方法
| 方法 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 残高確認書・債務承認書 | 未払いの金額を相手に書面で認めてもらう | 金額の争いを防ぎ、時効が更新される |
| 分割払い・支払条件の再設定 | 毎月の支払額や期限の延長を合意する | 相手が実行できる計画で確実に回収 |
| 債務承認弁済契約書 | 支払総額・回数・期日・遅れた場合の扱いを定める | 約束の内容を証拠として残す |
| 保全策(担保・保証) | 債権譲渡担保、連帯保証、抵当権など | 再び滞ったときの回収手段を確保 |
取引先に支払う意思があり、話し合いに応じる姿勢がある場合は、関係を保ちながら穏便に解決を目指すのが基本です。
方法①未払金の残高を書面で確認してもらう
交渉の第一歩は、債務額を確定させることです。未払いの売掛金がいくらあるかを明記した確認書を作り、相手に署名・押印してもらいます。「債務承認書」「残高確認書」などの形で作成できます。後から「請求額が違う」と主張されるのを防ぎ、債務の存在と金額を客観的な証拠として残せます。
さらに、債務者が残高を認めることは、民法上の「債務の承認」にあたり、時効が更新されて(それまでの期間がリセットされて)新たに時効期間が進み始めます。2020年4月の民法改正前は「時効の中断」と呼ばれていたものです(法務省「民法(債権法)改正」)。時効が近い売掛金では特に重要な手段です。
方法②分割払いや支払条件の再設定を提案する
相手に支払う意思はあっても、資金繰りの問題で一括払いが難しい場合は、分割払いや支払期限の延長を提案するのが現実的です。大切なのは、相手が実際に払える計画にすることです。実現できない計画を押し付けても、再び支払いが滞るだけです。
条件を見直した場合は、支払総額、分割回数、1回あたりの金額、支払日、1回でも遅れたら残りを一括で支払う(期限の利益の喪失)といった内容を「債務承認弁済契約書」などの合意書にまとめ、双方で保管します。公証役場で強制執行認諾文言付きの公正証書にしておけば、支払いが滞ったときに裁判を経ずに強制執行の手続きに進めます。
方法③担保や保証などの保全策を検討する
分割払いに応じる場合、約束どおり払ってもらえるかという不安が残ります。相手の経営が不安定なときは、債権の保全策も検討しましょう。
代表的なのが債権譲渡担保です。取引先が第三者に対して持っている売掛金などを担保として自社に譲渡してもらい、支払いが滞ったときは、その債権を直接取り立てて未回収分に充てます。ほかにも、代表者に連帯保証人になってもらう、不動産に抵当権を設定するといった方法があります。設定の手続きや有効性には法律の専門知識が必要になるため、弁護士に相談しながら進めてください。
相手が応じない場合の回収手段
督促から強制執行までの流れ
電話やメールでの督促に応じず、話し合いにも至らない場合は、段階を踏んでより強い手段に移ります。
手段①内容証明郵便で正式に請求する
内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰あてに差し出したかを日本郵便が証明するサービスです。請求の事実と内容が記録に残るため、後の裁判で証拠になります。
文書には、未払いの売掛金の内訳、支払期限、「期限までに支払いがない場合は法的措置を検討する」旨を記載するのが一般的です。それ自体に強制力はありませんが、相手に強い心理的なプレッシャーを与えます。また、内容証明郵便による請求は民法上の「催告」にあたり、時効の完成が6か月間猶予されます。ただし、催告を繰り返しても猶予は延びないため、その6か月の間に支払督促や訴訟などの次の手段を取る必要があります。
手段②支払督促・少額訴訟・訴訟など法的手段を検討する
| 手続き | 向いているケース | 特徴 |
|---|---|---|
| 支払督促 | 金額に争いがなく、相手が払わないだけのとき | 書類審査のみで裁判所に行く必要がない。相手が受け取ってから2週間以内に異議を出すと訴訟に移行 |
| 少額訴訟 | 60万円以下の金銭の請求 | 原則1回の審理で判決が出る簡易裁判所の手続き |
| 通常訴訟 | 相手が債務の存在や金額を争っているとき | 時間と費用はかかるが、複雑な争いにも対応できる |
支払督促は、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる手続きで、手数料は訴訟より低く、書類審査だけで進みます。相手が異議を出さなければ、仮執行宣言を申し立てて強制執行ができるようになります(裁判所「支払督促」)。一方、相手が異議を出すと通常の訴訟に移行するため、金額や内容に争いがある場合は最初から訴訟を選ぶ方がよいこともあります。
判決などを得ても相手が払わない場合は、相手の預金や売掛金、不動産などを差し押さえる強制執行を申し立てます。どの手段を選ぶかは、金額、相手の財産の状況、争いの有無によって変わるので、弁護士に相談して判断しましょう。

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売掛金の時効と、放置したときのリスク
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時効期間(2020年4月1日以後に発生した売掛金) | 権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年の早い方 |
| 2020年3月31日以前に発生した売掛金 | 改正前の民法が適用(商品の代金などは2年の短期消滅時効など) |
| 時効の完成猶予(一時停止) | 内容証明郵便などによる催告:6か月/訴訟・支払督促:手続きの終了まで |
| 時効の更新(リセット) | 相手が債務を承認した、判決などで権利が確定した |
リスク①時効消滅で請求する権利を失う
売掛金には消滅時効があります。時効が完成すると、相手が時効を主張(時効の援用)すれば支払い義務がなくなり、法的に代金を請求できなくなります。
2020年4月1日施行の改正民法により、売掛金の時効は原則として「権利を行使できることを知った時から5年」に統一されました。通常、支払期日は契約で分かっているので、期日の翌日から5年が経過すると時効が完成する可能性があります。なお、2020年3月31日以前の取引で発生した売掛金には改正前の民法が適用され、商品の売掛代金は2年など、より短い時効が定められていた点に注意してください。長期間残っている売掛金は、発生日と時効までの残り期間を一覧にしておきましょう。
リスク②支払いの優先順位が下がり、回収がさらに遅れる
資金繰りが悪化した取引先は、複数の債権者から支払いを求められているのが通常です。自社が何もしなければ、取引先は強く、頻繁に督促してくる相手への支払いを優先します。結果として自社の売掛金は後回しになり、回収がさらに遅れます。
さらに、ほかの債権者が先に訴訟を起こして取引先の財産を差し押さえると、自社が回収できる財産が残っていないこともあります。債権回収には「早い者勝ち」の面があることを意識し、遅れに気づいたら放置せずに動き出しましょう。
リスク③自社の資金繰りが悪化する
売上として計上していても、入金されなければ手元の現金は増えません。売上は立っているのに現金が足りない、いわゆる「黒字倒産」のリスクもあります。売掛金の回収が遅れたときは、自社の資金繰り表で何か月先まで支払いに耐えられるかを確認し、必要に応じて早めに金融機関へ相談しましょう。
回収できない売掛金の税務処理(貸倒損失と消費税)
| 区分 | 主な要件 | 処理 |
|---|---|---|
| 法律上の貸倒れ | 会社更生法・民事再生法などの手続きや、債権者集会の協議で切り捨てられた。債務超過が続く相手に書面で債務免除した | 切り捨て・免除された金額を損金に |
| 事実上の貸倒れ | 相手の資産状況や支払能力から、全額が回収できないことが明らかになった(担保があれば処分後) | 全額を損金経理 |
| 形式上の貸倒れ | 継続的な取引の相手と取引を停止し、停止時や最後の弁済時などから1年以上経過した(売掛債権のみ) | 売掛金から備忘価額(1円など)を残して損金経理 |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.5320「貸倒損失として処理できる場合」(法人税基本通達9-6-1〜9-6-3)
あらゆる手を尽くしても回収できない売掛金は、税務上「貸倒損失」として費用(法人は損金、個人事業主は必要経費)にできる場合があります。ただし、「もう回収できそうにない」と判断しただけでは認められず、上の表のような要件を満たす必要があります。
貸倒損失にできないケースに注意
取引先がまだ営業を続けている、担保がある、一部でも回収の見込みがある、といった段階で全額を貸倒損失にすると、税務調査で否認されることがあります。また、回収の努力をせずに一方的に債権を放棄すると、相手への寄附金とみなされ、損金にならない場合もあります。督促の記録や内容証明郵便の控え、相手の状況がわかる資料は、貸倒れを証明する資料としても保管しておきましょう。
消費税は「貸倒れに係る税額控除」で取り戻せる
売上を計上した時点で、売掛金に含まれる消費税はすでに売上の消費税として申告しています。その売掛金が貸倒れになった場合は、貸倒れとなった金額に含まれる消費税額を、貸倒れが発生した課税期間の売上の消費税額から差し引くことができます(消費税法第39条)。免税事業者だった期間の売上にかかる売掛金は対象外になるなど要件があるため、会計ソフトで貸倒損失を入力するときは税区分に注意してください。

売掛金の未回収を防ぐための対策

売掛金の未回収は、発生してからの対応も重要ですが、それ以上に発生させない仕組みづくりが大切です。
対策①与信管理で取引の可否と上限を決める
与信管理とは、取引先の支払い能力や信用度を調べ、取引をするかどうか、どこまでの金額(与信限度額)なら安全かを判断する管理のことです。新規の取引先では、登記情報や会社のホームページだけでなく、信用調査会社のレポートなども使って財務状況を確認します。
既存の取引先も、定期的に経営状況を確認し、支払いの遅れの兆候がないかをチェックして、必要に応じて与信限度額を見直しましょう。初めての取引で金額が大きい場合は、前払いや一部前金、分割納品にするのも有効です。
対策②入金管理と督促のルールを決める
担当者任せにせず、誰が対応しても同じ手順で管理できる仕組みをつくります。請求書の発行から入金確認までをマニュアル化し、売掛金の残高を取引先ごと・経過日数ごとに整理した「売掛金年齢表」で、どの取引先の支払いがいつから遅れているかを見える化します。
| 取引先 | 期日前 | 1か月以内の遅れ | 1〜3か月の遅れ | 3か月超の遅れ |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 120万円 | ― | ― | ― |
| B社 | 80万円 | 30万円 | ― | ― |
| C社 | ― | ― | 45万円 | 20万円 |
売掛金年齢表の例(金額は説明用)。C社のように遅れが長期化している取引先から優先して対応します。
そのうえで、「期日後3日でメール連絡」「1週間で電話連絡」「1か月で内容証明郵便」のように、経過日数ごとの督促の手順をルール化しておくと、組織として一貫した対応ができます。クラウド会計ソフトの入金消込(入金と売掛金の突き合わせ)機能を使うと、入金の確認漏れも防げます。
対策③取引先の倒産に備える(経営セーフティ共済・取引信用保険)

「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」は、取引先が倒産して売掛金などが回収困難になったときに、無担保・無保証人で借入れができる国の共済制度です。掛金は月5,000円〜20万円の範囲で選べ、借入れは掛金総額の10倍(上限8,000万円)と回収困難になった売掛金などの額のいずれか少ない方が限度です。掛金は法人なら損金、個人事業主なら必要経費にできます(中小機構「経営セーフティ共済 制度の概要」)。
ただし、2024年(令和6年)10月1日以後に解約して再び加入した場合、解約の日から2年を経過する日までに支払う掛金は損金・必要経費にできません。節税だけを目的に解約と加入を繰り返すことはできなくなっています。このほか、民間の損害保険会社などが扱う取引信用保険(取引先の倒産などによる売掛金の損失を補償する保険)もあります。
対策④取適法・フリーランス法のルールを知っておく
2026年1月1日から、下請法が改正され「中小受託取引適正化法(取適法)」になりました。資本金に加えて従業員数の基準が設けられて対象が広がり、発注する側(委託事業者)には、手形による支払いの禁止や、支払期日までに代金に相当する金銭を得ることが難しい電子記録債権・ファクタリングなどによる支払いの禁止が加わっています(公正取引委員会「取適法」)。
自社が中小受託事業者(受注する側)にあたる取引で、代金の支払いが不当に遅れている場合は、こうした法律に基づいて公正取引委員会や中小企業庁の窓口に相談できることがあります。フリーランスとの取引には、2024年11月施行のフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)のルールもあります。自社がどちらの立場になるかを確認しておきましょう。
すぐに資金化したい場合は「ファクタリング」を検討する

特定の取引先からの回収が滞ると、自社の仕入れ代金や経費の支払いに影響が出ます。こうした資金繰りの悪化に対応する方法の一つが、回収に問題のない別の取引先の売掛金を活用するファクタリングです。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、会社や個人事業主が持っている売掛金をファクタリング会社に売り、支払期日より前に現金化するサービスです。借入れではないため決算書の借入金は増えず、審査では主に売掛先(支払う側の取引先)の信用力が見られます。最短即日で資金化できる場合もあり、急な資金需要に応えられる手段です。
ファクタリングで資金化する仕組みを詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

償還請求権なしの契約なら貸倒れのリスクも手放せる
多くの事業者向けファクタリングは「償還請求権なし(ノンリコース)」で契約されます。償還請求権とは、売却した売掛金が回収できなかった場合に、ファクタリング会社が利用者に支払いを求められる権利です。ノンリコース契約なら、売却した売掛金の取引先が後に倒産しても、利用者が穴埋めする必要はありません。
反対に、買戻しを求められる契約や、利用者自身の資金で支払わなければならない契約は、実態によっては貸金業に当たり、違法な貸付けの手口になることもあると金融庁が注意を呼びかけています(金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」)。契約前に手数料と買戻しの有無を必ず確認しましょう。
売掛金を回収できていないときのファクタリングの使い道
すでに支払いが滞っている取引先の売掛金は、ファクタリング会社の審査で支払い能力に問題があると判断され、買い取ってもらえない可能性が高いです。一方で、ほかに健全な取引先の売掛金があれば、次のような使い方ができます。
- 弁護士への相談料や、支払督促・訴訟などの債権回収の費用に充てる
- 仕入れ代金や給与など、目の前の支払いに充てて資金繰りをつなぐ
- 資金繰りのプレッシャーを減らし、回収の交渉や本業に集中する
ただし、ファクタリングの手数料は、年率に直すと融資の金利より高くなりやすいのが一般的です。あくまで一時的なつなぎとして使い、資金繰りが続けて苦しい場合は、金融機関からの融資や取引条件の見直しもあわせて検討しましょう。
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まとめ

売掛金の未回収は、どの事業者にも起こりうる経営リスクです。入金が遅れたら、まず自社の請求内容を確認し、すぐに連絡して支払日を書面で約束してもらうことから始めましょう。
相手に支払う意思がある場合は、残高確認書や分割払いの合意書を取り交わし、時効の管理もあわせて行います。応じない場合は、内容証明郵便、支払督促・少額訴訟、訴訟と段階を踏んで対応し、法的手段は弁護士に相談しながら進めてください。
どうしても回収できない売掛金は、要件を満たせば貸倒損失として費用にでき、消費税も取り戻せる場合があります。そして何より大切なのは、与信管理と入金管理のルールで未回収を防ぐことです。ファクタリングは一時的なつなぎとして上手に使い、資金繰りが安定する仕組みを整えましょう。
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参考資料:法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」/裁判所「支払督促」/裁判所「少額訴訟」/国税庁 タックスアンサーNo.5320「貸倒損失として処理できる場合」/中小機構「経営セーフティ共済 制度の概要」/公正取引委員会「取適法」/金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
※本記事は2026年9月時点の公表情報をもとに作成しています。法的手続きの選択は弁護士に、貸倒損失などの税務の判断は税理士にご相談ください。

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野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界23年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。
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