
諸口とは何かわかりやすく解説!意味や役割、使い方を仕訳例付きで紹介

「諸口ってどういう意味?」
「経理での役割や使い方を知りたい!」
「具体的な仕訳例があれば助かるな…」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
経理業務において「諸口(しょくち)」という言葉は頻繁に登場しますが、その具体的な意味や役割、正しい使い方を理解していないと、仕訳作業で混乱してしまうこともあります。
特に、複数の勘定科目が関係する取引を処理する際には、諸口の概念が重要となります。
この記事では諸口の基本的な意味から、その役割、具体的な使い方までをわかりやすく解説します。さらに、実際の仕訳例も紹介していますので、経理初心者の方や改めて知識を整理したい方はぜひ最後までご覧ください。
目次
諸口(しょくち)とは?諸口の意味と2つの使われ方
諸口(しょくち)とは、会計処理において複数の勘定科目をひとつにまとめる会計用語です。
勘定科目を特定できない、または複数の勘定科目にまたがる取引を処理する際に、便宜的に「諸口」という勘定科目を使用しており、会計帳簿を簡素化し、効率的に記帳ができるという役割があります。
ただし、諸口は取引の内容を明確にするための一時的な措置であり、最終的には適切な勘定科目に振り替える必要があります。
諸口が使われるケースは主に次の2つです。
- 特殊仕訳帳
- 複合仕訳
ここからは、それぞれの使われ方について詳しく解説します。
1.特殊仕訳帳での諸口欄
特殊仕訳帳とは、特定の取引をまとめて記録するために使用される帳簿です。例えば、現金取引を記録する「現金出納帳」や、売上取引を記録する「売上帳」などが特殊仕訳帳に該当します。
通常、特殊仕訳帳には取引の種類ごとに専用の欄が設けられていますが、まれに既存の勘定科目に直ちに分類できない取引が発生することがあります。
このような場合に、一時的に諸口欄を使用して取引を記録することが可能です。
特殊仕訳帳における諸口欄は、取引内容の詳細を把握するために摘要欄に具体的な内容を記載することが重要です。
例えば、現金出納帳で消耗品を購入した場合、摘要欄に「消耗品購入」と記載することで、後日、適切な勘定科目に振り替える際に役立ちます。
ただし、特殊仕訳帳の諸口欄はあくまで一時的な記録場所であるため、定期的に内容を確認し、適切な勘定科目に振り替える必要があります。
2.複合仕訳での諸口
複合仕訳とは、複数の勘定科目が関連する仕訳のことで、一つの取引を複数の勘定科目で処理する必要がある場合に使用されるものです。
例えば、商品を販売して代金の一部を現金で受け取り、残りを掛けとする場合などに複合仕訳を使用します。
複合仕訳において、仕訳の片側に複数の勘定科目を含める場合、一時的にそれらをまとめる目的で諸口を使用することがあります。
つまり、複合仕訳における諸口は仕訳の片側に複数の勘定科目を含める際に用いるものです。
ただし、複合仕訳での諸口の使用もあくまで一時的なもののため、後ほど原因を特定して適切な勘定科目に振り替える必要があります。
諸口の使い方と仕訳例
仕訳帳で使用するケース
基本的に仕訳帳において諸口が使われることはありません。ただし、仕訳の片側に複数の勘定科目が含まれる場合は、仕訳帳で諸口を使用するケースがあります。
例えば、備品を購入し、代金のうち一部(200,000円)を現金で支払い、残額(100,000円)を未払金とした場合の仕訳は以下のようになります。
【初回の仕訳(諸口を使用)】
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
備品 | 300,000円 | 諸口 | 300,000円 |
【諸口の内訳を振り分ける仕訳】
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
諸口 | 300,000円 | 現金 | 200,000円 |
未払金 | 100,000円 |
このように、仕訳の片側に複数の勘定科目が含まれる場合、一時的に諸口としてまとめることで借方と貸方の金額を合わせることが可能です。
ただし、諸口は勘定科目としての意味を持っているわけではないため、後で詳細に分解し仕訳する必要があります。
総勘定元帳で使用するケース
総勘定元帳は、すべての取引を勘定科目ごとに集計した帳簿です。
総勘定元帳では、新たに諸口を使用することは通常ありません。諸口が総勘定元帳に使用するのは、仕訳帳で諸口として処理された取引が転記される場合のみです。
そのため、仕訳帳での諸口処理が適切に行われていれば、総勘定元帳において諸口の残高が大きくなることはありません。
諸口の残高が長期間残ることは本来の会計処理として適切ではなく、必ず定期的に確認し適切な勘定科目に振り替える必要があります。
また、総勘定元帳における諸口の残高は財務諸表の作成に影響を与える可能性があるため、会計期間末には必ず残高をゼロにするように処理しましょう。
諸口を使う上での注意点
補助明細を詳細に記載しなくてならない
諸口を使用する際は、必ず補助明細を詳細に記載する必要があります。補助明細とは、日付、相手先、金額、摘要など取引の内容を具体的に示すための情報です。
補助明細が不十分な場合、後日取引の内容を特定することが困難になり、適切な勘定科目に振り替えることができなくなる可能性があります。
補助明細は後から思い出すのが難しいので、取引が発生した時点でできる限り詳細に記載するようにしましょう。
その際、証拠書類(領収書、請求書など)と紐付けて管理することが望ましいです。
諸口は勘定科目ではない
諸口は、厳密には勘定科目ではありません。
勘定科目は、資産、負債、資本、収益、費用のいずれかに分類される必要がありますが、諸口はこれらのいずれにも該当しません。
諸口はあくまで一時的な記録場所であり、最終的には適切な勘定科目に振り替える必要があります。諸口を勘定科目として使用し続けることは会計原則に違反する行為です。
会計ソフトで諸口を使う必要はない
会計ソフトによっては諸口を勘定科目として登録できてしまう場合があります。
しかし、これはあくまで便宜的な措置であり、諸口を勘定科目として使用することを推奨するものではありません。
現代の会計ソフトは非常に多機能であり、様々な取引に対応できるようになっているため、以前は諸口を使用せざるを得なかったようなケースでも、会計ソフトを活用することで適切な勘定科目で処理することが可能です。
例えば、会計ソフトによっては勘定科目を細かく設定したり、補助科目を活用したりすることが可能で、中には自動仕訳機能が搭載されたものもあります。
これらの機能を活用することで、諸口を使用せずに取引の内容をより詳細に記録でき、諸口の使用を減らすことが可能です。
まとめ
諸口は、複数の勘定科目をまとめて処理する際に使用する勘定科目で、仕訳を簡潔に整理する役割を持ちます。
諸口は主に、仕訳の貸方または借方に複数の科目が関わる取引で使われ、正しく活用することで、複雑な取引もスムーズに記録でき、経理業務の効率化につながります。
ただし、諸口は勘定科目ではありません。あくまで一時的な記録場所であるため、最終的には適切な勘定科目に振り替える必要があります。
経理処理をスムーズに行うために、実際の仕訳例を確認しながら諸口の使い方を理解し、適切に活用していきましょう。
監修者(専門家監修)

野村税理士事務所代表 野村真一
税理士業界20年超、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として融資支援、補助金の申請支援、経営アドバイスを行う。
税理士試験その他士業を中心とした資格試験取得のための予備校・通信講座選定、勉強方法などのアドバイスを行っている。