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事業承継にかかる費用はいくら?手数料や課税される税金について解説

事業承継にかかる費用はいくら?手数料や課税される税金について解説

「事業承継にかかる費用って、結局いくらくらいかかるの?」「後継者に株を渡すときの税金や、M&A仲介会社の手数料の相場が知りたい」

会社や事業を次の世代に引き継ぐ「事業承継」は、多くの経営者にとって一生に一度の大仕事です。ところが、どんな費用が、誰に、どのくらいかかるのかが見えにくく、準備を先送りしてしまう方も少なくありません。

結論からお伝えすると、事業承継の費用は「税金」と「専門家への報酬」の2本立てで、承継の方法(親族内か、親族外・M&Aか)によって中身が大きく変わります。親族内承継では後継者が負担する相続税・贈与税が最大の費用になりやすく、事業承継税制(特例措置)を使えば納税を猶予できる可能性があります。ただし、特例措置を使うには2027年9月30日までに「特例承継計画」を提出する必要があります。

この記事では、事業承継にかかる税金と手数料の種類、相続税・贈与税の税率と計算例、M&A仲介の手数料の考え方、費用を抑える方法まで、福岡の税理士がわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 事業承継にかかる費用の全体像(税金と専門家報酬)
  • 相続税・贈与税の税率と、自社株を渡すときの計算例
  • 事業承継税制(特例措置)の期限と使うまでの流れ
  • M&Aで売り手・買い手にかかる税金と、仲介手数料の考え方
  • 補助金や早めの準備で費用を抑える方法
目次

事業承継にかかる費用の全体像

費用の種類主にかかる場面負担する人金額の決まり方
相続税経営者が亡くなり、自社株や事業用資産を相続後継者(相続人)財産の評価額に応じた累進税率(10〜55%)
贈与税生前に自社株や事業用資産を贈与後継者(受贈者)暦年課税は10〜55%、相続時精算課税は一律20%
所得税・住民税自社株を売却(M&A・従業員への売却)売り手の株主譲渡益に対して20.315%
法人税・消費税会社が事業を譲渡する(事業譲渡)売り手の会社譲渡益に法人税、課税資産の譲渡に消費税
登録免許税・不動産取得税不動産の名義変更や、役員・本店などの登記取得した人・会社固定資産税評価額などに税率をかける
専門家への報酬株価評価、承継計画、契約書、M&Aの仲介など依頼した人(売り手・買い手)時間制・定額・成功報酬など事務所ごとに異なる

出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」、国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」、国税庁「No.5759 法人税の税率」をもとに作成

事業承継の費用は、大きく分けると「税金」と「専門家への報酬」です。税金は、自社株や事業用の資産を「相続で渡すか」「贈与で渡すか」「売るか」によって、かかる税目がまったく変わります。

たとえば、親族の後継者に株を渡すなら相続税や贈与税が中心になり、第三者に会社を売るなら売り手の株主に株式の譲渡所得税がかかります。一方、専門家への報酬は、税理士による株価評価や承継計画の作成、弁護士による契約書のチェック、M&A仲介会社への手数料などで、依頼する範囲が広いほど大きくなります。

✓ 最初に押さえたいポイント
  • 費用の大半は「自社株の評価額」で決まる。業績がよく内部留保が厚い会社ほど株価が高く、税金も重くなる
  • 税金を払うのは多くの場合「後継者」。現経営者の準備が後継者の資金繰りを左右する
  • 専門家報酬は料金体系がバラバラ。見積もりと計算方法を事前に確認することが大切

なお、元記事では法人税率を23.4%としていましたが、現在の普通法人の法人税率は23.2%です(資本金1億円以下の中小法人は、年800万円以下の所得部分が15%)。法人税の実際の負担は、法人住民税や事業税を合わせた「実効税率」で考える必要があります。

承継の方法で費用はこう変わる|親族内・従業員・M&A

親族内承継と親族外承継(M&A・従業員)でかかる費用の違い

事業承継には、主に3つの方法があります。中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも、親族内承継、従業員承継(役員・従業員への承継)、社外への引継ぎ(M&A)の3類型に分けて整理されています。どの方法を選ぶかで、かかる費用の中身は大きく変わります。

親族内承継|相続税・贈与税と「株価対策」が中心

子どもや親族に会社を継がせる場合、自社株は相続か贈与で渡すのが一般的です。後継者はお金を払わずに株を受け取れる一方で、その評価額に応じた相続税・贈与税を負担します。業績のよい会社ほど株価が高くなり、後継者が数千万円単位の税金を用意しなければならないケースもあります。

費用を抑えるカギは、事業承継税制(特例措置)の活用と、計画的な株価対策です。役員退職金の支給で一時的に株価が下がるタイミングに贈与する、といった方法も検討されます。ただし、株価を下げることだけを目的にした不自然な取引は、税務調査で否認されるおそれがあるため、税理士と一緒に進めましょう。

従業員承継|株の買取資金の確保がポイント

役員や従業員が後継者になる場合、自社株を「買い取る」形が多くなります。後継者には株の買取資金が、売り手の現経営者には株式の譲渡所得税(20.315%)がかかります。後継者個人では資金を用意しにくいため、金融機関からの借入れや、後継者が設立した会社で株を買い取る方法などが検討されます。

なお、事業承継税制(特例措置)は親族外の後継者も対象です。従業員への承継でも、株を贈与・相続で渡すのであれば、納税猶予を使える可能性があります。

M&A(社外への引継ぎ)|手数料と譲渡の税金が中心

後継者がいない場合は、M&Aで第三者に会社や事業を引き継ぐ方法があります。売り手は株や事業の譲渡代金を受け取れる一方で、仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー=売り手か買い手の一方だけを支援する助言者)への手数料と、譲渡益にかかる税金を負担します。買い手側も、手数料や買収後の統合(PMI)の費用がかかります。

相続税|自社株を相続するときの税率と計算例

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%―
1,000万円超 3,000万円以下15%50万円
3,000万円超 5,000万円以下20%200万円
5,000万円超 1億円以下30%700万円
1億円超 2億円以下40%1,700万円
2億円超 3億円以下45%2,700万円
3億円超 6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」(2026年9月時点)

相続税は、亡くなった人から相続した財産にかかる税金です。親族内承継で経営者が亡くなった場合、後継者が相続した自社株や事業用の不動産も相続税の対象になります。税率は財産が多いほど高くなる累進課税で、最高税率は55%です。

相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」までの財産には相続税がかかりません。たとえば法定相続人が子ども2人なら、基礎控除額は4,200万円です。

計算例|自社株2億円+その他の財産1億円を子2人が相続

経営者の財産が、自社株2億円(相続税評価額)と、自宅・預金などその他の財産1億円の合計3億円、法定相続人は子ども2人(配偶者はすでに亡くなっている)というケースで考えてみます。

計算の手順金額
① 課税価格の合計3億円
② 基礎控除額(3,000万円+600万円×2人)4,200万円
③ 課税遺産総額(①−②)2億5,800万円
④ 1人あたりの法定相続分(③×1/2)1億2,900万円
⑤ 1人あたりの税額(④×40%−1,700万円)3,460万円
⑥ 相続税の総額(⑤×2人)6,920万円
⑦ 後継者(自社株2億円を取得)の負担約4,613万円(⑥×2/3)

この例では、自社株をすべて相続した後継者に約4,600万円の相続税がかかります。相続した自社株は簡単に売れないため、後継者は手元の預金や借入れで納税資金を用意しなければなりません。ここが事業承継の最大の悩みどころです。

元記事では「相続税は現金のみで納付できる」としていましたが、相続税は金銭で一括納付するのが原則であるものの、要件を満たせば分割で払う「延納」や、財産そのもので納める「物納」の制度もあります。とはいえ、延納には利子税がかかり、物納も条件が厳しいため、基本は現金で用意できるよう準備しておくことが大切です。

税理士のひとこと:後継者が払う相続税は会社の株価しだいで大きく変わります。まずは今の株価を知ることからです

自社株の評価額はどう決まる?

上場していない会社の株式は、国税庁の財産評価基本通達にもとづいて評価します。会社の規模(従業員数・総資産・売上)によって、似た業種の上場会社の株価をもとにする「類似業種比準価額」と、会社の純資産をもとにする「純資産価額」を組み合わせて計算するのが基本です。一方、同族株主以外の少数株主が取得する場合は、配当をもとにした低い評価(配当還元価額)になることもあります。

利益が大きく内部留保が厚い会社ほど株価は高くなります。「思ったより株価が高く、相続税が払えない」という事態を避けるため、承継の数年前から株価を試算しておくことをおすすめします。

贈与税|生前に株を渡すときの税率と2つの制度

贈与税のポイント:暦年課税は年110万円まで非課税、相続時精算課税は2,500万円まで、特例税率は父母・祖父母から

贈与税は、生きている人から財産をもらったときにかかる税金です。経営者が元気なうちに自社株を後継者へ渡す場合は、贈与税がかかります。贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの方法があり、どちらかを選びます。

暦年課税|年110万円の基礎控除と2つの税率

暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を引き、残りに税率をかけます。税率には「一般税率」と「特例税率」があり、特例税率が使えるのは、父母や祖父母など直系尊属から、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子や孫がもらう場合です。

元記事では、特例税率を「住宅取得等資金や教育資金の一括贈与などに適用される」と説明していましたが、これは誤りです。特例税率は、財産の種類ではなく「誰から誰への贈与か」で決まります。

基礎控除後の課税価格一般税率一般の控除額特例税率特例の控除額
200万円以下10%―10%―
300万円以下15%10万円15%10万円
400万円以下20%25万円15%10万円
600万円以下30%65万円20%30万円
1,000万円以下40%125万円30%90万円
1,500万円以下45%175万円40%190万円
3,000万円以下50%250万円45%265万円
4,500万円以下55%400万円50%415万円
4,500万円超55%400万円55%640万円

出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」。一般税率は3,000万円超がすべて55%(控除額400万円)

たとえば、父から18歳以上の子へ評価額1,000万円の自社株を暦年課税で贈与した場合、(1,000万円−110万円)×30%−90万円=177万円の贈与税がかかります(特例税率)。少しずつ毎年贈与する方法もありますが、2024年1月1日以後の贈与は、亡くなる前7年以内の贈与が相続財産に加算される(段階的に3年から延長)ため、直前の駆け込み贈与の効果は小さくなりました。

相続時精算課税|2,500万円まで贈与税がかからない

暦年課税
  • 年110万円を超えると10〜55%の累進税率
  • 亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に加算
  • 毎年少しずつ渡すのに向く
相続時精算課税
  • 年110万円の基礎控除+累計2,500万円の特別控除
  • 超えた部分は一律20%
  • 贈与した財産は相続時に贈与時の価額で相続税を精算

相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫へ贈与するときに選べる制度です。累計2,500万円までの特別控除があり、超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。2024年1月1日以後の贈与からは、特別控除とは別に年110万円の基礎控除も使えるようになりました。

贈与した財産は、贈与した人が亡くなったときに相続財産に足し戻して相続税を計算し、払った贈与税は相続税から差し引かれます。自社株の場合、足し戻すのは「贈与したときの評価額」なので、これから業績が伸びて株価が上がりそうな会社では、早めに渡すメリットがあります。

元記事では「60歳以上の親から20歳以上の子や孫」「親族外事業承継には適用されない」としていましたが、受贈者の年齢は2022年4月から18歳以上になっています。また、事業承継税制(特例措置)の適用を受ける場合は、親族外の後継者であっても相続時精算課税を選べる特例があります。

事業承継税制(特例措置)|相続税・贈与税の納税を猶予

事業承継税制(特例措置)を使う流れ:計画作成、計画提出(2027年9月30日まで)、贈与・相続(2027年12月末まで)、認定・申告、毎年の報告

事業承継税制は、後継者が非上場会社の株式を贈与や相続で受け取ったときの贈与税・相続税について、一定の要件のもとで納税を猶予し、最終的に免除も受けられる制度です。2018年度の税制改正で、要件を大きく緩めた「特例措置」が10年間の時限措置としてつくられました。

項目特例措置の内容(2026年9月時点)
特例承継計画の提出期限2027年(令和9年)9月30日まで(都道府県へ提出)
贈与・相続の期限2018年1月1日〜2027年(令和9年)12月31日
対象株式・猶予割合発行済株式の全部が対象、猶予割合100%
後継者の人数代表者である後継者最大3人まで
贈与する人先代経営者だけでなく、親族外を含む他の株主からも可
雇用の要件5年間平均で8割維持が原則。満たせなくても、理由を記載し認定支援機関の所見を付けた報告で猶予を継続できる

出典:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定」、財務省「令和8年度税制改正の大綱(資産課税)」

特例承継計画の提出期限は、もともと2024年3月31日でしたが、2024年度(令和6年度)の改正で2026年3月31日まで延長され、さらに2026年度(令和8年度)の税制改正で1年6か月延長され、2027年9月30日までとなりました。一方、特例措置の対象となる贈与・相続の期限(2027年12月31日)は延長されていません。計画を出しても、この日までに贈与・相続をしなければ特例措置は使えない点に注意しましょう。

元記事では「2023年4月から納税猶予の割合が100%になった」と説明していましたが、猶予割合100%は2018年に特例措置ができた当初からの内容です。また「贈与者の対象が従業員や取引先に拡大」「受贈者に従業員持株会や信託も認められた」という記述は、制度の内容と異なります。正しくは、先代経営者以外の株主(親族外を含む)からの贈与も対象になり、代表者である後継者最大3人まで対象になった、という拡充です。

特例承継計画には認定支援機関の関与が必要

特例承継計画は、税理士事務所や金融機関などの「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)」の指導・助言を受けて作成し、都道府県に提出します。計画には、後継者の氏名や承継の時期、承継後5年間の経営計画などを書きます。野村税理士事務所も認定経営革新等支援機関として、計画の作成をお手伝いしています。

猶予が取り消されるケースと費用面の注意

事業承継税制は「免除」ではなく、まずは「猶予」です。後継者が代表者を退任した、株を売却した、会社が資産管理会社に該当した、といった場合には猶予が打ち切られ、猶予されていた税額と利子税を納めなければなりません。また、申告後も毎年(一定期間後は3年ごと)の報告が必要で、手続きの費用もかかります。

個人事業主が事業用の土地・建物・機械などを後継者に渡す場合は、「個人版事業承継税制」があります。こちらも、令和8年度税制改正の大綱で「個人事業承継計画」の提出期限を2年6か月延長するとされています。具体的な期限や要件は、国税庁・中小企業庁の最新の案内で確認してください。

M&A・事業譲渡でかかる税金|株式譲渡と事業譲渡の違い

項目株式譲渡事業譲渡
何を売るかオーナーが持つ会社の株式会社が持つ事業(資産・負債・契約など)
売り手株主(個人)会社(法人)
売り手の主な税金譲渡益に所得税・住民税20.315%(申告分離課税)譲渡益に法人税等、課税資産の譲渡に消費税
消費税株式の譲渡は非課税建物・設備・のれん等は課税、土地は非課税
登録免許税・不動産取得税会社の不動産の名義は変わらないため原則かからない不動産の名義変更でかかる
買い手の特徴会社をまるごと引き継ぐ(簿外債務のリスクも)必要な資産だけ選べる。許認可は取り直しが必要なことが多い

M&Aで会社を引き継ぐ方法は、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」です。中小企業のM&Aでは、手続きが比較的シンプルな株式譲渡がよく使われます。どちらを選ぶかで、売り手が払う税金は大きく変わります。

株式譲渡|売り手のオーナーに20.315%

株式譲渡では、オーナー個人が株を売り、その譲渡益(売却代金−取得費−仲介手数料などの費用)に、所得税15.315%(復興特別所得税を含む)と住民税5%の合計20.315%がかかります。

たとえば、創業時に1,000万円出資した会社の株を1億円で売り、仲介手数料などが500万円かかった場合、譲渡益は1億円−1,000万円−500万円=8,500万円です。税額は8,500万円×20.315%=約1,727万円となり、手取りは約7,773万円(1億円−500万円−約1,727万円)です。

事業譲渡|会社に法人税と消費税

事業譲渡では、会社が事業を売り、その譲渡益は会社の利益として法人税・法人住民税・事業税の対象になります。さらに、建物や設備、のれん(営業権)など消費税がかかる資産の譲渡には消費税がかかります。土地の譲渡や売掛金などは消費税の対象外です。売却代金は会社に入るため、オーナーが個人で受け取るには配当や退職金として受け取る必要があり、そこでも税金がかかります。

登録免許税・不動産取得税

事業譲渡や相続・贈与で不動産の名義を変えるときは、登記の際に登録免許税がかかります。また、不動産を取得した人には都道府県の不動産取得税がかかります(相続による取得や、会社の合併による取得は非課税)。役員の変更や本店移転の登記にも登録免許税がかかります。

元記事では登録免許税・不動産取得税の軽減後の税率を「事業承継税制が適用される場合」と紹介していましたが、これは事業承継税制ではなく、中小企業等経営強化法の「経営力向上計画」の認定を受けて事業承継等(M&Aなど)を行う場合の軽減措置です。対象や期限は改正で変わることがあるため、中小企業庁「経営力向上計画」の最新の手引きで確認してください。

専門家への報酬とM&A仲介手数料の考え方

レーマン方式による成功報酬の計算例のグラフ:譲渡額1億円で500万円、3億円で1,500万円、5億円で2,500万円、10億円で4,500万円

事業承継では、税理士、弁護士、司法書士、M&A仲介会社など、複数の専門家に依頼することが多くなります。報酬の決め方は専門家ごとに違うため、依頼前に見積もりと計算方法を確認することが大切です。

依頼先主な仕事報酬の決まり方の例
税理士・公認会計士株価評価、承継計画、相続税・贈与税の申告、事業承継税制の手続き、税務デューデリジェンス業務ごとの定額、財産額に応じた報酬、顧問契約の範囲内など
弁護士株式譲渡契約書・遺言書の作成、法務デューデリジェンス、親族間の調整着手金・報酬金、時間制(タイムチャージ)など
司法書士役員変更・株式・不動産の登記登記1件ごとの報酬+登録免許税などの実費
M&A仲介会社・FA相手探し、交渉、契約までの支援着手金、月額報酬、中間金、成功報酬(レーマン方式が多い)

M&A仲介の手数料は「レーマン方式」が多い

M&A仲介会社やFAの成功報酬は、取引の金額に応じて段階的に料率を下げる「レーマン方式」で計算されることが多くあります。一例として「5億円以下の部分は5%、5億円超10億円以下の部分は4%、10億円超50億円以下の部分は3%…」といった料率です。上のグラフはこの料率で計算した例で、譲渡額3億円なら成功報酬は1,500万円(税抜)になります。

注意したいのは、何を基準額にするかが会社によって違う点です。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、基準となる価額として「譲渡額」「移動総資産額(株価に負債を加えた額)」「純資産額」などがあると整理しています。同じ料率でも、移動総資産額を基準にすると、負債の分だけ手数料が高くなります。

また、多くの仲介会社は「最低手数料」を設けています。小規模な案件では、レーマン方式で計算した額よりも最低手数料のほうが高く、実質的な料率がかなり高くなることがあります。着手金や月額報酬が、M&Aが成立しなくても返ってこないのかも確認しておきましょう。

税理士のひとこと:仲介会社と契約する前に、手数料の計算方法と最低額を必ず書面で確認しましょう

中小M&Aガイドラインが求める「事前の説明」

中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂)では、仲介者・FAに対して、契約前に手数料の内容(計算方法、最低手数料、支払時期など)を説明することや、仲介の場合は相手方からも手数料を受け取ることの説明を求めています。売り手・買い手の双方から手数料を受け取る仲介では、利益相反のおそれがあることも理解しておきましょう。

国に登録されたM&A支援機関(M&A支援機関登録制度)かどうかも、選ぶときの目安のひとつです。後述の事業承継・M&A補助金で専門家の費用を補助してもらう場合も、登録された支援機関を使うことが条件になります。

事業承継の費用を抑える5つの方法

費用を抑える5つの方法:早めに株価と税額を試算する、事業承継税制と補助金を使う、手数料は契約前に比べる

① 早めに株価と税額を試算する

まずは今の自社株の評価額と、相続・贈与した場合の税額を試算しましょう。税額がわかれば、事業承継税制を使うべきか、生前贈与で少しずつ渡すか、役員退職金を活用するかといった方針を立てられます。株価は毎年の決算で変わるため、定期的に見直すことが大切です。

② 事業承継税制(特例措置)の期限を逃さない

特例措置を使うには、2027年9月30日までに特例承継計画を提出し、2027年12月31日までに贈与・相続をする必要があります。計画を出しておくだけなら、最終的に制度を使わなくても不利益はありません。迷っている場合は、期限までに計画だけでも出しておくことを検討しましょう。

③ 事業承継・M&A補助金を活用する

中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」(旧:事業承継・引継ぎ補助金)では、事業承継後の設備投資などを支援する「事業承継促進枠」、M&Aの専門家費用を支援する「専門家活用枠」、M&A後の統合を支援する「PMI推進枠」、事業を引き継ぐ際の廃業費用を支援する「廃業・再チャレンジ枠」があります。2026年9月時点では16次公募(申請受付は2026年10月2日〜11月6日17時)が案内されています。補助上限額・補助率は枠ごとに異なるため、公募要領で確認してください。

元記事で紹介していた「事業承継税制予定適用申請費用補助金」という名称の補助金は確認できませんでした。補助金は年度ごとに名称や内容が変わるため、申請の前に必ず最新の公募要領を確認しましょう。

④ 専門家の見積もりを比べ、役割分担を決める

M&A仲介会社は1社だけでなく、複数社から手数料体系を聞いて比べるのがおすすめです。また、税理士には株価評価や税額試算、弁護士には契約書のチェックと、専門家の役割を分けて依頼すると、ムダな重複を減らせます。

⑤ 納税資金と承継後の資金繰りを計画する

相続税や株の買取資金をどう用意するかも、費用の一部として考えておく必要があります。会社から後継者への役員報酬、生命保険の活用、金融機関からの借入れなど、承継後の会社の資金繰りまで含めて計画しましょう。毎月の試算表で会社の数字を把握しておくと、株価の見通しや借入れの相談もしやすくなります。

▶ あわせて読みたい:【2026年度税制改正】法人向け|賃上げ税制・設備投資・少額減価償却40万円

まとめ

まとめ:税金と専門家報酬の2本立て、特例承継計画は2027年9月末まで、まずは株価と税額の試算から

事業承継の費用は、相続税・贈与税・譲渡の税金などの「税金」と、税理士やM&A仲介会社などへの「専門家報酬」の2本立てです。親族内承継では後継者の相続税・贈与税が、M&Aでは仲介手数料と譲渡益への税金が、主な費用になります。

親族内・親族外を問わず、事業承継税制(特例措置)を使えば贈与税・相続税の納税を猶予できる可能性があります。特例承継計画の提出期限は、2026年度の税制改正で2027年9月30日まで延長されましたが、贈与・相続の期限は2027年12月31日のままです。残された時間は長くありません。

事業承継は、準備を始めるのが早いほど選べる方法が増え、費用も抑えやすくなります。まずは自社株の評価額と税額の試算から始めましょう。具体的な判断は、事業承継に詳しい税理士に相談してください。

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関連記事:相続専門メディア『相続の教科書』に当事務所が掲載されました

参考資料:国税庁「No.4155 相続税の税率」/国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」/国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」/国税庁「No.5759 法人税の税率」/中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定」/財務省「令和8年度税制改正の大綱(資産課税)」/中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」/中小企業庁「事業承継ガイドライン」/事業承継・M&A補助金 事務局/中小企業庁「経営力向上計画」

※本記事は2026年9月時点の公表情報をもとに作成しています。税額や手数料の計算例は目安であり、個別の状況によって結果は異なります。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。

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執筆者
野村税理士事務所 代表 野村真一
野村 真一

野村税理士事務所代表 野村真一

税理士業界23年、野村税理士事務所代表でfreee認定アドバイザー。日本税理士会連合会、九州北部税理士会所属。認定経営革新等支援機関の認定事業者として事業再構築補助金の申請支援を行う。

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