ビジネスの運営において資金調達は必須の要素です。新規事業の立ち上げ、設備投資、経営改善など、さまざまな目的で必要とされます。
事業資金調達の手法
資金調達方法は一つではありません。それぞれの手法には特性と利点、欠点があり、どれを選択するかは企業の状況や目的によります。今回は税理士の視点からビジネスの資金調達手法を解説します。
銀行融資
最も一般的な資金調達手法であり、安定した利息で比較的大きな金額を借り入れることが可能なため、ビジネスの成長や事業拡大、一時的な資金繰りのために利用される一般的な資金調達手段です。しかしながら、融資を得るためには銀行の審査を通過しなければなりませんし、融資を受けた後も適切な返済計画と税務処理が求められます。ただし、信用情報とビジネスプランが評価され、審査に通らなければなりません。また、担保や保証人が必要となる場合があります。
また、銀行以外に日本政策金融公庫も多く利用されおり、野村税理士事務所で最も多い金融機関の紹介先となっています。
- ビジネスプランの明確化: 銀行は信用リスクを避けるために、貸し手のビジネスプランや収益予測を厳しく審査します。明確なビジネスプランと信頼性のある財務予測を用意しましょう。
- 適切な担保と保証人の確保: 信用保証協会等の制度を活用するか、適切な担保や保証人を確保することが重要です。
- 信用情報の管理: 信用情報は融資の審査に大きな影響を与えます。過去の返済履歴や税金滞納などの情報が審査に影響を及ぼします。
カードローン
銀行融資が間に合わない場合や銀行融資の審査に落ちた場合などにカードローンもよく利用されます。カードローンの最大の特徴は手続きの簡便さとスピードです。短期的な資金需要に対して、素早く対応できる手段として活用することができます。必要な額だけ借りることができるため、必要以上の借入れを避けることができます。
一方で、カードローンは金利が比較的高めに設定されていることが多く、長期的な利用や大額の借入れには向きません。特に事業用途での利用の場合、その返済計画と事業の収益予測がしっかりと立てられていなければなりません。
さらに、カードローンによる借入金は、銀行融資などと異なり、財務状況に対するネガティブな印象を与える可能性があります。これは将来の資金調達や取引関係に影響を与える可能性があります。
手形割引
手形割引とは、未来の時点での入金を前提とした手形を、銀行などの金融機関で現金化する手続きを指します。金融機関は手形の額面より一定の割引額を差し引いた金額を現在の価格として現金化します。これにより、売掛金の回収までの時間を待たずに現金を得ることができます。
ただし、手形割引を利用する際には割引率(金利)と手形の信用度(返済可能性)を考慮する必要があります。割引率は手形割引のコストとなり、手形の信用度は割引が実行可能かどうかを決める要因となります。
ファクタリング
ファクタリングは、企業が保有する売掛金を、ファクタリング会社が買い取ることで現金化する金融サービスです。これにより、売掛金の回収を待つ時間を省くことができます。この取引によって生じる費用(ファクタリング料)は、企業とファクタリング会社の間で事前の合意に基づいて決定します。
ファクタリング利用の最大の目的はスピード感のある入金です。そのため、即日対応のファクタリングがとりわけ人気となっています。
リース・レンタル
設備投資に使われることが多い資金調達方法です。所有権はリース会社が保有し、企業は使用料を支払います。所有せずに設備を利用でき、手間とコストを抑えられるメリットがあります。また、税務上はレンタル料を経費として計上できます。
クラウドファンディング
インターネットを使った資金調達方法で、事業のアイデアやプロジェクトに共感した多くの人々から少額の資金を募ります。リターン(見返り)を提供することで支援を募る形式が多く、起業家や新規事業にとって有効な手法とされます。
ベンチャーキャピタル・エンジェル投資
成長性の高いスタートアップに対して、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が資金を提供します。一般的に出資の見返りとして株式を取得し、事業の成長とともに投資利益を得ることを期待します。
公的資金
政府や地方自治体が提供する資金調達支援策です。新規事業や地域振興、雇用創出などに対する補助金や低利の融資などがあります。事業内容や規模によりますが、活用すれば大きな助けとなります。
以上が一部の資金調達方法です。それぞれの手法には特性と利点、欠点がありますので、ビジネスの状況と目的に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。また、税務上の影響も大きいため、専門家との相談をおすすめします。資金調達はビジネスの成長を左右します。賢い選択をして、ビジネスの成功につなげましょう。